私の父について



私の父は変わった人だ。
例えば、父は人前でオナラをするのだが、思春期の頃の私は辞めて欲しいと怒ったことがある。
すると、父は「オナラは人に聞かせるためにするものだ」と逆ギレをした。
数年前、母方のじいちゃんばあちゃんと食事をしていた時、父は急に私を指差し、「お前はサイパンベイビーだ、サイパンで着床してんだ間違いない」と衝撃の事実を突きつけられたこともある。

私の母も、妹も変わっている。母は仕事から帰ってくると玄関で奇声をあげる。私と妹は急いで玄関へ行き、母をまるでお嬢様のように扱わなければならない。家族だけが知る謎のジャンケンを流行らせたのも母だ。
妹は「わようせっちゅうって、和と洋と中は分かるんだけど、せって何料理?」と真顔で私に聞いてくる天然っぷりだ。

中でもやはり、1番変わっているのは父だ。今の家に引っ越す際、マンションの管理人に、ここ数年の家族全員が写ってる写真を送って欲しいと言われた。父は、みんなで写真を撮りに行くぞと家族を車に乗せて、近くのショッピングモール西友へ連れて行った。こんなところに写真屋さんあったかなぁと思っていたら、父は「着いたぞ」と言った。指を差した先にあったのは、証明写真機だった。さすがに冗談だと思ったが、幸にも我が家は全員低身長なのでギリギリ入ることができてしまった。まるでプリクラのように全員で笑顔で写真を撮った。その写真が送られた管理人の反応がとても気になって仕方ない。

わからないけど、きっと仲の良い家族なんだと思う。しかし、長い間疑問だったことがある。
母の家系はいわゆる金持ちなのだ。母方のじいちゃんばあちゃんは、歯科を開業していたし、オシャレでとても上品だ。一方父はサラリーマンではあるが、なんせ人前でオナラやゲップを当たり前のようにする。
じいちゃんばあちゃんにどのように受け入れてもらったのかと、母に聞いてみた。
父は初めて母の家族に挨拶へ伺い、食事やお酒も進み程よい空気になった時に、思いっきり「ゲァッ!」とゲップをしたらしい。その時、何故かおじいちゃんは父のゲップに感動したらしい。ゲップを人前ですることなど考えもしなかった人生を過ごしていたため、父のゲップにカルチャーショックを受け、父をかなり気にいったらしい。全然意味がわからない。どうゆうことなんだろう、何回聞いてもわからない。でもまあ、父は勝負師だ。私も血を受け継いでいる以上、結婚の挨拶に行くことになったら、ためらわずゲップをしようと思う。
しかしまあ、やっぱりわからないけど、父は母の家族にかなり気に入られ、無事結婚し僕と妹が生まれた。結婚式の写真では、父は何故か草野球チームのユニフォームだった。
そうそう、父は60歳になった今でも草野球をやっている。どうやら還暦野球というものがあるらしい。還暦野球界では父はルーキーらしく、周りから「おい、若いの!」って言われると喜んで話していた。
父ももう還暦かぁ。野球はいまだに上手いし、筋肉もかなりある。60歳にしてはかなり元気だが、寝る時間はだんだん早くなって来た。7回の裏ラッキーセブンの攻撃くらいでもう寝てしまう。一番良いところを見てない。まあでも、体に気をつけて長生きして欲しいものだ。
最後に、誕生日に父に送ったLINEでも貼っておく。この調子だと長生きしそうで安心だ。

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