センター倫理の問題文を、現代文読解のトレーニング教材に活用しよう!
先日、以下のツイートをしたところ、結構な反響がありました。
私は15年近くセンター倫理の問題分析と解説授業を映像で配信してきましたが、毎年のように思うのが、「問題文がよく書けている」ということでした。
そして、その完成度は、模試の作問をするたびに痛感していました。①一つのテーマを設定して、②設問で取り上げる思想家を過不足なく取り上げ、③首尾一貫した文章を書き切る。④しかも必ず27 行で笑(増減したことは一度もありません)。これが真似できないのです。
(実際に作問すると分かりますが、十人十色の思想家を一つのテーマで結ぶのはかなりの力技を要します)
ただ、これだけ完成度の高い問題文も、各設問を解くうえではほとんど関係ない。それゆえ、受験生もきちんと読まない。勿体ないなあと思っていました。
そうした中で、ふと思いついたのが「現代文読解のトレーニング教材に活かす」ということで、何気なく呟いたところ、好感触が得られた次第です。
そこで、この記事では、センター倫理の問題文のどこが良いのかということと、実際の活用方法について説明したいと思います。
〈長所①・論の展開が明快〉
センター倫理は、第1問(青年期・現代社会)・第2問(源流思想)・第3問(日本思想)・第4問(西洋近代思想)の大問4問で構成され、各大問にテーマを貫く問題文が用意されています。次の画像は今年度(2020年度)の本試験・第2問の問題文です。ざっとお読みください。
中盤の第2〜第3段落では、プラトンから始まって、諸子百家・イスラーム教とさまざま出てきて、倫理を学習していない方にはチンプンカンプンかもしれませんが、論の展開をつかむのは難しくないと思います。つまり、
・第1段落=テーマ設定(旅に関する思索)
・第2〜第3段落=テーマに沿った具体例(先哲の思想)
・第4段落=結論(真理を追求することの大切さ)
という、お手本のような全体構成になっています。
しかも、スゴイのは、すべての問題文がこの構成で書かれているとということ。だから、現代文読解の入門編として最適なのです。
〈長所②・基礎的な問題付き〉
大問には必ず問題文の読解を問う内容合致問題があります。教科的な知識は不要な、純粋な読解問題です。しかも、現代文の問題のように、細かな表現が正誤に関わるということもなく、先に述べた論の展開がつかめていれば無理なく解けます。
最終段落で述べられていた結論を押さえれば解答できますね。実は、受験生には「第1段落のテーマ設定と最終段落の結論だけ読めばできるから」という、現代文の先生にお叱りを受けそうなことを言っているのですが、現代文が苦手な受験生は具体例に振り回されて論から脱線してしまうもの。初歩としては、論の展開を踏まえて大事なところが押さえられていれば十分だと思います。
〈長所③・評論文の頻出テーマと重なる内容〉
また、書かれているテーマが、「近代化の功罪」「自己と他者」といった、評論文で扱われる頻出テーマと重なることも、指摘しないわけにはいきません。総じて、倫理と現代文はとても相性が良いです。倫理選択者でなくとも、問題文を読むことで、そのエッセンスを吸収できると思います。
〈毎日10分読む習慣を〉
以上のように、センター倫理の問題文は、現代文読解のトレーニングとして最適な、いくつもの長所を兼ね備えているのですが、もう一点付け加えるならば、全体が1200字程度であるため、初学者でも負担感なく取り組めるということが挙げられます。
もちろん、入試現代文では3000字以上の文章が出題されますから、それだけの長文を読み切る体力をつけることが求められます。しかし、最初から高くそびえる山を見せてしまうと、拒絶反応を示し、現代文嫌いになりかねません。
初学者であれば、10分ほど時間をとって読む。問題も解いて答え合わせをする。そのくらいで良いように思います。そして、それを日課として習慣化することが肝心です。そうやって、ただ読むのではなく、論の展開を考えて筋道立てて読む姿勢を身につける。
センター倫理の問題文はそのお役に立てるに違いありません。
最後に「隙あらば宣伝」ですが、センター倫理は各思想家を問う設問も面白く、勉強になる。だからもっと知ってほしい。そういう思いで書いたのがこの本です。哲学・宗教の入門編としても悪くないと思います。興味のある方はぜひ手にお取りください。
『センター倫理でびっくりするほどよくわかる はじめての哲学・宗教』(大和書房)
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