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第10回榛名山ヒルクライム(2022ハルヒル)参戦記

  ―― ハルヒル再開への意気込みは?




顧客満足度ナンバーワン(要出典)の呼び声高いヒルクライムレース、榛名山ヒルクライム。通称ハルヒル。

そんな魅力的な大会が、2020年はまさかの中止に泣き、2021年も県外不可侵のお触れにより出走叶わず、2枚の二千円札を蓄えること幾星霜。
2022年となった今年、自身にとって4年ぶりとなるハルヒル参加を果たしたのであった。ほんと持ちわびたぞ。

これまでの自己ベストは47:03。これは間違ってエキスパートで出走したグロスタイムなのでネットタイムはもう少し短いがそんなもん。
この時と比べて肉体もマシンもパワーアップしているはずなので自己ベストの更新ぐらいはできないと困る。特にマシンは箱入り娘の究極兵器Equilibriumがハルヒルでは初投入になるのでなおさらだ。

一方で肉体のパワーアップはどうだろう。ヒルクライムレースは2019年7月の神河以来でブランクは実に2年半以上。レース勘はリセットされたも同然。高負荷トレーニングのモチベーションは1年前から消失してて筋トレサボタージュ継続中とイマイチである。
2週間前になってから六甲山の西側を何度かアタックしてみたがいいとも悪いとも言えない感触でモヤモヤ。

そんな具合で大丈夫か?

まあなるようになるのだ。せいぜい楽しもうじゃないか。


◆前日譚


5月20日(金)

仕事を定時で切り上げ、急ぎ気味に自宅へ戻る。
ここに至ってノー準備だったので急いで荷物をまとめなければならない。

今回の主役を冬眠から叩き起こす。最後に動かしたのは播州清水寺TTをした1年前だ。冬眠なんてレベルではない。
その他アイテムについては自作チェックリストを埋めて準備おしまい。
明日は4時15分起床だ。おやすみスヤァ。

―――
――


5月21日(土) 

やあ。

ねむいですね。(AM4:13)

飛行機が待ってるので早く行きましょうね(忙)。

7時に滑走路が開く神戸空港の初っ端の便に搭乗。
まずは羽田空港へフライトし、そこから電車を乗り継いで埼玉県の実家へ。

実家にて高専時代からの級友、A君と合流。
ここからは彼のAbarth595に横乗りして行動する。

A君は5年前からエントリーグレードの中古ピナレロのロードバイクを所有しているが、乗るのはたまーにレベル。そんな彼を巧み(?)にそそのかしてハルヒルに誘うことに成功。彼にとってもちろんこれが初のヒルクライムレース。今回の自分はA君のアテンダントである。
サイクリストとは言えないA君が今回の大会にどれぐらいのモチベーションをもってるか測りかねていたけれど、なんと冬の間にルーフ上のサイクルキャリアを買って設置していたので驚き。思ったよりモチベーション高いっぽい?キャリアは本気でありがたい。

で。
ほどなくして前日受付会場の榛名体育館に到着。
懸念されていた雨が降っていなかったのでとりあえず試走することに。
A君を引き連れて初心者コースを走る。走りながら目標ペース(榛名湖コース75分)を教え込み、レース中の暗黙の了解やルールマナー的なものをレクチャー。
初心者ゴール地点で引き返して受付会場へ戻る……が、スタート地点の信号のある交差点のところで雨に降られてしまい慌ててガソリンスタンドへ雨宿りに逃げ込む。
営業してないガソスタっぽかったので雨が止むまでのんびり休んでいたら、一台の軽自動車が入ってきた。
俺たち邪魔かな?と様子をうかがっていたらクルマからご年配のおば様2名が「いいよいいよ、そのままで」とか言いながら降りてきて、「明日走るの?」「どこから来たの?」と質問攻め。そのまま雨が弱まるまで15分ぐらい談笑してた。地元の人のようでハルヒルのことは好意的に見ているらしい印象だった。COVID-19のことは話題に一切出てこず、なんかもう新型ウイルスにあれこれ言ってるのはマスコミだけなんじゃないかなんて思ったり。

