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文部科学省「大学入試のあり方に関する検討会議」第7回 議事概要 5月14日(木)

1. 新型コロナウイルス感染症への対応状況について(文部科学省より説明)
・来年度の大学入学者選抜において、受験生第一の立場に立った配慮措置をしていくことが重要。日程を含め6月に実施要項において周知する予定。高校大学関係者と十分相談しつつ、臨時休業等の状況に応じて適切に対応していきたい。
・9月入学など様々な意見が出ているが、社会全体に影響を及ぼすものであるため調整が必要。どのような課題があるか関係府省において検討が進められていると承知している。
・学習に著しい遅れが生じないようにすること、学習保障の取り組みをしっかりと進めていくことが重要。今後の状況も見極めつつ、あらゆるシミュレーション、事態を想定しながら、大学入試への対応を行っていきたい。

2. 外部有識者・団体からのヒアリング
【倉元先生(東北大学高度教養教育・学生支援機構教授)】
・大事なのは証拠に基づく実証的な学問。東北大学がこの高大接続改革に何をしてきたのか。東北大学の立場は積極的推進で始まったが、途中から改革案は実施不可能であることがわかってきた。
何度も意見をしたが聞き届けてもらえなかった。具体的になってからは、どういう意思決定をしていくかということを考えてきた。
高校側の実態の把握、学内コンセンサス形成をしてきたことがスムーズな意思決定に寄与した。改革年度の受験生の努力を無駄にしないことを一番に考えた。
・共通テストは大学教員にとって負担。
・入試の多様化は文科省の基本政策であると認識。入学者の選抜権は大学にあり、受験生への約束である。こういう入試をするからこういう努力をしてきてということを伝えている。
・入試改革の副作用は大きいため理念から始めると必ず混乱を招く。出口からの議論が必要ではないか。上手な妥協点を探っていく必要がある。問題設定からやり直さないか、というのが提言。
・入学者選抜は一般選抜が基本ではないか。①エビデンスベースに基づく現状分析から議論を出発する。②個別試験の強化、作題を各大学に投げるのは限界ではないか。
コンソーシアム化、専門家の養成が必要ではないか。急ぎすぎず、長期的な視点での改革をお願いしたい。
・大切なのは令和3年度の受験生をロスジェネにせず最大限の努力をして、目標としてきた入試、選抜方法を可能な限りそのまま実現する方策を一緒に考えていただきたい。

≪意見交換≫
・共通テストで変えた方がいい点など、お考えは。(両角委員)
・センター試験から共通テストになり質的な劣化、信頼性の低下を心配している。共通1次試験からセンター試験になったときに大きな設計の変更があったが放置したため、制度疲労が起きたというのが私の分析。(倉元先生)
・共通試験と個別試験の役割分担について。内容として、どのように役割分担をするか。(岡委員)
・共通試験は受験生層が広くすべての学力層に対応しないといけない。個別大学は層が限られるのでそこに適した問題というのがある。そこの役割は大きく違う。(倉元先生)

【米本氏(東京都立西高等学校3年(日本若者協議会推薦))】
・英語4技能は、混乱が大きく民間試験に否定的な意見を持っている。ただし、4技能試験の導入により、各技能を授業でバランスよく扱うようになったという意見もあった。それでも、大学入試のために授業を構成していいのかという疑問は残る。4技能を分離して教えるのではなく複合的に使う練習が必要。大学進学に関わらず、生徒が主体的に関わる授業・教育が、社会全体の国際競争力を高めるために必要なのではないか。
・試験の一括作成と受験料の均一化は多くの高校生が望んでいる。試験如何に関わらず、学校で4技能すべてを教える必要がある。
生徒が主体的に授業に参加できるような環境を作ってほしい。入試からトップダウンで教育を変えるのではなく、教育の見直しと並行して入試改革を行っていただきたい。
・記述式問題は、高校生の間で非常に不安や不信感が大きかった。思考力を測るための他の方法としては、米国版のエッセイもある。エッセイを書く過程でマッチングがなされ、学習意欲が向上するという話を聞いた。大学側としても、論理的思考力や学習意欲を判断することができ準備や採点に負担はあるが、良い傾向がもたらされている。
・個別試験で記述式問題はやるべきであり、役割分担が重要。エッセイのような志望理由書はあってもいいのでは。点数化はせずとも内容を選考の判断基準とするなど考えていただきたい。
進学する生徒にとって、大学入試が連続する教育の通過点の1つになること、ゴールではなくなることを期待。

