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花のお江戸は世界一の○○な都市(2)マッチポンプはあったのか。

〔前説〕
この記事は江戸時代の火事の話題です。
火事の話題をセンシティブに捉える方もいらっしゃるかもしれません。
江戸時代の歴史、風俗のことですので、どうかご了承いただけると幸甚です。

著者謹白

前回、明暦の大火についてふれ、江戸は世界一の「火災都市」であったことを記事にいたしました。その続きです。

マッチポンプはあったのか?~幕府編

マッチポンプ」とは自分で火をつけて自分で消火すること。火事のお話ではなく、いわゆる「自作自演」です(´-ω-`)

明暦の大火に関するマッチポンプとしてよく言われているのが、江戸幕府によるスクラップ&ビルド説です。前回も述べましたが、当時の江戸は開発途上にもかかわらず人口流入が激しく、それに伴い衛生状態や治安の悪化がかなり問題になっていました。家光治世の寛永年間(1624~1645年)は島原の乱鎮圧による財政悪化と政情不安定、参勤交代による江戸への武家流入、寛永の大飢饉による貧民の流入などで人口が激増し、江戸は疫病、盗賊、殺人そして火災が頻繁に起きる、治安の悪い都市でした。

そこへきて代替わりしたばかりの家綱の治世で世間を揺るがしたのは、由井正雪による幕府転覆を狙ったクーデター未遂事件(慶安の変)です。開府より半世紀。幕府の権威が揺らいでいた時代でした。

江戸をゼロベースで造り直す。」そんな退廃的なことを考える幕臣がいてもおかしくありませんという説です。

もちろん、こんなリスキーな政策をする人がいたとは思いたくありませんが、現在でもまことしやかに囁かれている説です。

マッチポンプはあったのか?~町人編

次は本当かもしれないお話です。
町人によるスクラップ&ビルド説です。不謹慎な話ですが、火事になって仕事が増えるのは、商人であれば材木屋、資材屋、建築請負業者などです。町人であれば大工、鳶、左官など建設業に従事する者です。
特に吉宗治世の町火消発足後、火消人足の中心的役割を担うのが身体能力が高く、高所作業の得意な鳶だったこともあり、この時代鳶は重宝された職種だったようです。

しかしそれは火事場や建設のニーズがあればこそ。「火事があれば仕事が増える」と思う町人がいない訳ではありません。実際に放火で処罰された鳶もいるといわれており、その理由が「自分たちの火事場仕事が増える」ということ以外に、「自分たちが衆目を集めたいがため」ということもあったそうです。

ちなみに、この火消人足たちはフリーランスではなくそれぞれ所属があり、江戸屋敷のある大名が、自分の屋敷の消防を担うための人足を独自に抱えていました(大名火消、各自火消)。
ただ、この火消たちの気性はめっぽう荒く、縄張り意識や名誉意識が強いため、しょっちゅう組同士の喧嘩になっていたそうです。

火事と喧嘩は江戸の華」と前の記事にも書きましたが、「~組」とか、そういった組の人たちはそれぞれ独自のコスチュームに身を包んで闊歩し、自分たちの火場働きの威勢をもって大衆にその存在をアピールします。江戸の大衆は一目見ただけで「あれは○○藩の○○組とか、△△鳶だ」とか分かったそうです。

対立する勢力とのいざこざあらば、本来有事の時しか鳴らしてはいけない火見櫓の「警鐘」まで鳴らして組員を招集し、街中巻き込んでの乱闘騒ぎ。総勢700人が乱闘した記録もあり、それを見物したり、参加したり、あるいはお芝居にしたりして、エンタメ化する民衆の構造がありました。

喧嘩
小村雪岱「喧嘩鳶」

マッチポンプはあったのか?~恋愛編

明暦の大火は「振袖火事」といわれており、いわくのついた振袖が、持ち主を転々とし、供養のために燃やそうとしたところ火が付いたまま飛び去り、江戸各所に引火した、なんて逸話があります。

明暦の大火より後の話ですが、有名なのが「八百屋お七」の逸話です。

天和てんなの大火で自宅の店が焼け出された16歳の少女「お七」は親とともに近くの寺院に避難し、そこで寺小姓の美少年と恋仲になります。やがて自宅に戻ることになり、少年と離れ離れになってしまいますが、お七の心にいちどついた恋の炎は消えません。

そこでお七は「もう一度自宅が燃えれば、また彼に逢える。」と思い自宅に火をつけました。

火はすぐに消し止められ大事には至りませんでしたが、お七は放火の罪で死罪となりました。

この悲話はお芝居や物語にもなり、お七の浮世絵は江戸の庶民に人気だったそうです。最近でいうと坂本冬美さんの「夜桜お七」の着想にもなったそうです。「♭さくら~々~」の歌い出しはキャッチ―なので、聴いたことのある方もいらっしゃると思います。

ちなみに浮世絵でお七が描かれるときは「麻の葉文様(麻柄)」の着物を着ています。江戸時代に男女問わず大流行した文様です。これ、どこかで見覚えありませんか??そう、「鬼滅」の妹さんのお召し柄ですよね。麻の葉は「悪い虫」が付きにくいことから、「健全」・「純潔」の象徴だそうです。

麻の葉文様(麻柄)



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