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まだまだ冷めやらぬこんまりブーム! 米国で人気の秘密とこんまり影響で伸びたビジネス

テテマーチ、ニューヨーク情報局のELLIEです。

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今年1月にお片づけコンサルタントの「こんまり」こと近藤麻理恵さんのNetflixオリジナルドキュメンタリー「Tidying Up With Marie Kondo」が公開されてから約半年以上経ちますが、米国ではまだまだこんまりブームが熱いです。近藤麻理恵さんも今年の11月に米国でお片づけと友達の大切さについての絵本を発売することを発表し、近藤麻理恵さんの活躍も勢いとどまる所を知りません。日本人によって日本で発祥されたお片づけ法の「こんまりメソッド」がなぜ米国をはじめとする海外で大人気なのか。また、こんまりのおかげで急成長を果たしたビジネスや関心の高まった分野をご紹介したいと思います。

まず、簡単に「こんまりメソッド」とは何かを説明しますと、「ときめくか」否かという自問自答をベースに家を場所別ではなく、物のカテゴリー別で衣類→本→書類→小物→思い出品の順番で片づけをしていく新しい断捨離法であり、ときめく物だけに囲まれて上質な生活を送ることの大切さに重きを置いてます。このこんまりメソッドの大きな特徴は、家・物に感謝すること、服は重ねるのではなく立てる収納、そしてミニマリズムとは違う点です。ミニマリズムのように必要最低限レベルで物を所有するのではなく、「ときめくかどうか」がポイントなので、大袈裟ではありますが、ペンを50本持っていてもときめくのであれば、取っておくのがこんまりメソッドです。

米国人気コメディアンのハサン・ミナージュさんがこんまりさんに実際に
ペン50本ときめく場合はどうしたらいいか聞いている様子
(出典: https://www.instagram.com/p/Bsv_cd5HIaD/)

今もなお続く米国のこんまりブーム3つの理由 

1. 土地・家の大きさの違いと清掃の習慣

米国でこんまりメソッドがこんなにも爆発的な人気を誇る理由として考えられるのは、家や清掃に関する文化や習慣の違いがベースにあることが考えられます。例えば、日本と米国の一般的な家の大きさの違いです。日本で車庫と言いますと、一軒につき車一台止められるのが一般的な大きさかと思いますが、米国では住んでいる州によって基準は違えど、今回のドキュメンタリーが撮影されたカリフォルニア州では、車が二台は入る大きさの車庫が一般的となります。他にも、一戸建てですと地下室があるのも一般的なので、自然と「物置」と化する部屋をお持ちの家庭が、日本よりも圧倒的に多くなります。

第一話でこれから車庫を片付ける様子
(出典: https://www.dailymail.co.uk/femail/article-6548023/Marie-Kondo-helps-California-family-declutter-KonMari-method.html)

清掃の習慣的な違いに関しては、米国は日本と比べると比較的清掃に不慣れな人が多いです。日本では、小学生の時から清掃の時間が設けら教室を掃除したり、家庭科の授業でも「衣食住」の住のカテゴリーで清掃、整理整頓、片付けに関して少なからず触れらたりするトピックで、幼少期の頃から清掃・片付けを身近に感じているかと思います。しかし、米国では小学校の教室も毎日学校終わりにプロの清掃員が掃除をします。生徒は清掃員が掃除しやすいように椅子を机の上に上げて下校します。私が通っていた米国の大学の寮も月1回のペースで清掃員が掃除をしに来てくださっていました。

2.「Tidying Up With Marie Kondo」が公開された時期 

2019年1月1日に世界中で公開されたドキュメンタリーですが、米国でまだまだこんまりブームが熱いのは、公開日・時期の後の季節も大きく影響しています。米国では日本のように年末に大掃除をする文化がありません。しかし、新年の「新しい一年と共に新しい自分に生まれ変わりたい!」という誰もがもつ気持ちに「こんまりメソッド」というふさわしい解決策とインスピレーションが合致し、米国を含む世界中の人々にこのメソッドを拡散することに成功しました。

そして、米国では新年の盛り上がりムードもこんまりブームも落ち着いたとかと思いきや、春にまたこんまりブームが再燃します。それは、米国では大掃除をするなら春という"spring cleaning”の時期がやって来るからです。諸説はありますが、冬が終わり暖炉の大掛かりな掃除を春にしていたことから、春に大掃除の文化が根付いたそうです。暖かくなり、窓を開けての掃除がしやすいからというのもあるでしょう。

新年から続いていたこんまりブームにspring cleaningの時期となり、ユーチューブでは、今だにインフルエンサーや一般の方が自分流のこんまりメソッドでお片付け・大掃除をしている様子や結果報告の動画が多く投稿されています。

(出典: https://www.youtube.com/watch?v=9XGDYJ_veSg&t=11s)

3. 大衆消費社会という米国でミレニアル世代は「燃え尽き世代」

米国は大衆消費社会ということもあり、物で溢れ返っています。特に近年では、インフルエンサーを目指している人も多く、大量に商品を買いレビューをユーチューブに載せたりと、大衆消費社会に更に拍車がかかっています。こんまりメソッドが人気になった秘密1.で米国の家の大きさについてお話したように、物で溢れ返っても物置きとなるお部屋がたくさんあるので、物がたくさんあることに関してあまり阻害にならず、こんまりメソッドが世に紹介されるまでは問題視されにくかったのです。

