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KANA-BOON『Honey&Darling』

2014年に起きた出来事を思い出せるだろうか。STAP細胞騒動、錦織圭の全米準V、セウォル号事故や御嶽山噴火………覚えてないこともたくさんあっただろうが、自分にとっての2014年は邦ロック元年なのである。この頃、フェス界隈のみならず、お茶の間にも活躍の場を広げていたバンドが2つある。ゲスの極み乙女。と、KANA-BOONだ。

Mステで前者が「デジタルモグラ」、後者が「シルエット」を披露した回のことを今でも覚えている。あれから8年経った2022年に、KANA-BOONは新たなアルバムをリリースした。

以前から疑問に思っていたことが1つある。いま僕らが熱狂しているこのバンドは、5年10年、いや何十年と経ってもこの路線で、この形で音楽を続けているのだろうか。当然リスナーとしての自分の状況も目まぐるしく変化したわけだが、それはバンドも同じ。彼らはどのように年をとり、どのようにこれからも歩んでいくのだろうか。いまの僕らの熱狂は、若気の至りや一過性のブームに過ぎないのだろうか。それが終わったら何が残る?

KANA-BOONはこの8年の間にメンバーの失踪・脱退という大きな出来事を経験した。まさに大きな転換点を迎えたあと、彼らはいったいどうしていたのか。そんな気分で僕はこのアルバムを聴き、2曲目「21g」を聴いた時にとてつもない安心感を感じたのである。彼らの年の取り方、スタンスがそのまま表れているような歌詞に、答えを提示された気がした。

そして「Touch of Liberty」「スターマーカー」のようにシングルの強力さも決して失わず、「天国地獄」のように彼らのルーツ(Aメロ聴いた瞬間に「アジカンやんけ」と思った)への敬意、邦ロックというカルチャーへの敬意も忘れず。どこか大人びたVo.谷口鮪の声と共に、あの頃決して立ち止まらずに走り続けてきた彼らが、今もスピードを落としていないことを実感させられた。

というわけで、このアルバムは2020年代に突入した今出された、10年代ロックバンドからの明快な回答のような一枚だ。

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