やがて至る地点を手放すために 2/10
六時十二分。
マリエン広場の靴屋で買ったニューバランスを履き、きつく紐を結ぶ。部屋を出る。廊下を、階段を、アスファルトを、一歩ずつ、しっかりと弾く。脚を回転させるように、踏み込みと浮遊と着地を繰り返し、前へ前へと進んでゆく。呼吸のリズムを意識する。風景には目を留めない。日付が変わろうと、気圧が変ろうと、読む文章が異なろうと、肉体はつねに正常であり続けなくてはならない。適切な拍を刻み続けなくてはならない。四拍子、BPMは一二〇ほど。呼吸を落ち着けると、僕は周回軌道に入るこ