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♡Ep.【彼女がいらない男⑬】~報われない物語のエピローグ~



知り合って少しした頃
ハルからいきなり送られてきたURLを開くと
住宅メーカーのサイトが出てきた。

「俺、将来ここで家建てたいんだよね!オシャレじゃない?!」


いきなりどうしたかと思いながらも
なんだかおもしろくなって
一緒になって将来どんな家に住みたいかを話し合ったことがあった。


「俺は子供と一緒にゲームしたり~ナナさんにいたずらしたりして~ナナさんはずっと怒ってるの!笑」


「なにそれ?子供と一緒になって怒らせてないでちゃんとしてくれる?」


「え〜〜俺はナナさんが怒りだしたら、ママ怖いね~って子供と結託するか、子供のせいにして逃げるんだ〜〜笑」


「パパ最低だね!笑」



そんなたわいもない会話
結婚適齢期の女に軽々しくするもんじゃないよ

そんな気持ちもありながら

でも、わたしは大丈夫

だってそんな会話したところで
真に受けて期待するような重い女じゃない

かといって
そんな適当な空想話なんの意味も無い
なんて切り捨てるようなノリの悪い女でもない


だから
一緒になって素敵な未来を想像したけど

べつに信じてなんかいなかったよ


信じてなんかいなかった



でも





そうなったらいいな、

とは思ってしまった自分を、
その時はまだ、気づかないふりしてた




⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ 




久しぶり!
もうハルのこと好きとか思ってないよ、
恋愛感情は無いけど
これだけ仲よくなったのに
もう友達でも無くなっちゃうのは悲しいな。


久しぶりにハルにLINEを送った。


なんか、わざわざ恋愛感情が無いなんて言って
ダサい女だな……言い訳丸出しじゃん……


今まで少しでも良い女(良い彼女)と思われたくて
いろいろ計算してやってきたのに
ここでこんなこと送るなんて不本意……


でも
もうかっこつけてもいられない



最後に…

ここを離れて地元に帰る前に

もう一度、ハルに会いたい


会えなくても、、わたしが地元に帰ること
ハルには知っててほしい




それで少しでも



後悔すればいい。




もう恋愛感情が無いなんて、分かりきった嘘。

だけどハルがわたしから離れたのは
わたしが嫌いになった訳でも無くて


ただ

この関係に誠意をみせるのがめんどくさくなったから


わたしは勝手にそう解釈しているから


だから、

もう、いいから


歳上の、結婚適齢期の女と
彼氏彼女まがいな関係を続けるのが
重くなっちゃったんだよね


自分に"ちゃんと付き合う"気が無いのに
"ちゃんとお別れをする"こともできなくて

曖昧なまま、距離を置いたんだよね


そんなふうに

誠意を見せずに逃げたハルも
わたしは嫌いになれないよ。


- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -



そこでケロッと普通に返信してくれるのがハルで

わたしの勝手な深読みと重荷を感じさせない配慮に
意味があったのかは分からない

友達としてなら、、そう確約した訳でもなく

ただ、数ヶ月音信不通だったことが嘘のように
あっという間にわたしたちは元の関係に戻った


付き合う訳でもなく、友達とも言いきれない
曖昧な関係に……



数ヶ月後、わたしが地元に帰ることを知って
ハルの本音はどう思った?


わたしとの関係を自ら精算する必要が無くなって、安心した?



わたしの理想通り、手放したことを後悔した?




バカなわたしは
ハルの本音なんて気にしていられない程
気持ちがすっかり元に戻っちゃったよ

ハルに会う度、楽しくて、嬉しくて、


どんな時よりも


ハルと一緒にいる時の自分が好きなくらいに。


…………………………


こっちでの仕事をやり終えて
地元へ帰る数日前


お疲れ様のお祝いをしてくれたハル。


「ナナさんがどうしても焼肉食べたいって言うから仕方ないなー!!」

そんなこと、一言も言ってないのに
ハルは勝手だ。
でも、いつもそうやってわたしを楽しませてくれる。


お高めの焼肉屋さんに連れてってもらって
美味しいご飯に大好きなハル、幸せな時間だった。

これで、最後。



わたしが地元に帰ったら
わたしたちの曖昧な関係も、やっと終わる。


ハルを思って苦しくなることも無い


ハルと一緒で幸せを感じることも…もう、無い


…………………………………………


焼肉屋さんの帰り
ハルが通っていた高校の近くだったようで

「ナナさんに俺が通ってた高校見せたい!」


そう言って寄り道するハル。



ああ、これで最後なのに
なんでまたこうやって思い出になることするんだろう…


毎晩のように電話をしていた頃
よくお互いの学生時代の話なんかもしていて

学生時代のバカみたいなエピソードとか
部活で出逢った仲間とか、経験とか
今のハルを作り上げているいろんな出来事が
自分の経験や価値観に近いものを感じたりして


そうゆうひとつひとつが
わたしにハルを好きにさせたんだよな……

って、思い出しては妙に感慨深い気持ちになる




これ以上、さよならしずらくしないでよ




………………………………


アパートの駐車場でいよいよ訪れた最後の時を過ごしながら

わたしはこの物語のエピローグをすすめる


「今までありがと。美味しいご飯たくさん連れてってもらったし、旅行も。。すごい楽しかったよ。」


2人の思い出を振り返りながら

大好きな人に、お別れをする……


シナリオ通り。


もう、この物語は、終わりなんだ……




「うん、楽しかったね。ん?なに?どうしたの?」


「え?いや、だって…これでお別れじゃん。」


「お別れ?なんで?」



「だって……わたし地元帰るし、もうハルに会えなくなるし。。」



「またまたぁ~!ナナさん何言ってんの?」



「え?」



「俺、トレーラーの運転手だよ?車でたった3時間くらいの距離でしょ?全然遠くないよ!」



「え…だって……」




「ナナさんとお別れなんてしないよ!またご飯とか行こうよ!」





あんなにも気持ちを振り絞って覚悟したはずなのに
そんな簡単な言葉で揺らぐほど
わたしのハルに対する気持ちは大きくて


最後のつもりで書いた手紙だって

さよならのふりして、
読んだらわたしを引き止めたくなるんじゃないかって
隠しきれない期待…下心があった


さよならをしたくないなんて
当たり前すぎて

ハルが言ってくれた言葉は
わたしがなによりも望んでいたから……


分かってる


分かってるよ






その言葉に、なんの意味も無いこと。





だけど


それでも良かった




だって

真に受けて期待するような重い女じゃない


そうゆうふりをして



本当のわたしは



この期に及んで


ハルと一緒に素敵なお家で暮らす未来を


まだまだ全然諦められていなかったから。






【彼女がいらない男】第1章、おわり



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