三浦に定食屋を構える元上司に、店を開業することについて話を聞きに行ったとき。
　強調していたことのひとつに「立地」があった。

　大事なのは「職住ができる限り近いこと」。

　飲食店は体力勝負、仕込みや片付け、夜まで営業するとなると、とにかく家から近いほうがいい、というのが元上司のアドバイス。

　私はちょっと驚いた。
　確かに、お店の仕事と家庭を両立することになるのだから、近いに越したことはない。でも、大学や学校が近いほうがいいとか、商店街のちょっと入ったところがいいとか、交番や病院があると治安がいいとか、程よく駅近がいいとか、そんなことばかり考えていた。
　自分の体力のことはあまり頭になかった。

　でも、今より遥かに休みは減るだろうし。
　ワンオぺだったら、自分が行かないことには、お店は始まらないし。
　何より健康、体力、元気第一だなあと。

　まずはそれをキープできる場所って考えたら、確かに、自宅にできる限り近いところってなる。

　私が今暮らすところは、いわゆる昔からの地元ではないので、友人知人もいないしまちのこともよく分からない。特に友人知人は、最初のお客様候補になるんじゃないかしら。それでも自宅のそばがいいんですかねえ、と聞くと、

　客は、そのうちついてくる。友人知人の多い少ないはあまり関係ない。
　
　オレなんか、バイクで10分の今の店だって結構遠いと思うもん、と元上司はカラカラ笑ってた。

　そう言われてから、家から勤めにいく道すがら、あの場所だったらカフェできるかな、あそこならどうかしら、とキョロキョロとみて回るようになった。
　
　あそこ、素敵だなあ、と思うところもあるけれど。

　まだまだ考えなきゃいけないことは、たくさんあるな。