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不採用×不採用

 以前Twitterか何かに書いたことがある気がする話。


 就職活動がヘタクソすぎて今まで生きてきて100社以上、多分200社近くは不採用になっている。200社が要らないと判断した男、それが俺だ。今の職場は正規ルートで入ったところではないので雇ってもらうことができたが、いつかは辞めねばならないさだめなので今から憂鬱である。

 200社も落ちていると受けた企業など一々覚えていないが、それでも印象的な不採用体験というのはいくつかある。


 20代前半の頃、本当に困り果てて時給750円の店頭POP作りのアルバイトを受けたことがある。面接官はやや砕けた雰囲気のおじさんで、あまり緊張せずに面接に臨むことができた。

 物書きになりたかったので物書きの時間を取りながら働けるアルバイトが魅力だったこと。POP作りは未経験でもPC操作には慣れていること。そんな感じのことを話した記憶がある。

 おじさんは「面白いやつだな! 気に入ったよ!」みたいなことを言っていた。マジでだ。そんな漫画みたいなセリフ言うやつ本当にいるんだと思ったのを覚えている。

 この時点でもかなり様子が変だったが、おじさんはさらに「お前みたいなやつを気に入りそうなやつを知っているよ! 今から電話してみるわ!」などと言って面接中にどこかに電話し始めた。面接中に他の面接を斡旋されることあるかよ。

「もしもし!? 面白いやつが面接に来てるんだけど、お前んとこ人手不足だったよな? お前が気に入りそうなやつなんだよ!」

 おじさんはテンション高く電話の相手に俺の紹介をしている。そして電話を切って俺に言った。

「もちろんウチを受けた分はちゃんと選考させてもらうけど、さっき電話したやつのところから連絡があるかもしれないから! 気になったらそっちも受けてみなよ!」

 かなり印象的な面接だった。その後おじさんは俺を不採用にし、おじさんが電話していた相手からの連絡もなかった。


 他にも、コインパーキングの集金の仕事の求人に応募したことがある。コインパーキングをめぐって小銭を回収したり点検したりする仕事だ。言っちゃなんだが車の運転さえできれば誰にでもできそうな仕事だ(実際にやるとなんか苦労があるのかもしれないけど)。車の運転はできるし、前職では機械の点検業務や簡単な修理もやっていたので自信はあった。

 落ちた。

 ショックだった。コインパーキングの集金もできなさそうなやつだと思われたのだ。すでにあらゆる企業から蹴られてボコボコだった自尊心がこの後しばらく折れて癒えなかった。

 きっと俺以上にコインパーキングの集金に向いてそうなやつが受けていたのだろう。そう思わなければやってられなかった。

 小銭駐太郎(こぜにちゅうたろう)、きっとそんな名前だ。きっと出っ歯だ。身長はそれほどないが、手先は器用なのだろう。口癖は「コインパーキングのことならオイラにお任せでチュウ!」

 そんなやつが受けていたに違いない。それなら仕方がない。俺が人事だったら俺よりそっちを採るもんな。

 いつかコインパーキングで小銭を回収する変な語尾の出っ歯の男が悩んでいるところに出くわしたら言ってやりたい。

「お前は俺に勝ってそこにいるんだぞ、そのことを忘れるな」

 おい、お前に言ってるんだぞ小銭駐太郎(こぜにちゅうたろう)。


 印象的な不採用、他にもいくつかあるので気が向いたらまた書きたいと思う。

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