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神宮寺寂雷を救えるのは天国獄かもしれない

ヒプノシスマイクの医師・神宮寺寂雷と、弁護士・天国獄の関係性を掘り下げ、彼ら自身の救いについて考えました。(2021/05/08)

寂雷の前職は殺し屋

まず寂雷は医師になる前、対テロリストの殺し屋をしていました。

日本の大学で医学を学び、おそらくそのまま医師として働くつもりだったのだと思いますが、この世界は第三次世界大戦が起きています。
時系列的には、寂雷が大学2年生の頃に戦争が始まり、4年生の頃に終戦を迎えた感じです。
寂雷が殺し屋になった経緯は描かれていないためわかりませんが、戦争の影響があることは間違いないでしょう。

殺し屋期間について

H歴元年、乱数と寂雷が出会ったときに、殺し屋ill-DOCは10年前に失踪していると言っていました。話し言葉ですので、大体10年前という考え方でいいと思います。
10年前というとH歴-10年、寂雷が順当に進級していれば医学部5年生の頃。
戦争が始まってすぐ殺し屋を始めたとしても、およそ長くて3年間くらいの活動だったと伺えます。

ill-DOCは反乱軍のゴルディーニ少佐も存在を認知しているようだったので、拠点は海外だったのかもしれません。
医学生をやりながら海外で殺し屋って大変すぎないか?と思えますが、そもそも当時は世界人口が1/3に激減する程の超大戦争の最中です。戦争中というのは法律やルールが著しく変わるものです。
戦時中は医師試験がなくなるということもあるくらいですから、何かしらの理由で医学生が海外に早めのインターン、など様々な可能性が考えられます。

殺し屋設定、公式は活かす気満々

一見とんでもない設定ですが、これが寂雷のアイデンティティー、公式側も活かす気満々です。
まず公式HPのキャラクター紹介ページにばっちり記載されています。

そして2020年10月に放送されたアニメでも、シンジュク警察が寂雷がただ者ではないことを疑っているという描写がありました。

そして先日公開になった「ヒプノシスマイク-Glory or Dust-」内の寂雷のリリック、"痩せ細る彼の手の甲 握る資格をこの己に問う"とありました。彼というのは衢くんのことです。
悪役(ヒール)で殺し屋だった自分が、命の再起を願う資格はあるのかと歌っています。

Glory or Dustのリリックについて自己解釈

"悪役(ヒール) 治癒者(ヒーラー) 英雄(ヒーロー) も全て"
"A heel A healer And a hero All three."

という歌い出しですが、これは寂雷自身の過去・現在・未来のことです。
殺し屋だった頃の自身を悪役扱いしていて少し驚きましたが、公式のキャラクター紹介にも"贖罪を求め医師に転身"とあるので、過去のことは罪として自認しています。

"時代の歪(ひず)みが私に強いた 言い訳なんぞは良いワケない 歪(ひず)んでいるのはこの私自身か"
"Roles forced upon me by this distortion in history
 There is no excuse to be used
 Perhaps I am the one doing the distorting--"

主に悪役に関してを言っているのだと思いますが、そうなったことに対して弁明はない、時代がそうさせたのかもしれないし、自身の歪みからそうなる宿命だったのかもしれない、という解釈です。

"裂ける心を縫合 一触即発の心臓 開くな瞳孔"
"Mending broken minds
 And hearts like landmines
 All the while with those unopening eyes"

ここの心・心臓・瞳孔の対象が誰か迷いました。
今回寂雷のリリックは自身の語りと自問自答という作りですが、心臓と瞳孔に関しては衢くんにかかっているような気がします。
心に関しては、映像のモーションを加味して寂雷自身のことを言っていると思いました。

"痩せ細る彼の手の甲 握る資格をこの己に問う"
"His hands growing ever frailer with time
 Have I even the right to hold them in mine?"

寂雷のソロ曲を聴いて、過去のことは自身で蹴りを付け、それでも過去を忘れず背負って生きていく、そうやって生きていける人、という印象でした。
しかしこのリリックを聴いて、想像以上に過去の罪に苦しんでいるのだなと思いました。

寂雷は自分を救うことが出来るのか

絶賛スーパーマンを目指す寂雷ですが、自身を過去の闇から救うことは出来るのでしょうか。
贖罪を求め医師になり10年以上経ちましたが、それでもどうにもならない問題です。「未だ答え見えることはない 暗い深淵」なのです。
そもそも暗い深淵のままで良いとも言える問題ですが、衢くんが目を覚ましたときに、寂雷が病んでいたら駄目なのです。
暗い深淵に少しでも灯火を照らすには、他者の力が必要なのだと思います。

他者とは誰なのでしょうか?

