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世界構築と言葉で交わさない意図の上手さ【「ACCA13区監察課」アニメ感想:第一回】

皆さんはACCAについてご存じだろうか。
原作はスクエアエニックスから発売されており
全六巻と外伝一巻、PS二巻の計九巻。アニメは2017年に全12話。
また、舞台化もされている人気作品だ。

原作は独特なタッチや皮肉めいた海外っぽさが人気のオノ・ナツメさんが描かれている。この方の描く絵は昔初めて見た時から僕が愛してやまない作画をされているのだが、物語は端的に言えば組織物の推理マンガだ。

架空の国13地区に分かれるドーワー王国を舞台とし、ACCAと呼ばれる組織に所属する一人の男、通称「もらいタバコのジーン」が自身の知らぬ内に組織やそれ以上の力、思惑に巻き込まれていく話だ。

今回長年ため込んでいたオノ・ナツメさんという人の描かれるストーリーや構成の素晴らしさ等々語りたいことが多い為、回を複数回に分けてお送りすることにした。

記念すべき第一回はACCAの魅力を語る前に原作者オノ・ナツメさんの描かれる様々な作品を例に挙げ世界観構築の上手さや別名義で描かれているBL作品で起こる人間模様にも触れていく予定だ。

そして次回以降、ACCAアニメ全12話を見終わった感想とはまた別に番外編として個人的な腐目線的な感想、もし間に合えば舞台やOVAの話を入れていく予定である。

その為、ネタバレやボーイズラブ系の話が苦手な人はそっとブラウザバックを推奨する。

また、断っておくがこのACCAというマンガ・アニメはBLものではない。素晴らしい作品の中にほんのりかおるそれを勝手に僕が拾い上げているだけに過ぎない。そのことだけは忘れずにお願いしたい。

ではいこうか。国から作りこまれた素晴らしいオノ・ナツメさんの世界へ。

オノ・ナツメさんの街を作り上げる力

最初に上げておきたいのだが、原作オノ・ナツメさんは組織やグループ一つの関係性を作るのがとてもうまい人である。
僕が最初にオノさんと出会った本は「LA QUINTA CAMERA ~5番目の部屋~」という読み切り漫画だ。イタリアで男四人がルームシェアをする話で、四人を中心にもう一人、代わる代わる入ってくる異国住民五人目とのかかわりを描いていく。小さなその部屋から周辺の住民、留学生、そしてイタリア全体の風習等のふんわりとした知識も含めこの本を読むとイタリアに行っているような、旅がしたくなるような気分になるのだ。

また、「GENTE リストランテ・パラディーゾ」は料理店内老眼鏡紳士だらけのイタリアにある料理店の話だ。それぞれに個性豊かな男性たちがレストランを中心に恋に仕事にと奔走していく。

ここからわかる様に、オノさんは海外系、特にヨーロッパ系の話を描かれることが多い。また、基本的には一つの店等の箱庭から始まり、そこから地域、国へと意図せず広がって読者が理解できるような世界観の作りこみをされている。物語の舞台で出てくる食事や住宅の風景、育てている物等、様々な部分からただの舞台設定的な海外ではなく、身近に感じられる日常の中の一コマとしてその地域を表現していく。
人との関係性もその地区の人らしいやりとりを表現するのが上手い人で、顔の作画も一人一人かなり特徴的だ。

そんな中で培われた箱庭から広がる地域性や日常が今回のACCAにはふんだんにもりこまれている。そのあたりにも注意してみていこう。

別名bassoの名で描かれる大人のBL

オノさんはbassoさんという別名でBLを描かれる作家さんであり、海外系政治家やパパラッチ、秘書はたまたジェラート店の店員等が登場し日本におけるBL時空とはまた違ったゲイであることが日常な人たちを描いている。

それぞれに良さがあるのだが、BL漫画によくありがちな少女漫画感があまりないというのも特徴的かもしれない。また、言い回しが独特で「皆迄言わずともわかるだろう?」という様な皮肉めいた動作や言葉がないカットインも素晴らしいのだ。

物語にはいつもどこかの店がある

また、基本はオニバムス形式で1話完結型の話を描かれることが多いbassoさんのBLだが、ある3人組が何気なく集まっていたジェラート店の話が別の巻では店主サイドの舞台になっていたりする。その地域全体、そしてその舞台に人がいて、行き来をするその偶然が当たり前のようにそこに広がっているのだ。しかもそこに先程の3人が絡む……みたいな事はほぼなく、本当にただ1人のお客様なのだ。それがたまらなく愛しく感じる。店に愛着が湧くのだ。そして地域に愛着が湧くからこそ「ここに行ってみたい」そう思わせる作品構成だと僕は思っている。

ACCAにおいても上司への報告の場や何かが動くキー的な場所なのに、そこは何の変哲もないただの食パン屋。というのもなんともオノさんらしい。

登場人物の静と動、続く日常

そして、ここに出てくる登場人物達が発する言葉の数々は考える余地を残す言葉が多い。と思えば言葉の悠長さとは裏腹に突然直接的な事柄が起こったりと緩急が上手かったりする。

後これは完全に余談だがbassoさんは年上受けをよく描かれるので本当にいつも感謝している。インテリ老眼メガネスーツをありがとう。

話が逸れた。物語の結末については"それでも日常はこれからも続いていく"というような最後が多いだろうか。そしてその続くだろう先は描かない。今にも次のページが始まりそうな終わり方がたまらなくいいのだ。
また続き物の作品になった時にヌルッと入れるというのも凄い点だなと思う。

今回のACCAも話の構成自体は13区を回って事件を解決していくある意味の1話完結型だがその1話で地区の人間や彼の住む街に愛着が湧いていく。し、毎回何かを食べたりするそのご飯は毎度美味しそうだ。また、彼は監察課の任務外のことに手を出さないので地区の問題は彼の物語上では続かない。けど、別の話ではその話も進行しているのが何となくわかる。

ACCAに限らずオノさんの作品は言葉の含みや言い回し、カット等で匂わせるという部分が多く、かと思ったら突然そんな聞いてないひゃーー!!みたいな危機迫ることが起こったりするので気が気でないのだ。ありがたいね、ほんと。すき。

さて、筆者の語彙力がなくなったところで纏めに入ろう。

第一回のまとめ

いかがだっただろうか。
今回はACCAに触れる前にオノ・ナツメさんの世界観や作品の特徴について触れていく回だった。各人間模様を描くための舞台を整える力があるからこそACCAにおけるドーワー王国一国とその13地区を作れたと言っても過言ではない。
これを機に一度原作やその周辺書籍を漁ってみるのも楽しいだろう。

次回はいよいよACCAアニメの感想とそれに付随する個人的な腐目線的な感想、妄想、その他普通に推理とか何一つ出来てなかったポンコツ頭がいかに物語に翻弄されたかを語っていこうと思う。

それではまた次の舞台で。

おまけ

今回の記事を描く前に練習したジーン。もっと頭がふわふわしてる気がするのでもっと練習しようと思う。

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それではまた次回~!

猫缶代、いつでも待ってます。