おば様方から「明日頑張ってね」と送り出されてA君と受付会場へ移動。受付を済ませたり出展ブースを見て回ったりして、会場を離脱し本日の宿へ。
宿は伊香保。
伊香保といわきの温泉むすめがこの日からコラボグッズの販売開始だったので缶バッジを確保。

その後しっかりと夕飯を食べ、温泉を満喫。石段もちょっと見て回る。

さあ明日も朝早いぞ。おやすみスヤァ…

……



5月22日(日) 本番当日

むくり。

やあ。

ねむいですね(慢性睡眠不足)

決戦の朝である。
まずやることはTwitterですね。起床報告(ポチポチ)
次にやることは雨雲レーダーの確認ですね。昨日までの天気予報では大丈夫のはずだけど果たして。

普通に雨じゃねーか!!!!

は!?!?聞いてねえぞ!?

やべえよスタート前待機中に凍死するかもしれん。
いや、雨雲の流れ的にギリギリまで粘れば止むかも。
祈りながらチェックアウトし会場へ向け出発。

30分ほどで指定の駐車場へ到着し、マシンを降ろして身支度。
途中から便意が沸々と湧いてきたのでA君を置いて先に会場へ向かわせてもらう。

無事軽量化に成功。
なんだかんだで雨も止んだし、気温も低くない。
今日はイケる気がする(フラグ)。

待機場所でフラフラしてたらFETさんが声をかけてきた。FETさんは去年神戸600のときに知り合ったランドヌールで、ライド動画にボイスロイドでコメント付けた動画をこまめに投稿している方である。今回のハルヒルも動画にするらしい。

続いてもう一人「にょろさん?」と背後から声が。
誰だお前。自転車が無いと顔だけじゃわからんぞと思いながら振り向くと顔だけで誰だかわかる人が。顔面フリー素材ののっちさんである。
「雨だったからレインウエアにゼッケン付けてきたのに雨あがるんだよな。いつもこのパターンだからジンクスなんだよ」
とか力説されてお別れした。そのジンクスのおかげで晴れたのであれば感謝である。

刻一刻と時間は流れ、スタート地点への誘導が始まる。
会場を出て橋を渡るところで何かに気づいた。
周りの人たちの脚に計測チップが巻かれている。当然僕の脚にもチップが巻かれて………いない。

ん?

馬鹿な。巻いていないはずが……いや、巻いた覚えが無いな。100%車に置き忘れてるな。

よし。落ち着け。
とりあえずこのまま出走してもDNS扱いだ。取るべき手段はクルマへ戻るただ一択だ。そしてクルマの鍵はA君が持っている。

急げ!!!!!!!

Uターンして会場へ戻りA君へ緊急連絡。

ここからの細かい顛末は省くが、クルマへ戻って計測チップを装着するまで20分もかかってしまった。

すでにエキスパはスタートしている。第2、第3ウェーブでの出走も絶望的である。
急いで戻って進めるだけ進んでみた結果、第5ウェーブの最後部に並ぶことになった。

この時点で集団効果の恩恵を受けることは絶望的に。
ああ、なんてもったいないことをしてしまったんだろう。
うんこのために焦って身支度したせいだな。
うんこによる軽量化のアドバンテージなんてたかだか数秒あるかどうかだろうに、それのために1分レベルの効果が見込めるスタート集団を逃すとは実にグダグダである。うんこが計画的にできればこんなことには。

うん。まあ、うんこのことをとやかく言ってもしょうがない。

配られた手札で勝負するしかない。

いままで集団効果を得て戦ったヒルクライムレースなんて一度もない。今まで通りのレーススタイルで挑むのだ。
無駄にテンパったせいで心拍に刺激が入ってる。アップと同等の効果は出てる。

とりあえず第5ウェーブの連中は全タテしてやろう。

さあ!

ショウダウンだ!