【幸田氏(山口県立岩国高等学校3年(日本若者協議会推薦))】
・共通テストの枠組みで英語4技能は評価すべきではない、各大学が行う2次試験で4技能を評価すれば十分ではないのか。
・民間英語資格検定は、詳細を早期に明確に伝える体制が整うまで導入すべきではない。当事者である受験生が被害者にならないように意識してほしい。受験費用はともかく、地方在住者として活用されるとなれば地方にも会場設置をしてほしい。教員によって、教え方や分かりやすさに差を感じる。
質の高い教員の授業公開を行ってほしい。地域差を感じる生徒の不安を減らせるのではないか。
・入試改革の前に、教育そのものの改革が必要。現状では、授業が入試対策メインになっている。大学入試はゴールではない。英語が育つ環境でスピーキング力を補う授業を取り入れてほしい。
民間試験が活用されるとなれば、大学入試という枠組みを意識してしまい個人の意思で行ってきたものが義務化され、受験生個人の主体性が欠けてしまうのではないか。活用のあり方は、よく検討していただきたい。
・当事者の高校のリアルな声が少しでも多く届いたらと願っている。

≪意見交換≫
・費用負担について、周りでどのような心配をしている人がいたか。過去に遡った時に文科省は高校生の意見を聞くべきだったか。(末富委員)
・東京では意識できない地方との差はあった。急に変わる戸惑いがあった。高校にアンケートを取るだけでも違ったのではないか。(米本氏)
・受験会場まで1時間以上必要。差をなくしていただけたら、不安心配がなくなる。ただでさえ受験への不安がある、高校生の声を一番に聞くべき。(幸田氏)
・入試改革によって授業が変わったこと、ポジティブ、ネガティブどちらに捉えているのか。(島田委員)
・全体的にポジティブであるが、高校の授業が入試対策メインになるのはどうなのか。(幸田氏)

【南風原先生(東京大学名誉教授)】
・頓挫した原因について、①改革の理論的な基盤が脆弱、制度設計の詰めが甘かった。②工程の見直しや後戻りをしない行政のやり方。
・本来大学入試の主体となる大学が、非常に影が薄い、受け身になっていた。国大協においても改革案に対し様々な懸念を表明していたがわずか5か月後には懸念がほとんど解消していないにもかかわらず、英語民間試験や記述式導入に賛成する方針を打ち出した。国への協力姿勢を示したのであろうが、もっと主体的で責任のある対応ができたのではないか。国大協が示した懸念について、しっかりと対応することによりその後の混乱は防げたのではないかと考えている。
・発音アクセント出題、語句整序問題を廃止する具体的理由が見えてこない。廃止の背景には、英語民間試験の導入があったからではないか。
話す力・書く力を育てる上で、土台となる基礎知識に意味があり、高校卒業・大学入学レベルでは、基礎知識を身につけているかを評価することが大事ではないか。
・今後の検討は頓挫の要因の真逆を行く。理念があったのかというところから見直したい。入試センターの豊富なデータ等を活用し、専門家の間でエビデンスをもとに、しっかりと議論をし、学術的にも納得のいく方針を示してほしい。
・2025年に間に合わせるのでは今回の失敗を繰り返す。入試は大学で学ぶために必要な力を評価するものだが、学習指導要領が変わったからといってすぐに変わるものではない。多様性を大事にするためにも、学習指導要領の変更にも緩やかに対応・接続するのが良いのではないか。
・最低限決めること、無理なく決めること、それ以外を峻別して時間がかかる内容については、時間をかけて検討する土台を作っていただきたい。
・共通テストを肥大化させるべきではない。議論の当初は、センター試験のスリム化という問題意識が共有されていたはず。
・英語4技能評価について、特に共通テストでは話す力・書く力の土台となる基礎力をしっかり評価することが大事ではないか。
思考力・判断力・表現力の育成評価については、深い理解を評価するのが教育的であり、かつ評価方法としてもよいのではないか。
・諸外国で参考になる一例としてSATのwriting and language testをあげた。多肢選択式を工夫することにより書く力に迫るということも大事な努力の方法ではないか。

