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月の夜の共犯者5.

「今日は会食で遅くなるから、飯はいらない」煙草を吸いながら馨にメールを送った。
ついてねぇなぁ…いつもなら真っ直ぐ家に帰るのに…。
仕方ないか…、今回の客はこれからの事を考えると絶対会食に行った方がいい相手だ。

会社で仕事をしていると、営業部長から呼び出しが掛かった。
部長室に案内されると、だらしなく太りきった神崎部長が席についていた。

「坂城くん、今日は○○コーポレーションの人達とご飯に行くんだが君も来ないかね」

「はい、喜んでご同行させていただきます。
○○コーポレーション様は、システムソリューションでいま業績を上げておられる会社ですよね?」

「さすが坂城くんだね、その通りだよ。社内の情報を管理しやすいシステムの導入とソリューションをされている会社だ。わが社の営業部も大量の顧客データを所有しているから、これまでの紙媒体での保管は見直しをして、データベースでの管理の幅を広げようと思ってるんだ。その方が法人監査のときに対応しやすい。いや、わたしのツテでシステムを格安で提案してくれるというからどんなものか訊いてみたくてね…。」

「さすが部長ですね!顔が広い…!しかし、会食に行かれるということはそれ以外のご用件もきっとあるのでしょうね」

というと部長は笑みを浮かべて

「いや…実をいうとね、大きな声では言えないが、どうやら来年頭に○○駅前に新しい病院が立つらしいんだ。その病院にわが社の医療機器を提案してくれるというんだよ。」

「…!それは大きいですね。その情報はまだ私の耳にも入っておりませんでした。」

「そうだろう、そうだろう…。なにせ○○コーポレーションがその病院のITを一括してまとめることが決まっているようなんだ。それでわが社を推薦してくれたらしい」

「なるほどですね、ありがたいお話です。ということは必然的にそのような形になりますよね。ちなみに費用は…」

「あぁ、心配ない、例のものは経理に交遊費として申請してある。少しくらいは大丈夫だ。」

「畏まりました、その病院がお得意さまになって下されば、売り上げも見積もってざっと△△××くらいにはなるでしょうね。またこちらでもIT化された後もこれまでの根回しが出来るようこれまでの顧客データを抜き取りまとめさせていただこうと思っておりますのでご安心ください」

「ありがとう、それはきっちり君の家で保管しといてくれよ」

「もちろんでございます。皆さまがうちのお得意様になってくれるよう、あらゆる手段は尽くしております。win-winの関係を作れれば何よりですので…」

「はははっ、君は話しが分かって実にいい。
これからもこの調子で頼むよ」

「畏まりました…!」

「ちなみに新しい病院の総長のお名前は…なんと仰るのでしょうか?」

「確か…たしか松井荘次郎だったかな?」

「松井…様ですか」

その名前を聞いたとき、なぜか嫌な予感がした。







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