◆レース(コメンタリーのコメンタリー)


突然だが、この章ではこの動画をご覧になりながら読んでいただきたい。

この動画は最強ヒルクライマー・セユさんという方の車載映像・コメンタリー動画である。
ネタバレになるが、本番レース中、榛名荘病院から榛名神社のちょっと先までの約10kmにわたってこの方と走り続けたのでほぼ俺専属カメラ状態になっており、レース展開を語るのにちょうどいい材料になっている。
というわけで、このコメンタリー動画にこの記事で勝手にコメントを被せるというスタイル(せこい)で書かせてもらう。

読者の皆さん、動画の再生準備はよろしいですか?

では、3、2、1、キュー。


(02:06) ←※動画の時間です
レーススタート。最強さんは第5ウェーブのかなり前からの出走で、計測ラインでほぼ先頭であるが、僕は同ウェーブのかなり後方からの出走。計測ラインを切るタイミングは30秒ほどの開きがある。
第5ウェーブのメンツはスタートダッシュが落ち着いている。オブラートに包まず言えば遅い。初っ端からゴボウ抜きである。
最強さんはスタートはしゃいで430Wぐらい出したとコメントされているが、エキスパや第2ウェーブではこれぐらいが普通である。僕も今回スタートダッシュで瞬間最大500Wを出している。
5ウェーブじゃ格下すぎるなと悟りチップ忘れを悔やむ。一人旅を覚悟した。
最強さん優しいよね。はしゃいだって表現、完全に道化のそれだよね。俺だったら「周りおっそ」とか言っちゃいそう。

(08:47)
俺、登場。
病院前の坂は9~10%ぐらいの勾配ですね。ここで最強さんと合流。
最強さんコメンタリーではここで「元気ですか」「元気ですよ」のやり取りをしたと言っているがこの会話はもうちょっと後。ここではまだお互い無言。

(10:08)

『この坂でこの人がどれぐらい走れるか見極めようと思って―』
『ああ、この人踏めるな。本物だ』

最強氏コメンタリーより

このときの俺氏
(このプロペルの人、2000番ゼッケンなだけあって付いてくるな)
(落ち武者2000じゃないな。訳アリ5ウェーブスターターかな)

お互いに様子見状態である。なんてったってどちらも5ウェーブの異分子的存在なのだから警戒するなという方が無理な話である。

(11:33)
ここで最初の会話
 最強「余裕ありますね」
 ぼく「まだ先は長いですよw」

まだまだ序盤のこんなところで手も振れないほど消耗してはいけない。榛名神社までは雌伏の時だ。

(13:16)
平坦区間に入るタイミングで試しにローテを促してみるが
 最強「いやきつい」
と断られてしまう。
 ぼく「平坦ですよ。行きますよ」
と声をかけて加速。
40kphまで加速したつもりだけどログ見たら37kphぐらいしか出てないね。まだまだ修行が足らんか。

右コーナーを曲がると平坦区間が終わって3~4%の緩い勾配。ここで最強さんが前に出てくれる。ああ、やっぱり前に人がいると楽だ。
勾配が5%~に増すと勢いが弱まっていったので再び前へ。この時点で両者の力関係が確定し主導権を握る。

(15:08)
左の人が急にハンドル切ってきたので「危ないよ」とか言ったような気がする。

(15:38)
悪魔おじさんにサムズアップしたら逆に応援されて驚いたw

(16:21)
水色ジャージの人が無駄に右寄り走ってたのでまず最強さんに「右行くよ」と言って、水色の人に追い抜き際に「左寄って」って言ってるシーン。

(17:18)
前を走る青い人が右に膨らんだので「フラフラしてるよ!左寄って!」って言ってるシーン。

(18:05)
初心者コースゴールの平坦ポイントで最強さんが前に。
(あ、このプロペルの人、斜度が緩むと曳いてくれるな)と気付く。

(20:15)
第4ウェーブの本隊らしき車列を捉える。ここでも速度差が圧倒的で無双ゲー状態。

(21:40)
短い下り区間になるのでローテを促す。ツキイチの負い目を利用して少しでも自分が休む作戦である。

『今思うと曳く必要はなかった』

最強氏コメンタリーより

いや曳いてくれwww

(29:00)
ただの休むダンシングですね。

(29:37)
ママチャリライダーさんに「ナイスファイト!」って言ってるシーン。元気そうな声で応えてくれた。

(29:59)

『タダ乗りアピールして罪を軽くしようとしてますね』
『これ軽犯罪ですよね』

最強氏コメンタリーより

クソワロタwww

(33:26)
榛名神社通過。
つかの間の平坦区間が斜度が緩んだ反動でうまく加速できずヤキモキ。こんな時に限って最強さんが前に出てくれないw 助けてくれよw

(35:20)
激坂ゾーンで暖機完了!心拍リミッター限定解除!
ここからゴールまで駆け抜けるッ!!

