ウォシュレットの話



私が通っていた大学にはサークル会館がある。私はジャズ研究会に入っていたため、暇な時はよくサークル会館にある部室に入り浸っていた。ある時先輩からこんな事を聞いた。
「このサークル会館の男子トイレはウォシュレットが連動しているから、気をつけなければならない。」
そんなバカな話あるか笑。と思ったが、どうやら本当らしく、自分はウォシュレットを普段使わないが、一応頭の片隅に留めて置くことにした。

それからしばらくしたある日、授業終わりの私は非常にお腹を壊していた。もうまさに漏れそうだったが、なんとか我慢し、1番落ち着くサークル会館のトイレを目指していた。無事一階のトイレに着き、奥の個室へ入って用を足していた。おおかた出るものは出て、余韻に浸っていた時、隣の個室に人が入る音が聞こえた。私も幸いひどい音を立てるような便はもう出し切っていたため、携帯をいじるなどして余韻に浸っていた。隣の人はすぐに用を足して、トイレットペッパーを取る音が聞こえてきた。「あ、早いな、終わったんだな」と思った瞬間、ピッという音がして、私の肛門を勢いよく何かが突き上げてきた。普段ウォシュレットを使わない+ウォシュレットの連動のことを完全に忘れていた私は、「アァッッ!」と、カラスのような声を叫び上げてしまった。
しかし無情にも、ウォシュレットは止まってくれない。私は頭の中で考えた。もし隣の人が、ウォシュレットが連動しているということを知らなければ、隣の個室からいきなり叫び声が聞こえてきたと思うだろう。もっと言えば、いやらしい事を隣でしていたのではと思われてもおかしくない。未知の経験と巡り巡る思考の中、私はとりあえずの答えとして、「わ、忘れてた〜…」とつぶやいてみた。
そうすれば、「あ、隣の人はトイレをしている最中に何か忘れ事を思い出して大きな声を出してしまったんだな」と思ってくれるに違いない。そのはずだ、そうに決まってる。苦肉の策を講じた直後、「バンッ!」とドアが思いっきり閉められた。そんな強く閉めなくてもいいじゃない…と下半身を丸出しにした青年は、悲しい気持ちで残りを踏ん張った。

ウォシュレットが連動しているなんてあり得ない。ウォシュレットを普段使ってない人からすると、もう地獄。罰ゲームだよ。せめて貼り紙などで、「※このトイレのウォシュレットは連動しております。お互いに確認し合ってからウォシュレットを押しましょう」と知らせて欲しいものだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?