≪意見交換≫
・この会議で最低限決めるルール、特に同じミスを繰り返さないことが大事だと思う。この考え方についてはどうか。(末富委員)
・慎重さが必要という事項は置いておいて、それでも2025年度に向けてやらなくてはいけないことは何か、できるのか、というそういう峻別が必要だというレベルでの提言をした。(南風原先生)

【新井先生(国立情報学研究所社会共有知研究センター長)】
・あまりに理念先行したことと、センター入試を取り巻く状況認識が、実態とずれていたことが大きな問題だったのではないか。
・センター入試は実態としてメインの利用者は私大にシフトしている。さらに大きな問題は、ほとんどの科目で成績がフタコブラクダ化し成績上位層には優しすぎて、ボリューム層には難しすぎる。センター試験のみで入学する受験者対して適切な出題ができているか適切な教育機会提供になっているか、それに貢献しているかということを議論することが、非常にプラクティカル。
・記述式の数学入試を経ていない大学1年生における初等的な問題の数学的説明力の欠如が問題になった。
特に私大教育系において深刻な誤答が多かった。原因として、アラカルト方式導入や穴埋め式への過剰な最適化があった。
・汎用的基礎的な読解力を問うリーディングスキルテストをやって感じたこともある。リメディアル教育が必要な大学生が増加している。知識が足りないのではなく、学ぶスキルそのものが欠如している。
・汎用的読解力は、伝統的な国語科の読解力とは違う。中学卒業段階のリーディングスキルが高校卒業段階、大学入試受ける際のリーディングスキルだと思ってよい。中高ともに汎用的読解力の学内分散が極めて大きく、汎用的読解力でほぼ進路は決定される。
・リテラシー、科目によらない基盤的汎用的な読解力と記述力を問うべき。科目固有の知識を問うテストではない、大学で学び続けることができる能力を問わないといけない。汎用的読解力と記述力をセンターで課すことは重要。高大接続の観点から、記述を目指し大学受験に挑むか否かで、見かけの偏差値以上の格差が生じている。
・新テストにおける記述式についての提案。数学1A では(キーワードでは解けない)問題文を読解しないと解けない問題を出題する。全く議論されていないが、多項式と多項不等式に限定した式を書かせる出題を数問出題すべき。答えを多項式プラスαに限定すれば、Mathematicaを用いて答案と正答が同一か判定することが理論上はできる。採点ミスは完全に防げる、自己採点もできる。
・もう1つはリテラシー。科目を問わず、高校生が普段接している文章から出題し、高度な内容ではなく、あくまでも正確に読めているかを問う問題に限定する。高度な内容ではないため、採点フローを確立すれば、トレーニングを受けたアルバイトでも採点可能。業者の採用は信用できない意見があればその場合は業者の採点は参考採点とし、答案の画像を出願大学に送る。大学で改めて採点するか、そのまま使うかは大学のAPでよい。

≪意見交換≫
・読解力と記述力の両方をセットでリテラシーとしているが、記述式までを必ずセットで捉えている理由は。文系私大では高校時代に数学を捨てている学生も多く、そちらの問題もあるのではないか。(両角委員)
・読むだけだと、キーワード検索になり、テストの制度として考えたときに変なリバースエンジニアリングをされないように両方聞いたほうがいいだろうというのが、書く力も見た方がよいと思う理由。
数式は1つも出てこない小学校でやるような問題を大学生ができない。論理的文章を読むとパニックを起こすなどの層が私大のボリュームゾーンに多いのが問題。(新井先生)
・リテラシーの試験のやり方について、マルティプルチョイスにできるのではないかと思うが。(小林委員)
・最初は、マルティプルチョイスも含めて設計をして、うまくいきそうなら記述式を考えてもよいのではないか。直近を考えるとマルティプルチョイスでも十分ではないかという印象。(新井先生)
・汎用的読解力の能力は、おそらく就学前から格差が開き始めており、小学生の低学年の段階から十分に開いているがこの埋め合わせ方についてエビデンスはあるか。学校以外の影響についてどのようにお考えか。(末富委員)
・就学援助率の高い学校ほどスキルは低いという状況がある。科学的にリテラシーを上げるということに取り組む指導をやっている学校はリーディングスキルが上がるという結果もある。中学校卒業段階で全員が教科書を読める、みな自学自習ができる、あとは好きなことをやりましょうというのが本来は望ましい教育の在り方。(新井先生)
・高校でやっている国語は何が問題で、どう捉えればいいのか。センター試験では、読解力がなければ数学理科も解けないため、汎用的読解力を見ているという理解をしたが、それで正しいのか。国公立ではセンター試験の点数は上に張り付いており、資格試験的な意味はあるのではないか。点数がとれないと、そもそも入学する資格がないのではないか。(柴田委員)
・汎用的読解力は国語では指導ができないタイプの読解。一方、高校に入学すると文脈など読める前提で知識を教えている。国語で、文脈や論理的理解まで教えろというのは無理がある。国立大学は記述試験をつくる能力がある。資格試験として捉えることが国立大学は良いのではないか。(新井先生) 
・制度設計の中には、基礎学力テスト導入が想定されていたが、最終的にはなくなった。同じような形での共通テストでの将来的な組み換えを考えているか。(芝井委員)
・多様な大学の中でも自学自習をして学び続ける力はどこかで担保されないといけない。AO・推薦も含め大学で学び続ける力を担保して入学することが結果的に退学率を減らし受験生の幸せにつながるような大学入試になるとよいと願っている。(新井先生)

