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♡Ep.【彼女がいらない男⑫】~余韻、消しきれない思い~



こんな気持ちになって悩むくらいなら
旅行の時、ちゃんと伝えればよかったし、

ハルに、決断を迫れば良かった。


でも、ハルをずるいと思いながらも

ハルの言う、"これから新しい仕事が始まるから…"
の理由を考えると

まだ新しい仕事が始まってないし……
てことは今決断を迫っても答え出ないよね?

なんて
勝手に都合の良い自己解釈をして逃げたのはわたし。


そう、わたしは逃げた……逃げている。(現在進行形)


ハルに
付き合えない、と振られることから。


ハルを失う覚悟も持てないし、
なんなら一緒に過ごした旅行の時間で
自分の気持ちを再確認してしまった。

わたしばっかり、どんどん好きになっていく。


「今は彼女をつくる自信が無い」
そんなずるすぎる理由を利用してるのは
ハルだけでなく、わたしも同じだった。


だってそれは

付き合ってなくても、
わたしがハルから離れずにいられる理由(言い訳)にもなるから、、、



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いつまでも旅行の余韻が消えないまま
その思い出を活力にして、わたしは日々の仕事を頑張っていた。

相変わらず息の抜けない環境で
わたしの精神をすり減らすけど

またあんな旅行に行きたい、、
ハルと一緒に過ごしたい、、
そんな期待や願望はメンタルの回復剤になった。



しかし、わたしの思いと対照的に

いよいよハルは新しい職場での仕事が始まって
毎日忙しくも充実しているようで
わたしが入り込む心の隙間が見当たらなくなってきた。



「早く仕事覚えたいし、最初のうちは休みもいらないって言ったんだー!」
なんて、悪気なく言ってくるハル。

あーそっか。わたしとの時間、べつにいらないんだね。

新しい仕事に意欲的なハルを
口では応援しているけど

心の中では卑屈な自分が荒れている。



クリスマス前後はちょこちょこ会っていたし
ハルが有給消化期間中に友達とばかり過ごしていた時も、旅行に行く予定があったから耐えられた。

でも、今は違う、
次に会える予定は決まってないし、
以前の職場と違い、今回は全国どこまでもトレーラーを走らせ向かう。
そんなハルの予定を把握することすら難しくて
とても「会いたい」なんて言えなかった。


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わたしはずるいから
いつも何通りかの作戦を立てる。

新しい仕事で必死なハルに
どうしたら必要とされるだろうか?

会えない時間でも
どうしたらわたしを好きになってもらえるだろうか?


結局、どんな作戦を考えようと、答えは一択で


ハルの負担にならない。


これしか出せなかった。



だから、
どんなに会いたくても
どんなに声が聞きたくても

平気なふりをして、待つことしかできなかった。


⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ 





旅行から、4ヶ月が過ぎた。


あれからハルには会えていないし
ここ1ヶ月くらいは連絡もとっていない。


もう、完全に終わった。



頭では分かっていても
気持ちが納得できていないわたしは諦めが悪い。



仕事の休憩に入るたびに
ハルから連絡が入っているかも、と期待しながら携帯を見るし

着信が鳴れば、一番最初にハルを思い浮かべた


"つまり、そうゆうこと"

そう思って納得する(諦める)のが大人なんだろう。



でも、わたしはいつも

他人や自分に期待しすぎてしまう


普段なら、マイナスなことを先に想定して
対策を考えるわたしだけど
こうゆう時は逆に
わずかな可能性を探して自分を慰めている


だから

ちゃんと言葉で伝えて、分からせてほしい。

(1から10まで説明して、納得させてほしい。)


物分り良く演じているわたしの正体は
めちゃくちゃめんどくさい奴なんだ

だからちゃんと納得できないと、察して受け入れるなんてできないし、したくない

でも、こんな勝手な言い分も
今の状況じゃ、自分の中で抱えるしかできないけれど、、、、


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それから
ハルへの気持ちを断ち切れず
この関係が終わったことも自分の中で消化できない、
いわば、不完全燃焼のまま
違う男とホテルに行った。


彼は数年前よく遊んでいた人で
何度も寝たことがあったし
べつになんの躊躇も無かった。


むしろ
寝たことがあるおかげで
気兼ねない関係とでも言うのだろうか…
なんでも話せる。


タバコを吸いながら、さっきまで寝ていた相手に
ハルの話をした。

彼に話したところで
真剣に相談に乗ってくれる訳じゃないのは分かってる。
でも、男の人の気持ちを聞いてみたかったし
話すことで気持ちが少しでも楽になる気がしたとゆう、勝手な理由だった。


…………………………………………



結局、寝たことも、話したことも
なんの慰めにもならないまま
わたしは彼の車を見送りながら

「……なにしてるんだろ。」


ひとりでそう呟くくらいに悲劇のヒロインに成り下がっていた。


⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰


誰と遊んだって気持ちは紛れないし
他に出会いを求める気にもなれない

わたしは何度も確信してしまっていた。


あんなにわたしをわくわくさせてくれて
居心地がよくて、一緒にいたいと思えるのは
ハルしかいない、、と。


この先の人生では分からないけど
今のところは間違いなく、わたし史上1番そう思えた人だった。





そしてそれは突然で


急遽仕事中に上司に呼ばれ

3ヶ月後の異動を告げられた。

数年前から希望を出していた
地元への異動だった。


ずっと、願っていたことだった。

結婚願望が微塵も無かった頃から
"将来的に家庭を築くなら地元で"と
漠然と、でもそれだけは決めていて

年齢的にもそんな理想像を現実的に考えたい
と思っていた矢先のことだった。


嬉しくて
嬉しくて

すぐに家族や友達に連絡を入れる。




でも

これでもう、

ハルに会うことも無くなるんだ


その事実だけは、
唯一浮き足立つわたしの裾を掴んだ。




でも、異動は変えられない現実で

ついに、

諦めの悪いわたしが
気持ち的にはなんの踏ん切りもつけられないまま
物理的に"離れる"ことを受け入れるしかなくなったのだった。



さよなら、東京。

さよなら、ハル。



そういえば、いきなり迎えに来て待っててくれたんだよなぁ……

帰りの電車に揺られながら


地元へ帰れることを報告した友達からのお祝いメールを読んで、異動の喜びを噛み締めては


ハルと初めて会った日のことを思い出していた。


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