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文部科学省「大学入試のあり方に関する検討会議(第15回)」議事概要10月16日(金)

議題 
【討議 整理しておくべき事項について】
≪川嶋副座長説明≫
大学入試に求められる原則等
(1)政策決定過程の主な問題点
・重要な課題であっても常に先送りされ実現可能かどうかという確認が十分なされてこなかったこと。
・工程の柔軟な見直しが行われなかったこと。
・共通テストと個別選抜との役割分担の議論があまり十分なされていなかったこと。
・大学入試への過度の依存と過大な期待。

(2)大学入試の意義と求められる原則

・入学者選抜の意義とは何かということ。まず大学入学者選抜は学教育を受けるために必要な能力を判定・評価するという行いであり、入学後の教育の在り方と、どういう人材を合格とするのかというのは大きく関連している。したがって、DP・CP・APという3つのポリシーの中で大学入試の在り方、大学教育の在り方を考えていく必要がある。
・高校教育を修了した人について大学教育を受けるにふさわしいかどうか評価するため、高校教育と大学教育を接続するという観点も非常に重要。ただし社会人や留学生等は配慮が必要。
・入学者選抜は個々の大学の主体性が一番重要である。ただ大学入試は1つの大きな社会制度であるため個々の大学が自由に選抜を行えばいいというわけでもなく一定のルールは必要と考えている。
・大学入試に求められる原則としては、「公正性・公平性の確保」が挙げられる。手続の公平性は当然として今回は試験実施業務における利益相反が問題になった。利益相反防止の原則を追加する必要があるのではないか。また、高校教育への過大な影響力を期待することは必ずしも望ましいことではないが、一方で入試が高校教育に影響を与えている事実は否めない。今回のような副作用を念頭に置きつつ、高校教育によりよい影響を与えるような方向で入試の在り方を改めるべき。重要なステークホルダーである志願者の権利を保護することが重要である。

(3)大学入試政策における望ましい意思決定のあり方
・入試政策の議論の透明性の確保が非常に重要。
・専門家から十分に意見を聴いた上で最終的な判断を下す。
・受験生や保護者の方々等ステークホルダーが大学入試政策の決定の過程に参画することが望ましい。
・過去を振り返ってこうだったということではなくデータ・エビデンスに基づいた政策決定をするべき。エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキングは大学入試政策の決定に不可欠。
・大学改革等を議論する際に実現可能かどうかという確認が不可欠。すばらしい改革案でも実現可能性が低ければ、改めてもう一度見直す必要がある。

2 大学入学者選抜を巡る諸課題の整理

・これまでの議論や現在の大学入試を考える際、課題が山積している。
(1)共通テストの課題
・大学教育に共通して本当に必要な学力を問う科目構成ができていたのかどうか。6教科30科目が大学で学ぶために最低限必要な学力・能力を測定するための科目として提供されていたかどうかという点。改めて共通テストの科目編成・在り方を議論するべきではないか。
・今年度は52万人余り受験する中で非常に多様な学力層の受験生が受験する。一方、共通テストの利活用については日本の大学の約9割近くの大学が様々な活用方法を用いてセンター試験・共通テストを活用している。多様な活用方法へも共通テストとしては対応せざるを得ない。
・個別入試との役割分担が非常に曖昧。共通テストの在り方に議論が集中した、という点もある。共通テストについては大学教育を受けるために共通して不可欠な学力を問う科目等で構成すべきであり、それでは問えないものを個別入試で評価すべきものであり、役割分担をきちんとすべき。
・一般選抜以外への活用が限定的。現行の試験実施時期は成績提供の時期の観点から考えると総合型選抜や学校推薦型選抜、留学生入試等への活用が不可能ではないが非常に困難な状況にある。
・現在の大学入試センターの経営問題や体制問題が大きな課題となっている。入試センターの収入は全て自己収入、受験料等で賄われており受験者が減れば財務状況が悪化する。共通テスト・センター試験は入試センターと大学の共同作業であるが、大学関係者の間でも十分理解されていないところがあるため、関係者の理解と協力が不可欠である。