【大森先生(共愛学園前橋国際大学学長)】
・本学の特徴、特に「地学一体」で、学生の9割が県内出身、7~8割が県内就職をしていく大学。地域から預かり地域に返す、これが使命であると心得ている。これも新しい大学の1つの形だと自信をもっている。
・育てているのは、グローカルリーダー、いわば飛び立たないグローバル人材を育成。教育の質転換もとりくんできた。
理想はすべて総合型選抜。「地域の未来は私が作る」というキャッチフレーズを理解し、DPを目指しAPに合致した人材であるとアピールしマッチングしていくことが一番。DPは覚悟の宣言でもあると理解。しかし、全てを総合型選抜で行うのは物理的にも無理。入学試験も学生確保にとって大事な機会であり、本学だけが変な入試をするということはできない現実もある。
・入試は高校生の学びの全てを評価しているわけではない、高校生の未来や学びが多様であれば、それぞれのチャレンジを後押しできる、あるいは得意なことを評価できる入試にしてあげたい。
・高大接続は、社会一般には入試改革とイコールのように語られているが、本来なら学びの接続ではないか。一人の若者をみんなで育てていくことを地域の中で作っていくのは大事。しっかりと大学で育て、社会に送り出すのが大学の役目だ。
・大学の多様性を踏まえた議論をしていただきたい。主体性はかなり人間性に関わってくる。就活でも学生は心折れるのに18歳にそれを課すのか。やるなら慎重にならないといけない。不合格になった場合には、次のチャレンジをしなければならない、そのための準備も大事な期間であるので、日程を後ろにというのは本当に受験生のためなのか気になっている。
・学力の3要素の考え方は大賛成。実際の改革は英語と記述に議論が集中しているが、3要素を身に着けるため高校では素晴らしい取り組みが始まっている。実際に入試制度を作っていると、せっかくの高校の学びを形骸化させる、あるいは入試対策にしてしまうのは違うのではないか悩んでいる。

≪意見交換≫

・小学校から共愛の学生、外からの来た学生、何か違いが見えるのか。(渡部委員)
・多少英語になれている、人懐っこい特徴がみられる。一方で大きな違いはない、あるいは違いを感じないような人に育っていくことが、社会に出たときに多様な人と一緒になるので重要と感じている。(大森先生)
・選抜性の高い大学と議論を分けた方がいいということか。あるいは、トータルに視野の広い議論をすべきかということか。どちらに力点があるのか。(芝井委員)
・例えば、共通テストの話でいえば、東大も本学も同じ問題を使っているということが課題であると思う。どこから分けるのかは難しいが、違う役割のものと分けて議論してよいのではないかと思っている。(大森先生)
・人格否定にあたるようなことで不合格といわれる可能性があると感じるが、それについてコメントをいただきたい。(芝井委員)
・あくまでマッチングだが、全部を否定されたと勘違いしてしまう。18歳が感じたらしんどいのではないか。高校教員の主観も入っているので、気を付けなければいけない。まだ解決に至っていない、議論が続いている。(大森先生)
・共通テストでのぞまれるところは、期待感も含めどういう事か。(小林委員)
・センター試験の問題は良問であり、我々であのレベルの問題を作るのはかなり苦労がある。高校で頑張ってきたことが、どのくらい定着しているのかを見るには便利。ボリュームゾーンの大学としては今後も使いたい。(大森先生)


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