見出し画像

「古今和歌集」でAIアート⑭(春道列樹)

昨日といひ けふとくらして あすか川 流れて早き 月日なりけり

訳:昨日が過ぎ、今日も暮れてと言いながら過ごしてきたけれど、明日はいよいよ新年。飛鳥川のように、月日の流れるのはなんと早いことか(引用:『100分de名著 古今和歌集』渡部泰明 NHK出版)

この絵の主人公は、遠い山際から差してくる夕陽に照らされた川の流れを、時間の経過と重ね合わせながら佇んでいます。

「時間の流れの速さ」に驚く歌ですので、絵にするにあたって川の流れがもう少し速そうになってくれれば理想的だったのですが、山肌から雪を巻き上げられた雪の結晶や、髪の靡き方で「幾分か強い風が吹いている」ことでスピード感を補えているように感じられます。

何より画面の奥の方で、渦巻くような赤くて怪しい夕焼け模様がなんとも美しくて、この絵を選びました。

もしかしたらこの怪しい夕焼けは、撰者たちが憧れて止まない古の歌人たちから送られてきた「ドヤ顔」なのかもしれませんね。

テキストによれば、「『古今和歌集』の撰者たちは『万葉集』の和歌を仰ぎ見ていた」とのことです。現代に比べて古代の皆々様方は、人智や科学を遥かに超越するような、不思議な力を持っていたのでしょう。夕焼けに、、、

「どうだ?君の歌は人の心を掴めるのかな?いずれにせよ、私たちには遠く及ぶものではなさそうだねぇ」

などと言う先人の叱咤激励を感じ取った『古今和歌集』の撰者たちは、「あぁ、先輩方には敵わねぇな、、、」などと苦笑いを浮かべる。。。

こういう対話の仕方があるとしたら、私は憧れてしまいます。

「古いものに対する憧れや尊敬の念」が、「未来に対する期待感と渇望」にいつの間にか取って代わってしまった現代では、過去と対話する機会がどんどん失われているように思います。

どことなく寂しさが募ってくる和歌絵でした。

ちなみに『万葉集』は8世紀後半(西暦で言うと、780年前後?)に編まれたので、905年に完成した『古今和歌集』の撰者たちからすると、およそ120年くらい前の文学に対するリスペクトが込められたのが、この歌ということになります。

現代を生きる私たちからすると、大凡19世紀末から20世紀初頭の作家や文学を仰ぎ見るような感覚ですので、

「たけくらべ」/樋口一葉
「金色夜叉」/尾崎紅葉
「武蔵野」/国木田独歩
「高野聖」/泉鏡花
「みだれ髪」/与謝野晶子
「吾輩は猫である」・「坊ちゃん」/夏目漱石
「破戒」/島崎藤村

などの作品が当てはまります。

当時名だたるスタープレイヤーたちがずらりと並んでいますね。過去との対話を再開させるには、ありがたい先生方です。

それでも敷居の高さにたじろいでしまうズブズブな現代人の私は、『文豪ストレイドッグ』から始めることになりそうです。

今日の絵は、こんなお願いの仕方で生成AIに描いてもらいました。

画面の右奥から左手前に向かって川が流れている、その流れは速い、日本古代の着物姿の人が画面の右下に、正面を向いて立っている、明るい顔をした彼女の表情には、驚きの色が浮かんでいる、彼女が吐く息は白い、大晦日、小雪がちらついている

A river is flowing from the back right of the screen to the front left, and the flow is fast.A person wearing an ancient Japanese kimono is standing in the bottom right of the screen, facing forward.She has a bright expression on her face. There's a color of surprise in her eyes, her breath is white, it's New Year's Eve, a light snow is falling,

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?