♡Ep.【報われない恋愛の、残された2択】~彼女がいらない男Ⅱ~


この1年、わたしはまっすぐにハルを追いかけた。

掴めそうで、掴めない
そんなハルの気持ちに、

"いつか報われる"なんて勝手に期待して

必死で価値ある女を演じてきた。


でも

そもそも"演じている"わたしが
ハルの気持ちを掴めるはずも無く

結局は

ハルの言動で一喜一憂して
自分の感情を押し殺してまで
勝手に予測したハルにとっての"良い女"であろう選択を繰り返すだけの


他人(ハル)軸の女が爆誕した。


それが自分の価値を下げているとも気づかずに。



でもさ、


今更もう、

あとにはひけないんだよ。



⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱


もう、ここまでくると
わたしの中では2択になっていて


1つ、報われないと分かってはいても
ハルがわたしを拒否しない限りは現状維持をする。


2つ、とことんハルにとって都合のいい女になり
傷つけられてボロボロになって捨てられる。



むしろ、
後者に片足をつっこみ始めているような現状だが

なんならそれを望んでいる自分もいて、



もうとっくに
自分で決断できなくなってしまったわたしは

当たり前にハルから離れるなんてできなくて


自分のプライドとか、
今まで培ってきた恋愛の攻略法とか、
経験からの自信とか……

もう全部、木端微塵なんだから


そんなの守りたいなら
とっくにサヨナラしてたんだから



だからもう


わたしを捨ててよ。



ハルのことなんて、
思い出したくなくなるくらいに


ハルのことなんて、
不幸になれ!って恨むくらいに



そしていつか

わたしを捨てるなんてバカな男だったな。

って、自信を取り戻して言えるように



- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -



そうはいっても
希望や期待を捨てきれないわたしは
やっぱりハルの"求める"ことを模索して

"それができる女"でいることで
偽物のプライドを守り続ける日々。


捨てられたい

と望みながらも

捨てられない

ことに、わずかに残った本来のプライドを守りながら安心しているくらいには


自分で自分の価値なんて、分からなくなっていた。



ハルにとったら
自分第一優先で好きに仕事して好きに遊んで
そんな自分を受け入れて、好いてくれて

束縛も、わがままも言わない
電話したい時に電話して
会いたい時に会って

それだけで成立してしまう

"楽な関係"

不規則で大変な仕事にも
理解を示し、献身的に支えてくれる

"便利な女"

そして
この1年で良くも悪くも築き上げてきた

"信頼関係"



…こんな心地良い状態から
ハルがわたしを手放すとすれば


ハルが本当に好きな人ができた時


それか


いつまでも離れないわたしを
本当の意味で大切に思ってくれた時…

それは

わたしの未来を考えて
いつまでも期待し続けるわたしが
次に進めるように。



そして、

ハル自身がその重さ、責任を背負いきれなくなった時……



結局報われないシナリオしか見えないこの物語は
ハッピーエンドにすすむ道を模索するよりも

どんなバッドエンドを選び、選ばれるか

そんなところまできてしまったのだ。





でも

"どんでん返し"
"最後に覆された"

そんな物語もあるように

それは突然、
登場人物本人すら予想打にしない出来事も
起こってしまうもので……



…………………………
…………………………………………



小雨がパラつく夜だった

これからもっと降ってきそうだな、なんてベランダの手すりに滴る水滴を眺めながら
真っ暗な空に煙を吐き

連絡ないな…
既読のつかないメッセージに気を落としながらタバコの火を消した。


今夜は朝方までトレーラー走らせてるから電話できるって言ってたのに。

もしかしたら寝落ちしてしまったのかも?
朝までに荷物届けないといけないのに…
と、心配し、寝ている(かもしれない)ハルを起こすつもりで何度も鬼電したけれど
応答なし と虚しく表示されるだけだった。


……
……………
………………………


ハルからの連絡を待っていて
朝方まで起きていたわたしは

今日が休みで良かった、とうつろうつろに思いながら
浅い眠りを繰り返していた。





昨日はごめん。
仕事でいろいろあって、
久しぶりにイライラしちゃって
連絡できなかった。




起き抜けに気づいたハルからの連絡に

わたしは色々悩んで返信した。


送る前に何度も読み返し確認したその返信が


曲がるレールを変えて

バッドエンドを待つばかりだったこの物語を


急に加速させることになるとも知らずに




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