コスパとタイパを重視する人のために、結論から先にいう。

「めんどくさい作業」は必ずしも「コスパ」「タイパ」が悪いとは言えない

1

洋裁を習い始めて4年目を迎えた。

今度の作品は着物と洋服、どちらも着られるケープだ。
京都に行く際に小寒い日にちょこっと羽織るのに重宝するのではないかと思っている。

　布は鎌倉スワニーから購入したもの　ウール100%の紺色　用尺　（1.5m× 1.5m）

デザインはこれ。ヘチマえりが良かった気がしたが、関西は暖かいだろうし、編み物で首回りの何かを編んでみたいからノーカラーとした。
後ろにタックを入れて余裕ぶんを作り、帯を締めてもキツくならない仕様。

2

　洋裁を習うようになって人生が変わった。
シャツ、ワンピース、ジャンパースカート、パンツ、テーラードのジャケット、冬物の厚手のコートなどを縫った。

　教室だけでは年間数枚のものしかできないが、自宅でもたくさん縫うようになった。

2023年に縫ったもの
1名画柄のプリントシャツ（自宅で）
2グレーのウールのコート（教室で）
3花柄のピンタックブラウス（自宅で）
4麻のチェックの長袖ワンピース（自宅で）
5赤い麻の長袖ワンピース（教室で）
6麻のチェックのフレンチスリーブワンピース（自宅で）
7絵描きのジャケット（自宅で）
8絵描きのパンツ（自宅で）
9レモン柄の麻シャツ（自宅で）
10しじら織の半袖シャツ（自宅で）
11ノースリーブのワンピース（教室で）
12エプロン（自宅で）
13赤いニット麻の羽織もの（教室で）
14シルクジョーゼットの黄色い羽織もの（自宅で）
15母のケープ（自宅で）
16レースのスカート（途中）
17ツイードのベスト（教室で）
18夫のチノパン（ゴムタイプ）（自宅で）
19夫のカーゴパンツ（自宅で）

3年目で結構な枚数が縫えた。

　はっきり言って服は買った方が安い。洋裁を習うのは“コスパ”（そもそもいちいち略すのが嫌いだけど）が悪いようにも見える。

　原型からの型紙作りからなので、かなり面倒くさい。毎回仮縫いもする。しかもポケットをつけるのでさらに面倒くさい。
　しかし着心地は本当に良い。形も良い。
　きついとか腕が回らないなんてことはない。

　きこごちの良い服が手に入るというだけで全ての元を取るような気がする。

3

　学生当時、デザインの授業で先生から「デザインは用途に寄り添うものでなければならぬ」ということを何度も繰り返し言われた。担当教官は工芸デザインの畑の方だったので、ファインアートの人とは少し違うがいみの美術だと思うが、今でも強く覚えているのは以下の2点である。


『美術、またはデザインとは「美しい術」である。そしてその美しさには、人の用途や暮らしを含む。デザインを志す者たちは「美しいもの」を作る義務がある。あなたたちには美しいものを作るのだという「強い意思と覚悟」を持ってほしい。』

『工程として面倒に見えるものには理由があるのだ。それをもってして行った完成が「美しい」のであれば、「美しい完成形」を目指すべきだ。手間や暇を削っては美しいものは決して生まれない』

　当時は「ずいぶん厳しいな」と思って聞いた。しかし50歳も近くなって洋裁を始めた時、「面倒な工程」と再び向き合うことになった。

確かに、洋裁は面倒くさい。

きちんと採寸をし、型紙を作り、仮縫いをし、直し、必要なところに必要なものを加えたり削除したりすることは本当に時間がかかる。

でも、この「面倒な工程を省かない」ほうが出来上がりは断然に美しいのだった。

現代風に言えば、“コスパもタイパも悪い”ものもあるが、それにはそれなりに理由がある。

4

「ゆっくりときちんとやる」
「スピード感をもって素早く進める」

　この２つは対照的だが、洋裁に関しては両立していると思う。

服作りはダラダラとやるのではない。
集中力を持ってきちんと工程に取り組むことがとても重要だ。テキパキと作業し、確実にやる。（競技ででいうとトライアスロン的なところがある。どれが欠けてもいけない）

自分はやっと3年目を過ぎただけなので上級者には程遠いが集中してきちんと作ることを心がけるだけで、とてつもない充実感がある。


「美しいものを作ろう」と思うだけで、自己肯定感が上がる。

そういう意味ではコストパフォーマンスは高い。またタイムパフォーマンスも高いと言えるのではないか。

時間あたりの充実感と感性の満足感が高いからだ。

5

以下は記録用写真なのでご覧いただいてもいただかなくてもよろしい。