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解説・「青さん危機万髪」前後編 カズオの運行日報 第11〜12話

今回は青さんの髪の話メインで、なんの会社でも中間管理職って似たような大変さだろうからあんまり解説する事柄は無いかな?…とも思ったんですが意外とあるなぁ…。
今回も4000字くらいです(^^;)

運送会社で「司令塔」となる配車の仕事はとくにフリーチャーターでは毎日リアルタイムで指示を飛ばしトラブル回収もするので、世の中のいろんな業種の企業の管理職の中でも結構大変な部類だと思います。


社内配車の大変さ

第11話で青さんと佐竹さんが電話でモメているのをサクッと説明しますと…。

・給与形態が運賃の○%という歩合ありなので佐竹さんは高い仕事がほしい
・配車の青さんとしては「空車距離」が長いと経費等ムダが増えるので、間違えて送った指示書は本当はもっとその近くにいるドライバーに回すつもりで、佐竹さんには別な仕事に行ってほしかった

…という、フリーチャーターで都度都度仕事をとって自社の各ドライバーに振り分ける業務形態の会社ではありがちなことなんです。


カズオの運行日報 第11話より

ドライバーは仕事内容がバラかパレットかという「ラクさ」も求めるし、給与形態が歩合つきなら歩合が多くなるほうが当然いい。

歩合は運賃のうち何%とかだったり、距離制で実車距離(積んで走った距離)1kmあたり幾らという計算で付けてる会社もありさまざまです。距離制なら、「遠くに飛ばしてくれる仕事がほしい」となります。

歩合制の落とし穴

ココだけの話…「頑張ったら頑張っただけもらえます」と、歩合制をアピールポイントとして求人広告に出してる会社も多いですが…。

歩合制といっても、いろいろあるそのシステムが問題です。

今はないかもしれませんが、昔あったのが「運賃から使った高速代と燃料代を引いた残りを会社とで折半」というスタイル。
安っすい仕事しか取ってこれないのにこの形態だと、ドライバーは寝ないで一般道走らないとならないし暑くても寒くてもエンジンかけて休めない、それでも会社は損しない…というコトになります。
当然関東から関西まで13時間じゃ着かない。その前に納品や荷待ちもしてるわけですし。

蛇足ですがトラックそのものを運転して運ぶ陸送なんかはもっとひどい会社があり、「取っ払い」で最初にもらったお金から搬送する車の燃料費と高速代を捻出して(引き取り時は燃料スッカラカン)、残りが自分の手取りです。それが見合った金額ならいいがそうではないから無茶をする。
解体屋に持っていく中古車搬送なんか、途中のマシントラブルの修理代も「取っ払い」からです。
「陸送」は営業ナンバーではなく仮ナンバーで仕事するので、運送会社のコンプライアンスの目から洩れているのです。

このような給与形態ですと、体調悪くて指示があったとき以外に高速使っちゃった…ってときに逆に会社からマイナスされます…。

まぁコンプラがうるさく言われて久しい&温暖化により夏場のアイドリング禁止も問題視されてるので営業ナンバーの会社に関しては減ったとは思いますが、こういう会社にだけはご注意ください…。

配車マンとドライバーの関係

それとやはり、配車マンも人間ですから好き嫌いがあったりします。
槍杉さんも青さんも公平に努めてますが、それでも「アイツのほうがいい仕事きてる、なぜだ」と言うドライバーは必ずいるし、実際の運送会社では配車マン側としても「アイツ嫌いだからブタ仕事(大変な割に安い仕事)回しちゃえ」って人もいます。

配車マンに気に入られず辞めた、という経験をしたドライバーも少なくありません。(実は焦げ猫もあります。焦げ猫が配車やっていてエコ贔屓だのなんだの突き上げ喰らったたことも…)

トラックドライバーは出発してしまえば独りの時間が長いので、コミュニケーションが苦手な人に向いていると言われますが、世間さまが思っているほど気を遣わなくはないと思います。
積み地や納品場所での振る舞いも無愛想で挨拶もしない人はやはり損しますし…。

総じてうまくやってる人は「挨拶が元気で明朗な人」「バカ話ができる人」「仕事は楽しく、がポリシーの人」だったりします。

ただね、配車マンに媚びればいいかっていうとそうじゃない。
配車マンも「ちょっとキツいのだけど頼むよ」って言い方するとかが大事だったり、ドライバーも「この埋め合わせは次回!」って冗談めかして言ったりね。
お互い様ですからギシギシしない関係を保つことが大事だと思っています。


「深視力」とは?