そんな米国の大衆消費社会に加えて、こんまりメソッドの人気を促進したもう一つの社会問題がミレニアル世代は「burn out (燃え尽き)世代」と言われている事実です。ミレニアル世代は1980年〜1994年に生まれた世代の人たちで現在25〜39歳です。なぜ、その世代の人たちが燃え尽き世代と言われているのか? ミレニアル世代を育ててきた親の世代は経済的にも政治的にも安定していましたが、社会的な変化によりミレニアル世代は同じ歳だった頃の親と比較すると経済面で、はるかに遅れをとっています。そんな事実にデジタルの発達が加わり、ミレニアル世代は自らを最大限に効率化し「常に仕事をしていなければ」という発想が生まれ、ちょっとした雑用で疲れを感じたりストレスを抱え込みやすくなったりして燃え尽き世代と言われるようになったのです。

ちょっとしたことを面倒に感じるミレニアル世代は料理することよりもテイクアウトを好む傾向がある一方で、自分を効率化・最適化するためにメンタル面を整え向上したいという世代でもあるので、瞑想などメンタルヘルスを高めてくれるものや運動が注目されています。そういう訳で、こんまりメソッドも阻害となる物を感謝して手放し、ときめく物だけに囲まれて生活の質を上げ、メンタルヘルスを強化しつつなりたい自分になれる手段として、ミレニアル世代からは特に絶大な支持を受けました。

こんまりのおかげで急成長を果たしたビジネス・関心の高まった分野

1. 容器・収納グッズビジネスのThe Container Store

冒頭でこんまりメソッドの特徴について少し触れましたが、もう一つの特徴は「お金をかけずに」お片付けができるということです。お片付けや整理整頓をするとなると「収納グッズを買わなければ!」という心境になる人は多いようで、こんまりさんは収納グッズは購入せずに家にある箱を使えば良いと提唱しています。

しかし、そんなこんまり論に反して米国の視聴者たちは、容器・収納グッズ専門店のThe Container Storeに押し掛ける勢いで大量の容器・収納グッズを買い漁り、The Container Storeはツイッター上でも大変話題になりました。

訳: The Container StoreはTidying Up With Marie Kondoのスポンサーになるべきだ。なぜなら、物を収納するための収納ボックスをたくさん買いたいからだ。(出典: ツイッター)

The Container Storeのブレークにより、容器・収納グッズを大量に使った新しいタイプのお片づけサービスも、多くのセレブリティー・インフルエンサーや有名企業がサービスを利用し、注目されるようにもなりました。中でも、ベストセラー本まで出した、収納グッズ型お片付けサービスのThe Home EditはThe Container Storeとのコラボで収納グッズを5月に発売し容器・収納グッズビジネスは勢いが更に増しています。

左: The Container StoreとThe Home Editコラボ商品のうちの一つ、
重ね合わせることが可能な透明の収納ボックス
(出典: https://www.instagram.com/p/Bxi13lBh_yx/)
右: お片付けサービスのThe Home Editが有名セレブリティーである
クロエ・カーダシアンのパントリーを整理整頓
(出典: https://www.instagram.com/p/BscB-OkBWWc/)


2. 寄付する人と掘り出し物を求める人でダブル混雑のリサイクルショップ!

The Container Storeと同じくらい人が押し掛けて話題となったのが、こんまりメソッドでのお片付けを終え、不要となった物を寄付したり、買い取ってもらったりできるリサイクルショップです。米国の代表的なリサイクルショップ・Goodwillの某店舗では、昨年度1月の第1週目と比較すると今年は66%も寄付率が上がったそうです。

訳: Goodwillでのこんまり効果か? 寄付するために長い列ができている。(出典: ツイッター)

米国にも日本で人気のメルカリや似たフリマアプリのPoshmarkやDepopがありますが、自分で値段設定できて売れるという利点があっても、売れるまでは手放さずに溜め込まなければならず、こんまり論に反するので、一刻も早くときめかない物は手放し新しい自分に生まれ変わりたいという人でリサイクルショップは寄付するための大行列ができたのです。また、こんまりメソッドにあまり興味のない人たちも、手放されたブランド品や掘り出し物を狙い、リサイクルショップは買い物をする人でも溢れていたそうです。

3. J ビューティー

お片付けとは程遠いですが、近藤麻理恵さんのルーツである日本の美・スキンケア(米国ではJ ビューティーという表現をします。)も非常に関心の高まった分野でした。米国でアジアの美の代表と言えば、コストパフォーマンスの良い韓国のKビューティーがまだまだ根強いですが、こんまりブームにより日本の化粧品ブランドが知名度を上げ、至るところで、近藤麻理恵さんのお肌やスキンケア・ルーティーンが非常に"整理整頓"されているといった内容の記事が投稿され、年齢を感じさせない近藤麻理恵さんのお肌とシンプルかつときめくスキンケア・ルーティーンは、米国の女性たちを虜にしました。

(出典: https://www.instagram.com/p/BummNtWhzcB/)

まとめ

近藤麻理恵さんは、阻害となる物を手放しときめく物だけに囲まれた上質な生活を送ることの大切さを米国の様々な条件・現象や文化の違いに伴い、お片づけの常識を覆しました。米国では、幼少期から養われる清掃習慣や大衆消費社会とミレニアル世代の燃え尽き症候群といった社会現象・問題などが重なりトレンドを更に加速させ、関連のあるお片付けビジネスやこんまりメソッドの手順のうちの一つ、ときめかない物を手放す手段・到着地点となるリサイクルショップのビジネスまでも促進させました。また、一見関連がなさそうなJビューティーの関心も高め、近藤麻理恵さんとこんまりメソッドは、米国に多大な影響力を与えました。

今回の米国でのこんまりブームをヒントに、日本のトレンドを輸出する際には、文化の違い、幼少期から養われる習慣、季節に伴う仕来たり、世代、社会現象・問題などに着目し、ブームを起こしたいトレンドと関連するビジネスはもちろん、目に見えにくいレベルの分野まで焦点を当てると多大なビジネス・マーケティングのチャンスが訪れるかもしれません。

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