 『5.5倍界王拳!!!』

最強さんを置き去りに加速。振り返らない。ここから先は燃え尽きるまで回すのみ。

コーナーもインを攻めまくりプッシュ。ひたすらにプッシュ。

残り1km。
沿道に再び人が現れ始め、歓声が聞こえる。
流石にもうキツいので手が振れない。手は出ないけど声は出る。

 沿道「頑張れー!」
 ぼく「ありがとうっ!!」
 沿道「余裕だね!」
 ぼく「いやキツイッ!!」

周りの選手からのキツそうに見えんと言いたそうな視線を感じるが、実際キツいのだ。許して。

 「ハァッッ!!」

声で一喝、己を鼓舞する。
普段はこんなことしないが、ハイになってて溢れる熱がパワーになる。

ありがたい岩の横を越え、ラストスパート!
心拍リミッター全解除!

血の味を噛みしめ、痺れる手足に鞭を打ち、フィニッシュラインへ滑り込む!

 「ッッ!!」

はぁ…はぁ…

榛名湖まで惰性で下る。

記録、43:19

ははっ。

ほぼ独走でこれか。

上出来じゃん。

(47:16)
ゴールラン区間をタラタラ流してたら最強さんが追いついてきて合流。
映像では見えないけど拳を突き合わせて互いに健闘を讃えてたりする。

(48:17)

ぼく『いやー、ステンレスフレームなんですよー』
ぼく『でも軽いんですよこれ。6.3kg』

最強氏コメンタリーより

ここぞとばかりに機材イキリをはじめる。
これ軽犯罪ですよね。自重しろ俺?

(動画終了)



前日に預けた荷物を受け取り、飲食ブース方面へ移動しようとしたところで再び最強さんに呼び止められる。
「受け取ってほしいものがあるんです」
お菓子かな?なんて期待してたら渡されたのは『最強』と書かれたステッカー。
この瞬間に至ってやっと、いままで走っていた人が最強ヒルクライマーさんだったと知ることになる。最強さんのことはTwitterでシェアされてくる超ユーモアセンス高すぎるブログ記事を読んで一方的に知っていたので本当に驚いた。

最強さんとはここでお別れ。

飲食ブースへ移動すると、自転車仲間のはやとさんやふぃりっぷさんらの一団と合流。完全にオフ会会場ですね。

第10ウェーブスタートのA君も無事にゴールしてきた。75分足つき無しを目標にさせたが、蓋を開けてみれば71分台足つき無し、やや余裕ありで登り切ったとのこと。やるじゃん。お疲れ様。

かなり待たされつつも下山開始。
地域の皆さんから沿道でいっぱい手を振ってもらえて感動。やっぱりハルヒルは素敵なイベントだ。

榛名体育館に戻ってきて完走証を発行してもらう。
一度手前にあった入賞者リストを自分には関係ないものと思いスルーしたが、体育館を出る直前に後ろ髪を引かれたので念のため確認に戻る。

あれ?

俺の名前じゃん?

俺の名前あるじゃんwww

ハルヒルリザルト
29歳以下部門、7位入賞

信じられない!素直に嬉しい。あれだけのハンデを背負って走ったのに!
後日梨が贈られるそうです。やったね!

しかしこのタイム、30代部門だと20位ぐらいまで落ちてしまうのよね。
来年僕は30歳。20代最後のハルヒルはこうして入賞という結果を残せたけど、来年はより一層頑張らないと結果につながらない。
A君も来年も出たいと言ってくれたので、精進しなくては。富士ヒルもいい加減ゴールド欲しいしね。


おわり

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