第11話で青さんが「深視力が…」と言ってますが、大型等の免許更新のときには機械を覗くタイプの視力検査で「深視力」をパスしないとなりません。

カズオの運行日報 第11話より。疲れもあったと思われます(涙)

深視力検査とはどんなものかというと。
棒が3本並んでいて、真ん中の棒が手前と奥を行ったり来たりします。両側の棒と真ん中の棒がツライチになったタイミングでボタンを押してください、というもの。
要は大きい車に乗るのだから遠近感しっかりわかる?っていう検査です。

普通に視力に問題ない人でもコレはその場でやり直しになることが結構多いんですよね。

焦げ猫的には、動く真ん中の棒を注視しないで、動かない両側の棒をなんとなく眺めてる感じのほうがうまくいく気がします…。
焦げ猫もかなり視力が落ちていて、コンタクトをしてかつ運転のときに近視・乱視矯正のメガネ、伝票や日報書くのに老眼鏡という状態です。
マンガ描いてるせいもあるでしょうが、見える範囲が狭くなってます…。


一般とは?仕事の呼び方について

運送会社の業務の種類について、呼び分けのしかたが非常にたくさんあり、ややこしいと思います。
とくにドライバー職の方でも、自分がやったことのない業務は聞いたことがない、口にしたことがない、という人も多いかもしれません。

まず車両による呼び分け。
ドライ(常温)か、冷凍車でやる仕事か。平ボディー、ユニック(クレーンつき)か。ウイングか、箱車か。
チップ、ローダー、バルク、ローリー、ダンプ等も専用構造の車両でやりますから車両による仕事の呼び分けです。

車の大きさによる呼び分け。
大型、増トン、4t、2t、オバケ(バケロンともいい、4tベースに大型サイズの箱を架装した車。発泡製品やお菓子など軽くて嵩張るモノを運ぶ)。

運ぶモノ・行く現場による呼び分け。
一般か食品か、青果・鮮魚か。

距離による呼び分け。
地場か、中距離・長距離か。

配達件数による呼び分け。
1車まるまる1ヶ所に納品の場合はとくに言い方はないような気がしますが、件数持つ場合は「バラマキ」と言います。

荷役による呼び分け。
パレットもんかバラか…つまりリフトで積み降ろしか、手積み手降ろしか。
バラのことは「ちゃぶり」「手づかみ」と呼ぶ人もいます。

時間帯による呼び分け。
日勤かナイト便か。

客先による呼び分け。
B to Bは企業間、B to Cは通販商品の宅配など。

契約形態による呼び分け。
定期か、フリーか、貸切か。

…などなど。

参考イラスト…一般的な「一般」の倉庫↓

カズオの運行日報 第12話より

作中での「一般」の仕事について

第12話で古毛サンが教えているのは、有名メーカーのオフィス家具を製造している下請さんからメーカーの倉庫に納品する「一般」「ドライ」の仕事で、倉庫間の横持ちも含めカズオは就職してから免許を取るまでは青さんと一緒にこういった「一般」の仕事はしています。

「グランジの神様」第9話より


ただ、相乗りで車泊の必要な長距離に出ると疲れますし、2tで長距離ってのもそうそうないので(寝る場所がない)この時点ではカズオに長距離の経験はありません。
が、12話からの仕事では倉庫への出荷以外に直接客先に搬入というケースもあり、長距離もあるという設定です。
まぁコレは実際焦げ猫がやってた中で「4t」の「一般」ではいちばんわかりやすいパターンの仕事でしたので…。
で、カズオはこれから長距離デビューです(^^)

いわゆる貸切で、積むのは毎回同じ工場です。
ただ、実際にもそうでしたが出荷がない日もあるので、契約としてはフリーに近く、青果の仕事があるシーズンはそちら優先で切り替えます。

決まった倉庫以外には客先に搬入といってもオフィス用スチール家具なので個人宅ではなく、例えば新規開店の病院やスーパーにデスクやキャビネットだけでなくレジ台やサッカー台、受付カウンターや従業員ロッカーなどを持っていく仕事で、都度新しい場所で建設中の活気のある現場に行くので楽しかったですね。

だいたい一般の仕事は積むモノがなんであれ、積み込み・降ろしともに作中のように受付して呼ばれるまで待機…といった感じです。
この「待機」の時間が長いことも2024年問題で取り上げられている事案のひとつです。


荷滑りロウ

ちなみに荷台に塗る「ロウ」、「カズオの運行日報」第1話で2tの仕事のときにカズオが塗ってるシーンがありますが。

カズオの運行日報 第1話より

焦げ猫は身体の調子が悪くなってきてから屈むのが大変になったので、作中のように削ってバラ撒いてました。
あくまでもこれは焦げ猫のやり方であってすべてのドライバーさんが推奨するやり方ではありません(汗)。
ウイングを両方開けて積む場合は風で飛んで行っちゃいますし、ゴミが落ちてるように見えて嫌がる人もいると思います。

同じ車両でパレット仕事もやる場合では、ロウを塗るとパレットが滑りやすくなりますのであまりお勧めできませんが、バラの大変さに負けて塗ってたので、パレット仕事の時は緩衝材とラッシングベルトでガチガチに締めていました。

カズオの運行日報 第12話より

給与形態の「歩合制」は諸刃の剣でもあるので、今では評価制や完全にサラリーマン式の形態の会社も増えています。

次回、マンガ本編はカズオの新しい4tの仕事について描いていきます。
番外編もまた入れるかもしれません…どうぞお楽しみに!

この解説記事のマンガ本編はこちら↓

「カズオの運行日報」マガジンはこちら!↓


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