スクリーンショット_2016-07-18_14.50.10

NY公立小学校の知られざる実態

娘が4歳の誕生日を迎える来年、もしくは5歳になる再来年に引越しを検討している。

評判の良い公立の小学校に入れるためである。

アメリカでは、学区によって、教育方針、学力テストのスコア、両親の熱心さ、人種に至るまで、大きな差があるのだけど、特にニューヨークでは、通りを一つ挟んだ二つの学区で、日本では考えられないほどの差があることも珍しくない。

マンハッタンのアッパーウェストサイドは、以前住んでいたエリアで、評判の良い学区も多いため、引越し先の第一候補になっているのだけど、今、ここで、学区の再編制が行われていて、周辺の住民を巻き込んだ大騒動になっている。

上の地図にある学区199は、教育熱心なミドルクラスからアッパーミドルクラスの白人が中心で、テストのスコアも高い。その北側の452も同様である。一方で、最南に位置する191は黒人とヒスパニックが大多数を占め、テストのスコアも格段に低い。

どうして狭いエリアでこれほどの差になるかというと、ニューヨークには、『プロジェクト』と呼ばれる、生活保護を受けるような住民が住む大規模な公営住宅が、数ミリオンの高級アパートと隣接しているからだ。

教育熱心な親たちは、当然199や452に通わせようとするため、定員オーバーの状態となる。この不均衡の解消を掲げて提案されたのが、191,199,452の学区を大幅に変更し、人数合わせをする再編制である。

既に入学している生徒は、編制後も同じ学校に通い続けられるのだけど、それでも親たちはカンカンで抗議を申し入れている背景には、不動産価格への影響という大人の事情がある。

ただでさえ高額なニューヨークの不動産であるが、学区が良いエリアのファミリータイプの物件はさらにプレミアムがつく。特定の学校に入れるため、どうしてもそのエリアに住みたい家族がたくさんいるからだ。

その前提でアパートを購入しているのに、自分たちのアパートが人気のない学区に編制されたりでもしたら、その価値はどれほど目減りするか分からない。実際、191への編制候補になっているエリアのアパートでは、住人の名が連なった抗議の名簿が続々と市に提出されているらしい。

「この再編成が実現したら天地がひっくり返る!!」

と抗議する住人たちの主張もあながち大げさではない。

ニューヨークはリベラルな街であるけれど、子供の教育、という最重要問題に関しては、似たような価値観を持つもの同士が集まりたいのだ。

『Diversity・多様性』を好むけれど、自分がマジョリティに属した上で、10%ほど異文化が混じっているのが心地よいのだろう。

私はそんな親たちを責められない。プロジェクトの子供たちにも、同様のチャンスが与えられるべきだと思うけれど、 そんな子供たちが半分以上を占める学校に娘を通わせたいかと聞かれたら、正直Noである。

この制度は、単に住む地域だけでなく、『gifted program』と呼ばれる特別枠や、越境が可能な学校もあったりと、複雑な仕組みが入り混じっており、未就学の子供を持つ親たちの頭痛の種である。

数年後、無事入学を決めて乾杯できる日が来ることを祈りたい。

・・・・・・・・・・
☆毎日更新中のInstagram
☆ブログは月・水・金更新: NYでデトックス
Facebookに「いいね」して頂くと、ブログやウェブマガジン連載の更新状況が届きます
・・・・・・・・・・

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?