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手間の天秤

「一手間」が嫌いだ。まあそんなの全員そうかもしれないけど、とにかく嫌いだ。

「一手間かけたらもっと美味しくなりますよ」「一手間でもっとお得になりますよ」「一手間でもっと便利になりますよ」等、聞いた瞬間に「要らねえ〜!!!!」となる。

 もちろん娯楽関係の手間暇は惜しまない。むしろ手間がかかる娯楽自体は好きだ。
 さっき例に挙げた「一手間かけたらもっと美味しくなりますよ」も好きで楽しくお料理している時ならば喜んでやる。その時のお料理は娯楽として作っているからだ。
 ただ生きるためだけの食事にはできるだけ手間をかけたくない。食べる前にレンジでチンが限界だ。いくら食事の味が薄くても食べられる味ならば、棚まで3歩歩いて調味料を取ってかけるくらいならそのまま食べる。

「一手間」への耐えられなさはその時の気分に大きく左右されるが、安定してずっと嫌いな一手間が「契約」の類だ。

 何らかのサービスへの会員登録なんか最たるもので、メールアドレスとパスワードを入力するだけでも「アーーーーーーーー」となって一旦閉じてしまう。最終的に契約するにしても本当に渋々イヤイヤ契約するのが常だ。
 これに関しては「一手間」が嫌なのもあるし「人生において管理しなければならない項目が増えるのも嫌だ」というのもある。

 そういうわけだからよく商業施設でやってる「今クレカ作ったら猛烈にお得だけどどうですか」なんてキャンペーンは見向きもしたことがなかった。たとえ何千円お得になろうとそんな契約なんて手間をかけたくないし、管理しなきゃいけないものも増やしたくないのだ。

 見向きもしたことがなかったけど、今日初めてああいうキャンペーンにホイホイと乗せられてクレカを契約作ってしまった。

 佐賀の商業施設にデッドバイデイライトのポップアップショップができていたので覗きにいった。

 こんな感じの縮尺が怪しいパネルがポンポンと置いてあり、絶妙にダサくてカッコいい商品がいっぱい置いてあった。

 マジで死にそうなほどダサいな。俺はデッドバイデイライトが大好きなのでここで数点買い物した。

 ここでもこの商業施設の「クレカ作ったらお得やぞ」的なキャンペーンが行われていた。なんか、クレカを今契約していけば安くなるだけでなくグッズがもらえたり抽選に参加したりできるという。

 もちろん一手間が大嫌いな俺がそんな話に乗るわけがない。何千円お得になろうとどんなにいいグッズが貰えようとクレカの契約なんてホイホイ増やしたくないのだ。
「いえ、結構です。現金で」と財布から現金を出そうとした。
 ところがデッドバイデイライトのしょうもないグッズにときめきすぎて完全に油断しており、現金が数百円足りなかった。今からATMまで行くのもまた「一手間」だ。
 クレジットカード自体はかつて渋々契約して持っているのでそれで支払おうとしたところ「クレカで払うなら作っちゃえばどうですか」と言われた。この店員のしつこさは才能だ。やり手に違いない。

 今まさに使おうとした手元のクレジットカードを見た。「いやこれでお願いします」と言うのがこの場を切り抜ける一番の最短ルートであることは分かっていた。しかしこのクレジットカードの規約が最近変わってなんか嫌になってしまって「クレカ乗り換えてえ〜〜けど面倒くせえ〜〜〜〜」とも思っていたのだ。

 さまざまな面倒な一手間の天秤が揺れた結果、結局その場で契約することにした。ああいう場でのクレカの契約は初めてだったので「クレジットカードの契約ってこんなサクサク進んでいいものだっけ」と不安になりながらの契約だった。
「俺今無職だけど大丈夫かな」とも思ったが、係員の言うように項目の穴を埋めたらなんか無事に審査は通った。大丈夫? 俺何か嘘ついたことになってない?

 結果としては会計はかなり安くなったし、なんかグッズも貰えた。いずれクレカを乗り換えようと思っていたのでまあ良しとしよう。今度は古い方を解約する手間が面倒で嫌だな。気が狂いそうだ。

 さて今俺は契約した時に設定したIDとパスワードを忘れて困っている。これだから管理しなきゃいけないものを増やすのが嫌だったんだ。設定し直しの手続きが手間だ。

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