母の優しさの話

母の優しさの話

中学生の頃、私はどうかしてた。
あくる日もあくる日も自慰行為に精を出していた。
私はかつて両親のタンスをこっそり覗いた時に、菅野美穂のヌード写真集を発見したことがある。他にも何かあるに違いないと思った私は、再び詮索をすると、母が昔使ってたと思われる肌色のヌーブラを発見した。
当時女性の胸など見たことない(正確にいうと消え去る記憶の中にある母のもの以外)私はこれは完全に女性の胸だ。ピンク色の点がないだけで、ほとんど女性の胸だ。間違いない。
そんな気持ちで家族が帰ってくる前に自分の部屋に隠し、焦る気持ちを抑えながら夜を待った。
夜になり再びそれを取り出すと、やはりそれは女性の胸だった。生々しいので省略するが、私は多幸感に包まれたままそれと一緒に気づいたら眠りについていた。
次の日いつもよりスッキリ目覚めた私は、それの存在を忘れて朝食や準備を済ませ、いつも通り学校へと向かった。
2時間目が始まって少し経った時、私はふと昨晩の出来事を思い出した。それと同時に、私はとんでもないミスに気づいてしまった。そう、私はそれをベッドに置き去りにしたまま学校へ来てしまったのである。母は3日に1回ほど私の部屋に勝手に入り掃除をする。もちろん、ベッドも綺麗に整えられている。私は冷や汗が止まらなくなり、残りの時間はそのことで頭がいっぱいだった。
その日は部活もなかったので、授業終わり真っ直ぐ帰る予定だったが、恥ずかしさのあまりなかなか家には帰らず、公園などで時間を潰した。だが、母が私の部屋をするのは3日に1回だから、きっと大丈夫だ。昔から運だけは良かった私が、まさかここではずれくじを引くわけがない。そう言い聞かせて恐る恐る家へと帰った。
「ただいま〜」といつも通りを装う。奥から「おかえりなさ〜い」と夕飯を作る母の声が聞こえた。よし、大丈夫だ。普段と何も変わりはない。安堵の気持ちで部屋に入り、あたりを見回す。私は膝から崩れ落ちた。
勉強机の上は綺麗に整えられ、ゴミ箱も空になっている。埃もない。もちろんベッドも綺麗に整えられていて、昨晩私を幸せに包んでくれたそれは無くなっていた。私を羞恥心がただひたすらに襲う。気づいたら夕飯の時間になっていた。
「ご飯できたよ〜」と下の階から母の声がする。私は普段通りを装いながら食事を済ませる。母はそのことについて何も言わない。よかった…。
私は母の優しさによって、その出来事は忘れかけていた。幼い妹は父と風呂に入り、母と2人になった時、母はおもむろに口を開いた。「あー、そういえばあんたの部屋から私のヌーブラ出てきたんだけど」
私はあっけに取られ、一気に汗がほとばしる。
本当のことを言うわけにもいかないし、納得させられる言い訳も思いつかない。レスポンスまで時間が空けばさらに怪しまれる。数秒後私は、「あぁー、何でだろ。俺の服にくっついてたんじゃない?」と全く意味のわからない言い訳をする。母は「あぁなるほどね」とだけ言い、この話は幕を閉じた。
母の優しさによって私は守られたと思ったが、母の優しくなさによって羞恥心が頂点に達したものの、母の優しさによってこの話に蓋をしてくれた。
マザコンだと思われたのだろうか、単純に変態だと思われたのだろうか、違うんだ母よ、私はそれを純粋におっぱいだと思ったんだ…。今なら話せる、そんな話を次実家に帰った時に打ち明けようと思う。

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