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見えなくても「こどおじ」問題

お笑いは面白いので好きなのだけれど詳しくない。芸人さんの深夜ラジオもお仲間の
話などになると全然ついていけなくなるので「ラジオ深夜便」にチャンネルを変えて
しまったりする。

そんな中でも漫才コンビ、空気階段の「踊り場」という番組は楽しくてよく聞いてい
る。特に孤独なおじさんこと「こどおじ」のコーナーがお気に入りだ。
おじさんから送られてくる普通のお便りを悲壮なBGMに乗せて鈴木もぐらさんが不通
に読んでいるのだけれど謎に哀愁が感じられて思わず笑ってしまうのである。

投稿してくるこどおじはたいてい30台40台。たまに50台という所だろうか。

このくらいの年齢ならまだ笑っていられるけれど、60台70台のこどおじとなるともう
笑って済ませられるレベルではない。もはや社会問題だ。

以前ニュースを聞いていたら政府の機関にも「少子化問題」とか「女性活躍」なんか
に混ざって「孤立させない問題」みたいなセクションがあって驚いた。そうなのか、
そこまで深刻だったのか、こどおじ問題!!

Noteで読ませてもらった記事の中にも孤立する高齢者、特に男性が多いとか、仕事で
孤独死の現場に何度も立ち会ったなんていう内容のものがあり、自分の見識の狭さを
痛感させられた。


視覚障碍者の世界も一般社会の縮図、「こどおじ」は身近にもしっかり存在する。

私が所属している朗読サークルとか読書会によく入ってくる70台全盲こどおじがいる
。リアルの時は存在すらほとんど忘れていたけれど、コロナ禍でリモートになったら
やたら出没するようになった。しかもそのこどおじ、朗読にも読書にも興味があるわ
けではない。

他にも視覚障碍者のサークルはたくさんあるのだから自分が好きなジャンルに行けば
いいのではないかと思うのだが、私たちのサークルに来るのはひとえに女性率が高い
からではないかと踏んでいる。

この彼以外にも何人か残念な視覚障害こどおじを知っている。気の毒だとは思うが正
直彼らは一緒にいて楽しくないのが共通点。

彼らも興味もない朗読や読書の話を聞いていて楽しいのだろうか。いや、たぶん「昨
日○○サークルのオンラインミーティングに参加した」という既成事実が欲しいだけ
なのだろう。

こういう老害系のこどおじは障害の有無にかかわらずあちこちで散見されるのでさし
て珍しくはないだろう。


より深刻なのは、こどおじが人生半ばで重い障害を負ったりした場合である。

目が見えなくなってしまった人の場合、多くは自力で外に出ることができない。ヘル
パーさんと病院に行く以外全く外に出ないなんて人もたくさんいるはずだ。

以前健常者として私たちの読書サークルに入ってきたおじさん、あまり本を読むタイ
プではなかったけれど、アニメ好きだったのでメンバーとはそこそこ話が合った。
しかし糖尿病で視力が落ちこちら側に来てしまった。

はじめのうちはまだかなり見えていたので私たちからも情報を仕入れてマッサージの
勉強をしたりしていた。

でもある日、メンバーたちの楽しそうなメールを読むのがつらくなったと会を辞めて
しまった。きっと障害が進行してしまってほとんど見えないか全く見えなくなってし
まったのだろう。

彼はいつも本やアニメの話で楽しそうにしている私たちの姿しか知らなかったから、
重度視覚障害を甘く見ていたに違いない。

見えなければゲームもできない。ジャンフェスにもコミケにも行かれない。イベント
のチケットも取れない。それ以前に生活のあれこれが全部できなくなるのだ。

そして彼は私たちとの交流も絶ってしまい完全なこどおじになってしまった。


障碍者の場合このパターンが一番切ない。こんな時こそ視覚障碍者の友達に頼ればい
いのにおじさんは助けてほしいと手を伸ばせないのである。


知り合いが通っていた教会にも全盲のこどおじがいたそうだ。仕事もできず生活保護
を受けていたらしい彼をおばさまたちが交代で面倒をみていたらしい。
散歩に連れて行ったりいろいろ手伝ってあげたりもしていたようだが、「お嫁さんが
欲しい」と言われた時には皆ドン引きしたとか。

彼はお嫁さんというより何でもやってくれる専属の下僕が欲しかったのではなかろう
か?!私も欲しいぞ、専属下僕!

確かに見えないと普通の日常生活すらままならない。下僕とまではいわないまでも目
の代わりをしてくれる人がいたらどんなに楽だろうか。

ヘルパーサービスは利用できるけれど、時間制限もあるし何でも頼めるわけではない

コロナの検査キットだって見えなければ無用の長物。ヘルパーさんに来てもらって「
陽性かもしれないから見て下さい」とか「検査したいから病院に連れて行ってくださ
い」とはなかなかに言い難い。

そしてヘルパーさんだって人間だ。セクハラまがいの事をしてくるこどおじはNG案件
になる。ヘルパーさんにも見捨てられたこどおじはさらに孤立していくのである。


ではこどおじはこどおじ同士でコミュニティーを作ればいいではないかとも思う。で
もなかなかそうはいかない。仲間を作れるようならそもそもこどおじになんてならな
いだろう。


本物のこどおじは空気階段のラジオには投稿して来ない。こどおじは自分がこどおじ
だと認めたくないのである。

寂しいけれど、異性はおろか同じおじさんともうまく絡めないこどおじに未来はある
のだろうか。

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