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渋谷の路上で会った留学生と韓国旅行に行った話②

■カラオケで一番盛り上がったのは

夕方5時頃、ジョンが「カラオケに行こう!」と言い始めた。3人ともそこそこ酔ってきたし、居酒屋に居座りすぎて飽きてきた頃だった。そのころにはすっかり打ち解けて、楽しくてしょうがなかった。

二つ返事で「レッツゴー!」ということで、すぐ隣のカラオケ「まねきねこ」に入ることになった。

とりあえず曲を入力するデンモクを手に取ったが、何を歌えばいいかまったくわかならい。え?フランスで流行ってる日本の歌ってなに?

とりあえず世界的にヒットしてる韓国アイドルのBTSでも歌っとこうと思ったけど、2人ともよく知らないらしい。そうか、ヘジョンも大学時代はフランスで過ごしているんだった。彼女が韓国にいたときはビッグバンが日韓で流行り始めたころだ。

1番盛り上がったのはまさかの「残酷な天使のテーゼ」だった。エヴァンゲリオンすげぇ。さらにまさかの尾崎豊とかが好きみたいだったけど、僕があんまわかんなかった。くやしい。

「ワンピース」「ナルト」など日本のアニメの曲は彼らも聞いたことがあるものが多かった。チェンソーマンとか呪術廻戦とか最近のアニメも知っていた。やっぱり日本のアニメ、すごい。

片っ端から試して彼らが知っていそうな曲を必死で探したわけだが、そもそも「何歌ったら盛り上がるかな?」とか考える必要はなかった。気を使わずに自分の歌いたい歌を入れて勝手に歌う。それが彼らのスタイルだった。

まったく知らんフランスの曲をめっちゃ楽しそうに歌う彼らを見て、謎の安心感に満たされた。

そうだよなぁ。これでいいんだよなぁ。

普段のカラオケではみんなが知ってそう、盛り上がりそうな歌をチョイスしがち。1人のときに聞いているような曲をカラオケで歌うことはめったにない。

「気を使わずにただ一緒にいる」ってすごくいいよなぁ。

■初日から終電を逃すとは…

すっかりリラックスしてカラオケを楽しんでしまった僕は、そこが自宅から1時間半もかかる場所ということをすっかり忘れていた。

ハッと時計を見ると23時過ぎ。終電まで10分くらいしかない。

「うちに泊まるのはぜんぜんいいよ。トオルに任せる」ジョンはこう言ってくれていたが、さすがに翌朝のことを考えると帰りたかった。茨城県のよく知らない場所でボロボロの状態で目覚め、1時間半かけて帰るのはどう考えてもつらい。ずっと英語の会話で少し疲れていたのもある。

「ありがとう。でも今日は帰るよ」。ジョンの家に行ってみたい気持ちもあったが、それはまた今度にしよう。その日は終電に乗ることにした。

「もし乗れなかったら連絡して。駅で待ってる」と言ってくれたが、5分ほど余裕を持ってカラオケを出ていたので心配すんな。と、思っていた。

念のため、改札からホームまで小走りした。ホームにつくと、電車はまだ到着していなかった。間に合ったぁ。安心した僕は、音楽を聞こうとブルートゥースのイヤホンを手に取った。あれ?

ケースには片方のイヤホンしか入ってなかった。改札から走っている間に落っことしたんだ!

大慌てで来た道を引き返し、ホームに続く階段と改札前の廊下を探し回っている間に終電は出発した。ちなみにイヤホンは改札を入ってすぐの場所に落ちていた。せめて見つかって本当によかった。

すっかり帰る気分になっていた僕は、とりあえず次の電車に乗った。千葉県の松戸駅までしか行かないやつだ。

まあそこからはタクシーに乗ろう。このときの僕は千葉県の広さをなめていた。

松戸駅でタクシー料金を調べて驚愕した。1万3000円もかかった。次はジョンの家に泊めてもらおう…。

■それから僕らは、急速に仲良くなった

「今度は東京で飲もう」という約束は、わりとすぐに果たされた。

3週間後くらいに、彼らが大学の上野キャンパスに来るので夜に合流して飲もうということになった。そのときは僕の親友も呼んで4人で飲んだ。上野駅前の雑多な飲み屋街でテキトーに選んだ居酒屋に入った。フランス、韓国のお酒の席でやるゲームを教えてもらって実践するなどして、わりとたくさん飲んだ気がする。

その日は彼らはきっちり終電で帰っていった。くやしい。

それからは、僕もちょくちょく取手に遊びに行くようになり、彼らも東京でイベントがあるときに招待してくれた。

さすが芸大。学生ばかり集まってのDJパーティーとかがある。高円寺にある小さいバーを貸し切りにして、有志で集ったDJがかける音楽にノッてみんなでお酒を飲みながら話す。

パーティーに来ているのはほとんどが留学生で、話していてとても新鮮だ。なんでかは知らないけどドイツ人、フランス人、韓国人が多かった。友達の友達が集まってるから自然とそうなってるだけなのかな。

大学で地球科学を専攻していた僕にとって、芸術を専攻する学生の集まりもとても興味深かった。みんな明るくて、コミュニケーションそのものを楽しんでいる感じ。

ジョンの家に泊まりに行くという目標もすぐに叶った。東京芸大の取手キャンパスの学祭に遊びに行ったときに、そのまま泊めてもらった。



次は「そして僕は、素晴らしい違いをたくさん見つけた」から!

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