(2)各大学における個別選抜の課題

・一部の大学において大学教育に本当に必要な学力の測定が不十分なまま合格させているのではないかが指摘されている。例えば一般選抜で少数科目を課している場合で、理工系学部に進学するのに数学や理科の科目を課していないケースや経済学でも数学3を課していない大学がある。そのため入学後に補習教育が必要になってくる現状がある。
・多面的な評価の取扱いについては、選抜区分ごとにそれぞれ比重の置き方が必ずしも明確になっていない。特に一般選抜でどのように多面的・総合的評価をするのかは非常に大きな課題であり、高校関係者の側からは調査書作成についての負担増ということが働き方改革の観点からも提言されている。
・問題作成・実施運営を巡る負担の増大については、多くの大学が自大学の個別入試の入試問題は作成しているが大きな大学でも条件が厳しくなっている。大学間連携や作問等の専門人材を共同で育成する必要があるのではないか。
・日本では入学して4年後に卒業することが当たり前のようになっており、入学後に他の大学に転学することは定員管理の問題もあり難しい。質の保証の観点からも大きな課題になっている。入試も含め学生の定員の在り方、流動性が非常に硬直化しているという点が指摘されており入試改革を阻んでいるという指摘もある。
・今回の英語4技能や記述式で明らかになった経済格差・地域格差への配慮が必要である。例えば移動を伴わないオンライン入試の導入や給費生入試、地域枠の設定等など、すでにいくつかの大学が新しい入試を導入している。多面的評価における多様な経験の評価は非常に重要だが、留学などはどの家庭でも可能というわけではないため評価の際には十分留意が必要。

(3)コロナ禍で顕在化した課題

・個別入試に伴う越県移動リスクや、共通テストでは移動しなくても近くの試験場で受験できるということでセーフティネットの役割が高まっている。緊急事態の場合、どのようにして入試制度の在り方を調整・検討するのかなどの仕組みがまだ十分に出来ていないのではないか。
・諸外国の入試制度の動向を考慮すると、日本の入試の特色として志願先の大学へ行って個別の学力検査を受けなければいけないという特異性がある。今回のようにコロナ感染が広まると非常にリスキーな仕組みである。移動の経費もかかるといった受験生の負担もある。
・高校と大学の間の意見が合わないというようなこともある。諸外国で修了試験というのは高校側の責任で高校の先生が作問し、高校が合否を決めるというようなことになっている。日本の場合は個別大学が選抜するため大学の教員が入試に関わらざるを得ない。すぐには解決できないが、徐々によい方向に変えていってはどうか。

3 共通テストと個別選抜との役割分担、異なる選抜区分の意義と役割
(1)共通テストと個別選抜の役割分担と改善の方向性

・共通テストの役割は高等学校での学習の基礎学力をきちんと評価するということ。県境を越えずに近くの大学や高校で受験できるというセーフティネットの役割を持っている。受験生やステークホルダーからより多くの信頼を得るような重要な試験として国全体として改革してはどうか。
・個別選抜で測定すべき資質・能力については、共通テストと個別試験の役割分担を明確にして、各大学のAPに即して共通テストでは測りにくい資質・能力に重点を置く方向で改革してはどうかと。その際は自前主義に拘泥せず共通テストの活用や各種の外部検定試験で代用するなど効果的・効率的な実施に努めてはどうか。

(2)一般選抜と総合型・学校推薦型選抜のそれぞれの意義と改善の方向性
・一般選抜と総合型・学校推薦型選抜のそれぞれの意義と課題を考えて、その役割を明確にする必要がある。一般選抜と比較した場合、総合型・学校推薦型選抜の意義と役割については極めて多くの時間と労力を要する。今求められている多面的・総合的評価には最も適した選抜形態。各大学のミッションに基づき多様性を持ったキャンパスを実現していきたいという観点からも総合型・学校推薦型選抜は、キャンパスの多様性を実現するには非常に有効な方式ではないか。
・より適切な総合型・学校推薦型の選抜を一層推進してはどうか。学力不問の是正はきちんと学力を把握した上で、それ以外の要素を多面的・総合的に評価していく方向に変えていく必要がある。優れた取組を共有することも必要かと考える。
・一般選抜での多面的・総合的評価を入学者選抜実施要項では求めているが実際はそうなっていない。一般選抜でも可能ならば多面的評価に変えるべきだが、ある程度限度があれば総合型選抜のほうに切り替えるという方向性もあるのではないか。
・格差の問題への配慮が総合型・学校推薦型の選抜では可能であると同時に、例えば留学を評価に入れるなどの場合、格差を助長しかねない。

