Freedmanで統計学を学びましょう Ch.2
Freedman Statistics 4th Editionを読んでいくノートです。
今日は、Part 1. Design of Experiments(実験計画法)のChapter 2. Observational Studies (観察研究)です。
前章では、研究者がTreatment groupとControl groupに自由に介入できる状況を想定しましたが、現実には不可能であることが多い。たとえば、喫煙による健康被害を調査するのに協力するためだけに、10年も喫煙を続けてくれる人はいません。
そこで、実際に喫煙者と非喫煙者を探し出してきて、それぞれの集団における疾病率を比較することになるでしょう。こういった研究者が介入しない研究のことを Observational Studies (観察研究)といいます。
本章では、観察研究を行う場合の注意点について説明されています。
まとめ
1. 研究者の介入なしに、研究対象の行動・症状にあてはまる集団とそうではない集団を見つけてきて、比較する研究のことを Observational Studies (観察研究)と言う
2. 観察研究の結果、Association(相関)が見つかることがある。
しかし、気をつけなければならないのは、必ずしもCausation(因果関係)を意味しないということだ。
喫煙がなにか別の事象を引き起こしていて、その事象が結果として疾病率をあげていることだって考えられる。
3. この「別の事象」のことを、Confounder / Confounding factor(交絡因子)という。
交絡因子という専門用語は聞き慣れないが、元の言葉を直訳すれば、「にせの理由」くらいの意味に受け取ればいいのではないか。
4.調査研究の分類方法
- Control groupとの比較実験であるか?
- [Yes] Controls (対照実験)
- 同時期の実験の比較か、過去との比較か?
- [同時期] Contemporaneous
- 研究者が介入しているか?
- [Yes] Controlled Experiment 介入実験
- ランダムに被験者を選別したか?
- [Yes] Randomized 無作為化
- [No] Not Randomized 非無作為化
- [No] Observational studies 観察研究
- [過去] Historical
- [No] No Controls(非対照試験)
5. 観察研究やランダム化されていない対照実験を行う場合には、Control groupとTreatment Groupの被験者たちがどう選別されているのかに注意する。Treatment groupに入った人たちに共通の特性が、研究対象の内容以外にあれば、それがConfounder(交絡因子)になりうる。
6.観察研究では、被験者群を、偏りのない同じ特徴のグループに分割することで、Confounder(交絡因子)の影響を抑えることができる。具体的には、男女の偏りがある場合は、男女別にそれぞれ対照実験を行う。年齢層なども同じく。
7. 実験計画は、統計の応用の主要なトピックである。被験者をランダム化することで、Confounder(交絡因子)が入り込む余地を減らすことができる。ランダム化実験を元にした推論については、27章で扱う。
演習問題
ほとんど全章をつかって、Confoundingに注意を払うべきという主張を、豊富な例で示されています。
たとえば、clofibrateという血液中のコレステロールを抑える薬の効能を調べる無作為化対照実験がありました。薬が投与されたグループをよく分析してみると、薬を飲み続けた人たちは、飲み続けなかった人に比べて、5年後の死亡率が10%も低かったそうです。
一見、薬の効果があったように見えますが、実は、プラセボを受け取ったグループでも、同じように、薬(プラセボ)を飲み続けた人たちの死亡率は低かったそうです。
ということは、薬に効能があったのではなく、飲み続けるという行動が取れた人たちは、そもそも健康への意識が高く、日常の生活習慣に差が生まれていたことが原因だった可能性もある。
他にも、超音波治療を受けた胎児は低体重で生まれてくるという相関が観察されたという例もある。超音波が低体重を引き起こしたのだろうか?実際には、超音波治療を受けるのは、なにかしらの問題が見つかった胎児に限られるわけであり、超音波治療はあくまで付随的で、そもそも見つかった問題が低体重の原因となっていると考えられる。
カリフォルニアの刑務所では、まもなく刑期を終える囚人を対象とした”boot camp”プログラムを新たに開始した。囚人のプログラムへの参加は任意である。スポークスマン曰く、「プログラム参加者が再度罪を犯し刑務所に戻ってくる率は低くなっているだろう」。果たして、このプログラムは成功をおさめたと言えるだろうか。結論を急がないために、Treamtment groupとControl groupはどのような集団か、これは観察研究かランダム化対照実験か、分析しよう。
感想
上記のような、実例から因果関係があるかないかを問う演習問題が15問。さらに、章全体の演習問題が12問。たっぷり演習に頭を使えます。演習問題の特徴として、実例を豊富に用いられていることが挙げられます。めっちゃリアルです。そして、そこからどんな結論がえられるか、それはなぜなのか、繰り返し問われてます。データからなにを結論として引き出せるのか、自分の頭で考えるとてもいい訓練になります。論文や書籍、ニュースサイトなどあらゆるところで見かけるあやしい言説にだまされないためにも、演習にじっくり頭を悩ませて、Confounder(ニセの要因)を安易に因果関係と見なさない論理的思考力を養いましょう。
次からは、Descriptive Statistics(記述統計)にいよいよ入っていきます。
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