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♡Ep.【自分を蔑む女】~彼女がいらない男Ⅱ~


「あなたはとっても魅力的な女性だから、
そんなに自分を蔑まないで?」



この言葉の意味が分かるくらいなら

この言葉の真意に気づけるくらいなら


わたしはとっくにあなたに別れを告げていたでしょう



⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ 



「とにかくすごいんです!!」
「言われた通りにしたら本当に出会って
「めちゃくちゃ心が軽くなって!!」


職場の人に熱弁されたのは
職場の人が通っている占い師のこと。


占いなんて、信じない。

当たるはずないって疑ってる訳じゃない

むしろ、当たるって信じている。

だからこそ、ネガティブなわたしは
なにかマイナスなことを言われたら自分が不安になったり悩んでしまって怖くなる。

そんな自分が分かっているから、

占いを信じなくてすむように
占いには行かない。


はずだった。


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「ナナさん?こんにちわ。」



優しく心地よい声がした方へ振り返ると
マイナスイオンダダ漏れの柔らかい雰囲気をまとった女性が立っていた。


予約時間よりも早く着きすぎて入口の前をウロウロしていたわたしは
彼女の目にどんな風に写っていただろう

時間よりも早いけど、さっそく始めてもいい?」


よっぽど切羽詰まっているように見えただろうか?


ただの、恋愛相談。

そんな、切羽詰まる程深刻な話じゃない。



「今日は、彼のこと?」


優しく訪ねられて、ふと我に返った。

聞きたいこと、教えてほしいことを頭の中で整理しているうちにいつの間にか案内され椅子に座っていて
目の前には彼女がいた。


1年前くらいに知り合った人がいて
「将来の話もしてるけど、実際は正式に付き合っては無くて
「わたしは最近地元に帰ってきたからなんかいろいろ先のこととか考えちゃって



今さっき会ったばかりの、
"知らない人"に心の内をさらけ出すなんて、、
でも
かといってちゃんと順序だてて伝えないと結果変わっちゃうかもだし今日来た意味無いし
躊躇しつつもA型すぎる自分の性格にちょっと笑えた


聞きたいことがすごく明確だし、今日はタロットにしましょうか。」

まるでカウンセラーのようにわたしの話を聞いていた彼女が優しく微笑んだ。


「お願いします!」


目の前に裏返しにされたタロットカードが並べられていく

本物のタロットカード、初めて見た


……………………


20歳くらいの頃
友達とパワーストーンを作りに行ったことがあった


雑誌にも紹介されるような有名な所で
何人かの中から好きな占い師を指定し予約すると
自分にピッタリのストーンを選ぶための占いをしてもらえた

当時は静岡に行って以来改めてアサトの偉大さを痛感していた頃で


"将来アサトと結婚する"
なんて、まるで確証の無い未来と自分の直感を疑ってもいたし信じてもいたから

"賭けの石"を選んでもらった。

アサトが運命じゃなかったら、遠ざける、そんな石。


よく分からなかったけど
わたしは運命の方に賭けた。自分の直感を信じて。


結局わたしはアサトと結ばれることも無く、
でも遠ざかりもしないまま、
彼との物語も未だ完結せずに続くのだけど………


あの時の占いって、結局当たってたっけ

なんて余計なことを思い出していた思考を振り払って
深呼吸をしてからタロットカードをめくった


……………………



タロットカードなんて詳しくは無いけど
あまり良いカードが出ていないのはなんとなく悟った。


だって女神とか、天使とかいないし、
なんか幸せそうな絵柄がひとつも無い。

もしかしてあれって、死神?!


めくったタロットカードの絵柄をまじまじと見つめていると、彼女が話始めた。




「ナナさん。あなたはとっても魅力的で、素敵な女性。」


まさかの褒めワードに自分の目が丸くなったことが分かった。


彼女は続ける


「自分で思ってる以上に異性にとって魅力的なの。

だからそんなに自分を蔑まないで?

今もあなたの中にはちゃんと軸があって、
とてもしっかりしているけど
結婚したらより芯が通るからすごくいい奥さんになる。

あなたと結婚できる人はラッキーよ。」



え?

あ、そうなんだ…(嬉しいことは即信じる)

てっきり自分は結婚とか向いていないと思っていたから
そんなこと言われるなんて思いもしなかった


びっくりした顔をするわたしを見て微笑みながら
彼女は優しく、耳心地が良い声で更に続けた


「こっちに帰ってきたことで
寂しさとかじゃなく
仕事は仕事、プライベートはプライベートで
それぞれちゃんと目を向けれてるわね。

今あなたにはいろんな目が向けられてるし
選択肢がたくさんあるの。

ただあっちもこっちもは無理
そんなに器用じゃないから
そうすると余計頭パンクする。

だからちゃんと、選ばないといけない。」



………



「あなたと彼は平等であるべきよ。
あなたばかりが我慢する必要は無いの。」



さっきまで思わぬ褒めワードの連発に
緊張がほぐれ、嬉しい感情に浸っていたのに
その言葉で
一瞬にして胸が痛くなった。



「あなたはすごくエネルギーがあるし
自分の魅力に気づけばキラキラする、
幸運はキラキラしたところにくる


素直にあなたの気持ちを彼にまず伝える
彼が上ではない。対等。

まずはそこから。
あなたのそのかわいらしさでちゃんと彼に気持ちを伝えて。」



わたしはハルに
一度だってちゃんと本音を伝えられていただろうか?


「今は彼女を作れない。」

ただの言い訳だって分かっていながら
ハルのその言葉を受け入れた時から
"ハルがわたしの価値に気づくように"
そうやっていつも

本音に蓋をして良い女のフリしてた。



でもそれが

自分を蔑むってことなの?


今のわたしとハルは、対等では無いの?



わざとのつもりだった。

わざと、わたしはハルの為に、自分の為に、

こんなふうに関係を築いてきたし
むしろ作戦通りだった。


ハルがわたしを彼女にしたくなる、
作戦通り…



まっすぐな目で見つめる彼女は
わたしのくだらないプライドの奥底にある本心を
とっくに見抜いていたのだろう



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