≪意見交換≫
1 大学入試に求められる原則等

・「大学教育を受けるために必要な能力の判定」という記載の中に、3つのポリシーの明確化の重要性と記載がある。文科省の教学マネジメント委員会で指針が取りまとめられている。この指針は、入試について考える上でも極めて重要なもので委員の間でも共通認識としていただけるとありがたい。(益戸委員)
・高大接続改革は入試の負荷を軽減しようというところにあったと理解しているが、理解が深まっていない。また、大学関係者にとって大学入学者選抜の意義というのは入学者数をどれぐらい確保するかというところに尽きる。各大学の主体性というのを改めてどれぐらいまで発揮できるかは大学団体としても考えていかなければいけない。(柴田委員)
・コスト面のことも考えてもらいたい。教育関係の議論は何でも良くしよう、入試も良くしよう、もっと公平にしようと、負荷が大きくなるような議論が何回も繰り返されるような気がする。入試だけではなく高校教育、大学教育をコスト的な観点からも入試の適度なバランスを考えていく必要があるのではないか。(両角委員)
・高大接続改革の場合には,理念が非常に大き過ぎたことがフィージビリティをある程度度外視した改革につながっていった面がある。入試改革の場合は、試験を設計し実施するというときは、試験自体のテスト理論の専門家も各教科あるいは英語の技能に関わっての多くの専門家がおられる。専門家等の意見も踏まえつつ妥当性の高い意思決定をしていくべき。(末富委員)
・大学入試が高校教育に悪影響を与えることなく、むしろ好影響を与えるようにとの視点を持つことは極めて重要。こうした視点を見失うと実態から離れた議論に陥りかねないことを懸念する。教育の成果は数字では表わせない部分も多いが、英語力は外部試験などを適切に活用すれば、ある程度の評価は可能と考えている。学部段階において英語に関する教育目標を設定している大学は35.5%にしかすぎない。また、外国語を使う力を身に付けるために大学教育が役に立っていると思う大学生の割合は3割しかいない。大学生は外国語を使う力のために大学教育が役に立っていると考えていない。これは専門分野に関する知識や将来の仕事に関連する知識等については、大学教育が「とても役に立っている」「役に立っている」という割合が8割、9割近いということと比較すると大変に低い値。各大学がDPやCPにおいて卒業後に必要な力を見据えて外国語能力に関する目標設定を行い積極的に公表していくことが必要ではないか。(斎木委員)

