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♡Ep.【逃す旬、進む時間】~彼女がいらない男Ⅱ~



ハルと出会って、1年が経った。

初めて会った日、一緒に流れ星を見てから1年。


わたしがハルを好きになってから、1年。


「今は彼女を作れない」
そんな勝手すぎる発言を容認してから1年。



この恋愛が、報われないと知ってから、1年。



この1年の間に、
間違いなく気持ちが同じ方向へ通じ合っていた時もあった。。

良くも悪くも...ハルは分かりやすい。


わたしに気持ちが向いている時、
わたしへの気持ちが薄れている時、


そんなハルの気持ちの変化を感じながらも

どんな時でもわたしの気持ちは、変わらなかった。


報われないと理解しながらも
希望を持ち続けてしまったのは
ハルから離れる決断が自分で出来なかったからだ。


…………………………


「ナナさんのこと、ちゃんと考える。」

そう言われてから2ヶ月経った。


"ちゃんと考える"の相場はどのくらいなんだろうか?


1ヶ月くらいを想定していたわたしは
せっかちすぎるのか...?


この2ヶ月、ハルは更に仕事が忙しくなって
尚更恋愛モードになれないこと、
なんなら"考える"余裕すらないこと、
なんとなく気づいていた。

でもだからって、
わたしはいつまで待たされるのだろうか?


今まで十分時間はかけてきた。


ハルの転職、仕事の忙しさ、
考慮して待ち続けてきた。


もう、

後回しにされるのは終わり。



ハルが答えを出してくれないなら、
わたしが答えを出せばいい。


ここまで思えるようになるまで、時間をかけすぎたくらいだ...

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年末にデートの約束をした。


これが最後、
そう決めていたのは嘘じゃない。


年内で、関係を精算しよう。

ハルが、わたしを失ってもいいと言うなら
これ以上時間をかけて曖昧な関係を持続させる意味なんてないんだから...



…………


そんなわたしの決意なんて知るよしもなく

「ナナさん!映画でも観に行こうよ!
アナと雪の女王2がやってるよ!!
せっかくなら4DXで観よう!!」

はしゃぎながら提案してきたハル。


そんな提案を受け入れた時点で
自分の意志がぶれぶれなことに気づいてはいた。


でもさ、、
最後くらい、普通に楽しいデートをしてもいいよね...


………………



デート当日



朝、案の定遅刻してきたハル。

時間にルーズなことを分かっていたのに
今回は珍しくハルの方から起床連絡がきていたことで
安心しきってしまったのはわたしの読みが甘かった。

電車で2時間かけて来ているわたしより遅いって何事だろうか。

駅前のコンビニでタバコを吸っていると
駐車場にハルの車が入ってきた。


車から降りてわたしの方に向かってきたハルは

「ナナさん、寒かったでしょ?
暖かいの買ってくるから!」

と言ってコンビニの中へ入って行った。

戻ってきたハルから暖かいお茶を受け取って車へ乗り込む。

ハルってこうゆう優しいところあるんだよな。


ん?...なんだろう、この矛盾。



............


「ねえ、映画の時間間に合わないよ?」

「大丈夫だよナナさん!!あっとゆう間に着くからさ!」

「年末だし道混んでたでしょ?駐車場だって絶対混んでてなかなか止められないと思うよ?」

「まぁまぁ、任せてよー!俺が一瞬で止めちゃうんだからさっ!!」


...この読みの甘さが彼の遅刻の原因なのだ。



案の定、映画館のあるショッピングモールの駐車場は混んでいて

止められる場所を探してぐるぐるしながら

「ナナさーん、、どうしようー、空いてないよー!」

と泣き言をいっているハル。


「んー、あっちの方行ってみたら?
映画館のフロアからは遠くなるけど、出てくる車いるし。」


こうゆう時に怒りよりも変に冷静(冷める)になってしまうのはわたしの良いところか、悪いところか。

......

なんとか無事に駐車場に止められて
一刻も早く映画館へ向かいたいわたしを引き止めたハルは
車の中でメガネを外し、コンタクトをつけている。

...この計画性の無さが彼のルーズさの根源なのだ。



……………………
………………………………

映画館へたどり着くと
上映開始まで10分を切っていた。

事前にチケットは取っていたので、
急いで発券して会場へ向かおうとすると

「ナナさん、トイレとか行ってきていいよ?
俺ジュースとか買っとくから!」

そう言うハルの言葉に甘え、わたしはトイレへ行った。

こうゆう風にちゃんと気遣いしてくれるんだよな。


ん?...なんだろう、この矛盾。


…………………………
…………………………………………



初めての4DXに大興奮し、
ほとんど1人でポップコーンを食べたハルに呆れて

更に2人前のご飯を食べてお腹がパンパンのハルに呆れて


ゲームセンターのクレーンゲームで意地になって8000円分も使ったハルに呆れて

懲りずにスマホゲームに1万円課金していいか聞いてくるハルに呆れて


散々自分の買い物に付き合わせたくせにわたしが見ているお店で飽きてしまうハルに呆れて

8000円かけてクレーンゲームでゲットしたフィギュアを自慢しながら
嬉しそうにサーティーワンのコットンキャンディを食べているハルを愛しく思った。


あーぁ、この人といると
なんでこんなに楽しいんだろう。



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時計が欲しいから一緒に見てほしいと言われて
時計屋さんへ行った。


「ねーナナさん、みてみて。
これ、かっこよくない??」

「あー、ほんとだ!かっこいいね!」

「でしょー?ずっとこれがいいかなーってネットで見てたんだよね!」


「そうなんだ!色もおしゃれだね!」

「あとさー、こっちも良くない?」


「うーん、たしかにこっちの方がフォーマル寄りだけど、
ハルがつけるならこっちじゃない?色的にも。」


「うーん、まぁあれだよね!
たしかにこっちの方がフォーマル寄りだけど、
俺がつけるなら色的にもこっちだよね!」


「!!、言ったんだよなー、今!そうやって!!!!」

「まぁまぁ、ナナさん落ち着いて?
こんなところで怒ってみっともないよ?」


「いや、怒らせてんのそっちなんだよなー!!」


そんな、わたしたちにとっての
"いつものくだり"を恥ずかしげも無く店先で繰り広げていると



「なんか夫婦漫才みたいですね!」
「ほんとお似合いです!」


横で接客してくれていた店員さんが言った。




わたしの中の決意がパッと砕け散ったのを感じた。



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分かってる。

すでに、時間はかけすぎた。
十分すぎるほど...



恋愛は勢いとタイミング...
それが自論のはずなのに、

わたしとハルの恋愛は、

とっくに旬を逃してる。



それでもやっぱり


自分で時計の針を止めることなんて

わたしにはまだ、出来なかった。




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