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【J2リーグ】ボールの向こうへ【第12節 町田対熊本】

こんにちは、今回もロアッソ熊本の試合レビューを書いていこうと思います。

今節は首位の町田を相手に攻守共にどこまで通用するのか、現状の位置を確認する試金石となる試合でした。

両チームのスタメンとシステム、得点者は以下の通り。

得点者
8分 奥山 政幸(町田)
62分 エリキ(町田、PK)
88分 石川 大地(熊本)

得意なことなんかさせない

今回の試合はポゼッションが得意な熊本、堅守の町田の特徴がすぐクッキリと表れてきました。

熊本はいつものように最終ライン3枚とアンカーの上村でパスを回していきます。
上村には守備時トップ下に位置するエリキのマークこそついていたものの、熊本の左右CB(黒木、大西)が1トップのデュークの脇のスペースを使って前進→横パスを上村につけていくことでエリキのマークを無効化していきました。
ここまでは良かったのですが、ひとたびサイドの高い位置に張るウイングにボールが入るとSBとサイドハーフのプレスバックによる2枚のプレスですぐ奪われてしまいます。
右サイドの島村はボールの出口作りに1列下りてきて事態を打開しようとしますが、サイドハーフのしつこいプレスで前に進めず、カットインしても片側に圧縮してプレスにきているので、バックパスか横パスしか入れることが出来ない状態が作られていました。

熊本CBが持った時のポジショニング
熊本のウイングにボールが入った際の守備

最終ラインで横パス、サイドハーフ→最終ラインで作り直しするような時は敢えて深くまで追わず、ある程度は自由にやらせていましたが、ウイングにボールが入るとSBとサイドハーフで挟み撃ち、近くのサイドハーフの竹本やトップ下の平川もマンツーマン気味にプレスが来ますのでパスコースすらない状態でした。

攻撃が上手くいかないと、守備にも綻びが出ます。
町田は奪うと手数を掛けずデュークに長いボールを入れてきます。
そうすると流石は現役オーストラリア代表、しっかりと収めてマイボールにしてしまいます。
上手く収められず弾いたとしても、サイドハーフとトップ下のエリキが前を向いてボールを引き取れるようにポジショニングします。
熊本は本来、ハイプレスで相手に制限を掛けてセカンドボールを拾う形を作っていましたが、ハイプレスを実行する前に町田が前線・中盤を飛ばして長いボールを入れて来るので、後手の対応になってしまいます。

その結果、デュークの落としから奥山がリフレクトしたりしたものの見事なミドルシュートを決めて先制してしまいます。
手堅いチームを作ってきた町田、これはお見事と言うしかありませんでした。

後ろに重くなる重心とパス封じ

前半の早い時間帯に先制を許した熊本、さっそく反攻に出ますがなかなか前に進めません。

ウイングはサイドハーフとSBの挟み撃ちで身動きが取れず、トップ下の平川も2枚のCHで監視されてしまっており縦パスがつけられません。
結果、痺れを切らした平川が下がってビルドアップに加わりますが、これも町田側からすれば狙いどおり。
ポゼッション+ハイプレスを採用する熊本からすれば、高い位置からプレスしたり、ポゼッションすることでボールより高い位置に多くの人を送り込みたい。
でもハイプレスする前にボールが自分の頭上を通過していくし、ハイプレス→ポゼッション前提で設計されたチームであるがゆえに長いボールの競り合いやセカンドボールを取り合う肉弾戦は不得手。

よって、長いボールを効果的に使われ、高い位置でのポゼッションも封じられた熊本は、ボールの出口作りに奔走するばかりでどんどんボールより後ろ側に人が増えることに。
どんなに得点力があろうがアシスト能力があろうが、後ろでパスを回しているだけなら全く怖くありません。
そうやって熊本は最終ラインでパス数を積み重ねるばかりで、時間を浪費してしまいました。

ボール保持率65%、パス数が相手の約3倍を誇りながらリードをされてしまったのは上記の状態からでした。

リアリズムに裏打ちされたチーム作り

後半が始まっても大勢は変わりません。
効果的な攻撃が出来ない以上、どうしても守備にも綻びが出てきてしまいます。

62分にショートカウンターからデュークの抜け出し→大西の後ろからのプッシングでファウル、PKとなってしまいます。
これをエリキがきっちりと左下に沈め、熊本を突き放しに掛かります。
このゴールも手堅い守備から手数を掛けず前に進む、というチーム戦術の高い浸透具合が見てとれました。

熊本のように低い位置からビルドアップして、ショートパスを繋いでゴールに迫る、というのはある種の理想形ではあります。
ですが自分達のスカッドを冷静に見極め、適材適所に人材を置き、100%の力が出せるようにチームを作り込んでいる町田は、熊本とはまた違ったベクトルの理想形を追い求め、ピッチで体現しているように見えます。
シーズン前に大型補強をして大幅にスカッドを強化していますが、それも監督以下コーチ陣が上手くチームビルドをしなければ空中分解の恐れすらあります。

それに大型補強をすれば戦術の浸透もどうやるか?は問題になってきます。
そこも守備戦術をしっかり浸透させ、攻撃は手数を掛けずタレントの個性を組み合わせて最小限の手数で完結するように作り上げられています。
正にリアリズムに裏打ちされた、素晴らしいチームだったと思います。

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