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『逆光記』 〜パネルの作り方〜

 僕の特技はパネルを作ることだ。物心ついた時からパネルを作っていたわけでもなく、中学生の時にパネル作成部に入っていたわけでもない。パネルを作り始めたのは1年と少し前、ミシマ社で働き始めてからである。

 僕が働いているミシマ社は出版社である。今度本屋に行った時にしっかりと見ていただきたいのだけれど、本棚にいろいろとパネルやポップが貼ってある。これは本屋が作っているのではなく、その本を発刊している出版社が本を売るために作っている。僕はミシマ社であまたのパネルを作り続け、その腕を身につけ、鍛え、日に日に成熟させている。

 映画『逆光』の展示に使用するパネルの作成を手伝った。普段、ミシマ社では「これだけパネルを作ってくれー」「わかりましたー!」(作業)「お待たせいたしましたー!」「ぶらぼー!ありがとー!」なのだが、『逆光』パネルを作ると、ただいつも通り貼って切っているだけなのに1枚ごとにめちゃめちゃ褒められて、嬉しくなって調子に乗ってしまう。広島蔦屋書店で『逆光』がイベントをした時のパネルを僕の母親が作った(実は、僕の母親は広島蔦屋書店で働いている。)という話も、偶然というかむしろ必然で、大爆笑だ。

 ということで、今回はパネルの作り方について解説させていただこう。
 まず、どこかでパネルを買ってくる。これは、片面にノリがついていて、「のりパネ」や「ハレパネ」或いは「ハリパネ」と呼ばれるものである。そして、作りたいパネルのビジュアルを印刷する。あと必要なものは、カッターとカッターマットと定規である。これさえあればパネルを作ることができる。
 カッターはできるだけ大きくてゴツいものが好ましい。パネルは分厚くて切断するには少し力を込める必要があるため、昔っぽい金属の細いカッターで切っていると徐々に手が痛くなってくる。なので、グリップが付いていて、手にフィットしやすいものを推奨するが、まぁ切れればなんでも良い。
 定規は長めのものが良ろしい。30cm以上あるものが良い。A4のパネルを作る時に全ての辺をひと息で切れるだけの長さがないと、直線の途中でカッターを止めた跡が残ることがあるし、気持ち的にもみすぼらしい。ただ、長ければ長いほどいいというわけではなく、長すぎると扱いが大変。30cm前後がちょうどいい長さだ。カッターマットは家にある余り物で間に合わせればけっこうである。

 ここまで準備が整ったら、あとは貼って切るのみである。ただ、貼って切るとは言っても、コツというものがある。まず、紙をパネルに貼る時は、のり面のラベルを全て剥がさないことが重要だ。いきなり全面で貼ろうとすると、空気が入ったり、シワができたりする。なので、ひとつの辺のラベルを3cmほど折り返し、そこに対応する紙の辺を合わせて貼る。この時、パネルの辺に対して紙の辺が限りなく平行になるように貼らねば、紙がパネルからはみ出してしまうので要注意だ。
 端の辺を決めることができれば、あとは少しずつラベルを剥がし、すかさず伸ばしながら貼り付け、また剥がし、伸ばしながら貼り付ける。そして、切りたい線に定規を当て、カッターで定規の端を強くなぞる。この時に定規から指がはみ出ていると指を切断してしまうので要注意だ。切りたいところが全て切れたらパネルの完成である。

 ただ貼って切るだけという単純な行為の中に隠された絶妙なコツも、これさえ読めば習得することができ、あなたも明日にはパネルを作っていることでしょう。


   僕たちが作った『逆光』パネルは、3月25日(金)、映画『逆光』の上映開始と同時に六曜社珈琲店に展示される。コーヒーを飲みながら、店内に散りばめられた『逆光』をお楽しみください。



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