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【N/S高政治部】第3回テーマ別講義 柴山昌彦元文部科学大臣と考える『デジタルと教育と考える力』を受けて

自己紹介

政治部3期Bチームのニョロニョロです。
先日行われた今期3度目となるテーマ別講義”デジタルと教育と考える力”
この講義を受けて私が個人的に考えたことを書かせていただきます。
よろしくお願いします。

講義前の感覚

政治部では3ヶ月に1度、全体で取り組むテーマが発表されますが、今回発表されたテーマは”デジタルと教育と考える力”でした。初めて聞いたときはこの3つのワードが自分の中で結びつかず、上手く頭の中に落とし込むことができませんでした。

政治部では、テーマ別講義の前にテーマに関するエッセイを毎回書いています。今回は何度書いてもまるで”教育と考える力”をテーマにしたエッセイを書いているかのようになってしまい、”デジタル”となかなか繋がらず苦戦しました。その原因を今考えてみると、私がデジタルの利点をあまり理解できていなかったことにあると思います。

正直なところ私は”ICT教育”や”デジタル化”といったものに胡散臭さを感じていました。それは私がこれまでデジタルに良い印象を持ったことがなかったことが要因かもしれません。

私の通っていた時期の小中学校はデジタル化に力を入れていたので、数年のうちに様々なものがデジタルに切り替わっていきました。しかし、デジタル教科書を導入したにも関わらず普段の授業は紙の教科書を使っていたり、調べ学習の時間には指定されたサイト以外開いてはいけないと言われたために自由に学習ができず不便さを感じたりと、あまりデジタルを活かせていないと思っていました。

外向きには”ICT教育”と銘打っていても、実際に受ける一個人としてはその言葉を使っていることにあまり納得できなかったため、「デジタル化なんて、どこも今までのやり方を流行りに乗せただけでしょう?」と、とてもネガティブに捉えていました。

しかし、今回の講義を受け、今まで私が偏見により目を向けてこなかったデジタルの良さに気がつくことができました。



講義でのポイント

講義の中で個人的に”ピンときた”ポイントは、私たちBチームのメンバーの質問に対する柴山さんの回答です。

ICT教育は、分からないことをすぐに調べられる反面、思考力が低下するのではないかという懸念があります。私は、必要な情報を取捨選択する力、ネットリテラシーなどが身につき、現代に必要な新しい考える力が身につくと思うのですが、ICT教育による思考力の低下についてどのような考えか、また、改善策などありましたらお聞かせ下さい。

これに対し柴山さんは「ICTを使うと論理的思考力が下がるかという問いに対しては、それは使い方次第だと答えたい」「コピペなどを多用して一面的なものしか見ないということが起きると思考力の低下に結びつくが、逆に言えば複数の情報をICTでは結びつけて考えることができる」といった趣旨の回答をされていました。

私はこの”使い方次第”という言葉にすごく納得しました。今まで無意識のうちに白黒つけなければいけないと思い込んでいました。ですが、悪いから使わないのではなく、良いところを活かすことに目を向けると新しい世界が見えてくるのだと実感しました。

私にとってデジタルの特性は、人間が人間の能力を超えた広範囲を自由自在に動き回るための手助けをしてくれるものだと思っています。デジタル化が進むことであらゆる作業が簡素化され、一度に大量の情報を取得することができ、とても便利になります。しかし、デジタル化の進行によって悪質な犯罪や、”ネット中毒”といった負の側面も出てきています。当たり前のことではありますが、デジタルを有効に活用しつつ、デメリットも見逃さない心構えが大切だと改めて感じました。


講義を受け、デジタルに思うこと

今回の講義を受けてデジタルに対して感じたのは、教育において”デジタル化=アナログの置き換え”では勿体無いのではないかということです。論理的思考力を育てることを目的としたICTの有効な使い方には、二つの側面があると考えます。

第一に、情報を大量に保持しているという”情報面”です。この特性を活かし、より高度な思考に発展させることが可能です。講義内で柴山さんは、先述の通り「コピペなどを多用して一面的なものしか見ないということが起きると思考力の低下に結びつくが、逆に言えば複数の情報をICTでは結びつけて考えることができる」といったお話しをされていました。