神宮寺寂雷は救われたい

あるキャラクターの設定を見たとき、率直にこの人が寂雷を救うんだなと思ったことがあります。

それは寂雷の幼馴染で職業・弁護士の天国獄(あまぐにひとや)です。
この2人の中学~大学時代についてはコミカライズとドラマパートで少し描写があったくらいで、仲が良くなったきっかけや、ずっとつるんでいた理由なども謎だらけです。
ここからは獄のことを掘り下げて、2人の関係性を考察していきます。

天国獄について with寂雷

獄は中学から大学まで寂雷と同じ学校でした。(高校が同じという記述はないですが、ずっとつるんでいた事から同じ学校である可能性が高いです)
獄は現在弁護士ですが、大学は寂雷と共に医学部で入学しています。お兄さんの天(そら)さんが自殺した原因が、いじめによるものだとまだ発覚していなかったからです。わかっていたら法学部で入学するなど他の道を歩んでいたはずです。
医学部を休学して独学で法学を学んでいた、というところまでわかっています。転部したのか、別の大学に編入もしくは退学したのかは今のところ謎です。(弁護士資格は大学に通っていなくても試験に受かれば取得可能です)

シンジュクのバーで2人が再会したとき、大学のとき以来だと言っていたので、獄が大学を離れた可能性と、寂雷がずっと海外拠点で活動していた可能性のどちらも考えられます。
寂雷が殺し屋になったのは獄と離れてからなので、ずっとつるんでいられたのなら、違う未来があったのかもしれません。

そして獄には寂雷に恩があります。お兄さんが自殺した直後、獄に音楽を始めて元気を出そうと背中を押してくれたのは寂雷です。

2人の関係性

寂雷は獄のことを友人だと言っており、獄は寂雷のことを知人・友人と言いライバル視をしています。
ライバル視と言っても、十四の治療をお願いしようとしていたくらいなので、完甘先生のような悪意は全くありません。

2人は友人なのです。会話を聞いても獄が結構ツンツンしているので、あまり仲の良い雰囲気は感じづらいかもしれませんが、紛れもなく友人です。
友達がいない同士で仲良くなるというのはよく聞きますが、この2人は友達が作れないタイプでもないので、単純に気が合っているのだと思います。

獄は寂雷と対等でいたい

獄は寂雷に一度も勝てたことがないから勝ちたい、と言っています。
これは正確には間違いで、獄は寂雷と対等な友人関係でいたいと思っているだけなんだと思います。

獄は寂雷へ恩があります。彼は心の奥で恩を返さなくては、と思い込んでいるのだと思います。もちろん友人というのはWin-WInの関係でなくても問題ありませんが、これは獄の中の曲げられない自分ルールなのです。

「恩返しして対等な友人関係になる」という本来の目的が「寂雷に勝てば対等になれる」と彼の中で変換が起こってしまっているのだと思います。
Light & Shadowの歌詞を見るに、獄はこのことに気付き始めているのかもしれません。

つまり獄が寂雷を闇から救い出せば、この2人が抱えているそれぞれの問題は解決するわけです。

天国獄は救いたい

寂雷から他人に過去を打ち明けることは決してないと思います。
寂雷も自分の過去は自ら清算する「誰も触るな」タイプです。

しかし、おそらく獄は寂雷のやってる感に薄々感付いているはずです。
対テロリストだったとは言え、寂雷は殺人経験者です。当時の他国の法律がどうだったか不明ですが、倫理的に3アウトの犯罪です。

獄はお兄さんのことがなければ弁護士になっていなかったでしょう。
しかし今や法のスペシャリストです。ナルホドくん並みに法の女神テミスに愛されている超一流の弁護士です。

登場人物の中で、唯一闇堕ちする前の神宮寺寂雷を知っていて、犯罪に関して人一倍敏感なキャラクター、それが天国獄です。

寂雷の過去を知って、どうすれば2人のゴールなのかは正直わかりません。
それでも神宮寺寂雷を救えるのは天国獄なのだと思っています。
寂雷を救うことが、獄にとっての勝利なのです。

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