2 大学入学者選抜を巡る諸課題の整理

・入学・転学システムの硬直化のところについては、本来は日本の大学の定員の管理の仕方が厳格であるかどうかだけではなく、入学者を管理する必要があり、4年間のうちに卒業させねばならないという在り方自体が日本の入試に大変大きなマイナスの影響を与えているような気がして仕方がない。厳格な成績管理をすることで多少の退学者は出ていくが、しっかりとした教育を保障するやり方もあるはず。厳格な定員管理の制度の中でやっていくと、ゆがみが出てくる。また、少子化が進行しており、その中で入試で選抜していくことが、いつまで可能なのかを見ておかなくてはいけない。現状では生涯学習社会を見据えて、年齢にかかわらず高等教育機関が広く希望者を入学させる体制にどこかで移行していかなくてはいけない。(芝井委員)
・問題作成あるいは実施運営を巡る大学の負担が増大していることについて各大学は大きな危機に直面している。大学の教員が忙しくて作問ができないということではなく、そもそも人がいない。作問自体が難しくなっている。大学間連携やコンソーシアムで大学が協力して問題を作っていくというのも現実的な解かと思う。また、過去問を活用しようという動きもあったが、今のところ十分に進んではいない。それはなぜかと考えたときに、社会的な理解が得られるのかどうかということにどうも自信が持てないというところが大学にはあるのではないか。社会的な理解が得られるのかを慎重に考えながら進めていければいいのではないか。(島田委員)
・共通テストを総合型・学校推薦型で使っていこうという考え方があるが実施時期が大きな問題になってくる。高校の現場としては、共通一次試験のときは高3で学ぶという科目が実は共通テストでも出題をしている。早期に実施となれば、その学習をいつさせるのかという問題になってくる。(萩原委員)
・高校段階における一般的な基礎的な学習の達成度を評価する試験として共通テストを位置づけている。共通テストは極めて重要。作問の課題については、小さい大学においては特にすでに危機的状況にあり、それが中規模の大学まで及んでいる。また、会議の中でエビデンスを十分に活用することと、本当に可能かどうかということを議論しなくてはいけないと前から思っていた。さらに、CBTや複数受験の議論をしているが、全てヒト・モノ・カネになっている。特に入試センターの経営状況も十分考えつつ、「情報Ⅰ」を入れていくという話があるが、これはどうなのか。もう一つ懸念されることは「情報Ⅰ」に関して教員が本当に全国の高校にいるのか、どのレベルまで同じになって試験を始めるかは、同じようなことが繰り返される可能性があるため、慎重に検討してセンターの試験に入れるべきだという議論をしている。(岡委員)。
・今の大学入試制度はいじり過ぎだと感じている。共通一次試験が導入されたときの発想が非常にマッチするのではないか。大学という高等教育機関に進学するためのテストなので最低のレベルとして5教科全てを履修し、そこそこの履修成績がある者が大学に進むことが大原則ではないか。入試制度と並行して規制緩和を進めて、その代わり規制緩和が進むことは自由競争が進むということになる。生き残り競争を覚悟しながら規制緩和を進め、大学入試制度改革を進めていくというのが大原則だと思う。(牧田委員)
・①まず全体を通して国公私立大学に分けて議論するということが必要になる。②入試センターの経営状況はゆゆしきこと。例えば英語の4技能試験を考えた場合、必ず実現可能なのであれば入試センターが中心になって進めるというのがあるべき姿。(渡部委員)
・地域・経済格差への配慮・対応については、現実の入試に反映させていくときには各大学の自主性を尊重しつつ、社会に確実に根差していく形での実現が重要。各大学での英語民間試験等の活用が進むことは、今年度の場合もコロナの災害の中で家計が急変している場合など、民間試験に十分挑戦できない、試験自体も回数が制限されている場合に、果たして個別大学の入試であっても、本当に公平・公正であるかは、入試政策全般として検討が必要。現行の高校生世代への支援政策は、英語民間試験の複数回受検あるいは各大学のAPに基づいて要求されるような資格試験に対しての支援が不十分。入試政策を考える際は、高校生世代あるいは受験者層、社会人、そうした大学入学者候補への支援政策を入試政策のパッケージとして検討しなければ不平等であるという議論が起こる。(末富委員)

3 共通テストと個別選抜の役割分担、異なる選抜区分の意義と役割

・総合型・学校推薦型の推進を行うためには「学力不問の是正」を行う必要がある。基礎学力テストを行うことになっていたが最終的にできなくなった。総合型・学校推薦型選抜でどんな形で学力を担保するかが課題になっており、面接して試問で確認することや、高校側にしかるべき形で学力に関する資料を出すこととしている。(芝井委員)
・英語4技能や記述式問題について個別選抜で適切な措置が講じられるような何らかのインセンティブを設ける等の促進策を講じることが有益ではないかと考える。様々な選抜区分も含め英語4技能や記述式問題の在り方を考えていくことが重要。一般選抜を総合的にするのではなく、適切な総合型選抜を拡充する点について全く異論なく賛成。(斎木委員)
・会議自体のことだが、ここで改めて高大接続会議と同じことをやっていくならば、とても時間的にも間に合わない。子供たちが迷子になるだけ。はっきりしたお答えをいただきたい。(吉田委員)
⇒この会議は英語4技能評価、記述式、経済的・地理的事情等への配慮、その他入試の望ましい在り方の4本を話し合う。それらの課題の前提に当たる原則に当たるような事などについて議論していただきたい。(文部科学省)
・国大協では総合型・学校推薦型選抜を全体で30%にするという目標を立てている。総合型・学校推薦型選抜の中に英語民間試験を入れている状況。一般入試でも利用する大学がある。一般入試全体で英語4技能を測ることは今のところ不可能。入試センターが中心となってこの4技能の試験問題を作り実施することも案としてはあるが、それには十分な予算を国が付けることをお願いしたい。また、遠隔試験は不正防止等の課題があり、継続的に議論する必要がある。(岡委員)
・主体性評価がどれぐらいまでフィージブルにできるのかというところも考えていかなければいけない。それに関連してセンター試験で、多様な学力層で成績の二極分化という話があり入試センターで4つに受験生を分けられるというデータがあった。出せるデータならば、公開いただけると非常に明瞭に分かれており牧田委員の発言の実現が、現状では難しいという理解が深まるのではないか。(柴田委員)


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