第二に、デジタルを介することにより緊張感を緩和することができる”心理面”です。大人数の授業内で意見を尋ねられた時、何となく緊張してしまって発言を控える傾向があるように感じます。しかし、その緊張感を軽減させることで授業を活発化させる力がICTにはあると思います。現在の教育について、私はこの心理面をもっと活用できるのではないかと感じました。

例えば、チャットや電子掲示板といったデジタルツールを使用することは、文字ベースで意見を発信するため大勢の中で意見を伝えることへの抵抗を和らげる効果があると考えられます。そして、意見を文字にする中で自分の考えを推敲する時間が加わり、口頭で述べるよりもより深く考えを巡らせることができるのも一つの特徴です。

また””CommentScreen””のようなユニークさを持ったサービスも今後普及していくのではないかと考えます。このサービスはニコニコ動画の流れるコメントとよく似ていて、発言者に対する視聴者のコメントや、スタンプでの反応が画面上で次々と流れていくシステムになっています。デジタル特有の匿名性が活かされ、今までの”チョークアンドトーク”の授業とはかけ離れた、堅苦しさを感じない空気感を生み出すことができます。また意見が活発に出てくると多様な意見を知ることができるので、そこから生徒の視野を広げるきっかけにもなります。

その反面、電子掲示板やCommentScreenは意見をまとめていく際には不向きだと感じられます。あくまでも意見を出すことが目的となっており、相互の考えをぶつけ合ってブラッシュアップしていくのは少し難しいのではないかと思います。そのため、集団授業のように一人の話を複数人が聴く形の授業では十分にメリットを感じられると思いますが、より深い議論を展開していくためには顔を向かい合わせるアナログな議論も大切です。

このように、アナログでは不可能な高度な行為がデジタルでは可能になることもあります。デジタル化を進めていくのであればデジタル化のメリットを感じられるようなものにしなければ、十分に活用できているとは言えないと思います。

またデジタル化には、デメリットの多少の許容が必要だと思います。今までの授業では先生が黒板に書いた内容を生徒がノートに書き写すことしかできませんでした。しかし、授業の中でデジタル機器を活用すると、インターネットから膨大な情報を取り入れたり、遠く離れた地域の生徒とディスカッションをしたりすることも可能になります。このように人間はデジタルを利用するとアナログよりもはるかに広範囲を動くことができます。この良さを生かすためには自由さが欠かせません。

自由とは制限を緩くすることでもあり、授業妨害や思考力の低下が起こるのではないかと批判が起こります。しかし、それに怯えてデジタル化を踏みとどまってしまうと、生徒の可能性を広げることの妨げになるかもしれないと感じました。導入する側にとって、デジタル化へ踏み込むことはマイナスの変化を起こす可能性もはらんでいます。これを理解した上で従来のやり方を大きく変えるのは勇気が必要ですが、一度大胆な試みをすることが教育改革の一歩になるのかもしれません。


おわりに

今回の講義を受け、デジタルの良いところに目を向けるきっかけになったとともに、デジタルを上手く活用していくことの必要性を実感しました。

しかし、デジタルで便利さを追求するあまり、講義内でも出てきた”コピペの弊害”(便利なコピペの多用によって思考力が低下すること)や”フィルターバブル”(インターネットの検索機能が提供するアルゴリズムにより、本人の意思に関係なく取得する情報の範囲が狭まってしまうこと)という欠点を生み出してしまうことがあります。それに抗うためにはやはり人間が頭を使って気付くことが大切です。

この先どこまでデジタル化が進んでも、人間の考える力は価値を保ち続けるのではないかと思います。その価値を失わないためにも論理的思考力を鍛えることがとても大切なのだと感じることができました。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

今回のテーマ別講義の様子は、こちらのアーカイブからご覧ください。
・YouTube:https://youtu.be/mQDf5SLvL58
・ニコニコ生放送:https://live.nicovideo.jp/watch/lv339647934
・Twitter Live:https://twitter.com/i/broadcasts/1lPJqBlbeLMxb

また今回ゲスト講師としてお越しいただき、とても勉強になる講義をしてくださった柴山さんに改めて感謝を申し上げます。



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