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【名作迷作ザックザク③】三十一年前の今ぐらいに公開!! CGに頼らないおぞましいクリーチャー造形+劣化しかけの90年代ジュリーの味わい『ヒルコ/妖怪ハンター』

  結論から言おう‼・・・・・・・こんにちは!!( ゚Д゚)
 幼少期に覚えたゲームのパスワードで何故か未だに忘れられないのが「ネミシミシミシFミシウ」、O次郎です。

スーパーファミコンの『バトルドッジボールⅡ』(1993)。
上記パスワードを入力すると、隠しキャラクターのロアがパラメータ最強状態で使えたハズです。
そういえばバラエティの「TATO&KENテレビバスターズ」とか、コロコロの『ドッジ弾平』とか、一瞬だけドッジボールが流行ってた時代だったと記憶。
※ボンボン派だったので個人的には『爆風ドッジ』

 昨年夏に公開30周年記念ということでBlu-rayソフト化されてたので買おうかどうしようか迷ってる内にサブスク配信で観られるようになってたので、このGW休暇に乗じて久しぶりに再見。
 公開時は4,5歳だったのでさすがにリアルタイムでは観てないですが、当時の特撮とホラー映画には幼少期なりの思い入れが有ったり、主要キャストに対しての思い出が有ったりするので、ガチガチの特撮目線というよりはアラフォー以上の人に90年代前後をサラッと懐かしむように軽く読んでいただければ嬉しいです。
 それでは……ハリケーン・サンダー・ボール!!



Ⅰ. どんな作品?

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A6%96%E6%80%AA%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC#%E6%98%A0%E7%94%BB

 諸星大二郎さんの漫画が原作ということですが、個人的には代表作のどれも読んだ記憶が有りません。が、『夢みる機械』については記憶が有って、どうやら中学生の頃にNHK-FMの土曜夜の「FMシアター」内でラジオドラマとして聴いたようです。結構ほっこりする作品が多い枠だったから虚を突かれた印象を思い出した…。
 古史古伝を題材に取られた作品が多くて映像化はお金が掛かるからかそんなに数が無く、結果として連載漫画をリアルタイムで読んでない世代としては馴染みがなかったようです。

このTVドラマ版も確か観たはず。日常の価値観をひっくり返す感じが
まさに『世にも奇妙な~』向けの話でしたね。
個人的に窪田さんはエラが張ってる系の顔で一番の男前だと思ってます。

 
 『ヒルコ/妖怪ハンター』については、十年ぐらい前に同じ塚本監督の前作である『鉄男』を観て、ぜひ他の作品も観ねば!となった流れで観ました。
 クリーチャーのグロテスクでおぞましい感じや、登場人物の汗や筋肉への拘りが滲み出るフェティッシュな画面はまさしく『鉄男』の延長線上にある作品と見えましたが、その反面、ストーリー展開についてはまるで強烈な投げっ放しジャーマンのような置いてきぼり感のあった『鉄男』と違い、起承転結のきっちりした本作の展開に”安心半分ガッカリ半分”というのが正直なところでした。
 なんというか、アーティストとしての塚本監督と職人としての塚本監督がピッタリ均整の取れているのが本作の特徴であり、魅力だと思います。

喩えとして微妙かもしれないけど、”押井監督イズム全開の『ビューティフル・ドリーマー』に対して、あくまで原作の雰囲気を纏いつつもそこに作家性が合わさってる『オンリー・ユー』”
みたいな具合?



Ⅱ. キャストいろいろ(個人的思い入れ強め)

 キャストに関しては役の重要さよりも個人的思い入れエピソード重視です。そこのところ何卒ご容赦くださいまし・・・。

・稗田 礼二郎(ひえだ れいじろう) - 沢田研二

80年代までのクールでスリムなジュリーは何処へやら・・・。
しかしながら往年のファンが眉を顰めたであろう、
ふっくらとしてひょうきんな90年代ジュリーもなかなかどうして。
近年のライブドタキャン騒動はさておき、やっぱりスーパースターだけのことはあるね!

 さしもの退廃の貴公子も寄る年波には勝てず…。当時40代半ばということでそろそろ体型的には緩みが隠せないビジュアルですが、”かつては新進気鋭の考古学者として持て囃されたもののついぞ認められず落ちぶれ、最愛の妻を失い、それでも信念を失わず愚直に生きる中年男”という主人公の背景にこれほどピッタリ合致する俳優さんは他に居なかったのでは?という名キャスティング。
 偉業の怪物ヒルコを前にして、甥のまさおくんとともに絶叫して逃げ回る姿はドラえもんのようでもあり、最終的に比類なき考古学の知識と秘めたる勇気を示して封印に成功する姿はパタリロのようでもあり、つまりは「普段はちゃらんぽらんだけど、決めるときはばっちり決める」という、カッコいい男の黄金律。
 それまでの『悪魔のようなあいつ』や『太陽を盗んだ男』のような破滅的でヒロイックなジュリーとは一線を画するキャラクターであり、本作をして”新境地”と評されたという話も頷けるというものである。
 余談ですが、私が未だ物心つく前の80年代末、ジュリーがドサ回りのコンサートで郷里の市民会館に来てくれたことが有りました。ジュリー世代の母親に連れられて私も会場に行ったそうなのですが、コンサートの生歌を観ることなど初めてで興奮していた幼児の私はMC中にも叫んでしまっていたそうで、それを見たジュリーが「よう兄ちゃん!ノッてるね!!」とステージ上からマイクで語りかけてくれたそうです。なんて優しいジュリー…。

当時、歌番組等ですっかり満月気味なジュリーを観るにつけ、
「もう!こんなになっちゃって~っ!!」と母がよく嘆いていたのも懐かしいお話で…。


・月島 令子(つきしま れいこ) - 上野めぐみ(深山凛)


たしか、『仮面ライダーBLACK RX』でも出てらっしゃいましたね。
弓矢びゅ~んと射る女の子の役で。

 人間状態なのが冒頭のものの10分ぐらいで、あとは哀れヒルコに変貌を遂げてしまうので、ある意味『東海道四谷怪談』のお岩さん役以上に不憫な気もするのですが…なんにせよ、近所の美人のお姉さんって感じが素敵です。
 まさお君の想い人(物語終盤に、彼女と会話すらしたことが無かったことが明かされるのがまた切ない…)であり、竹中直人さん演じる八部先生と微妙に不謹慎な関係を感じさせる描写も印象的でした。
 この数年前に放映された特撮番組の『おもいっきり探偵団 覇悪怒組』のヒロイン役で出演されてたので、個人的にはそちらが思い出深いです。

トリビア: 左端の子役の少年が『となりのトトロ』の
「や~い、オマエんち、オッバケや~しき~」でお馴染みのカンタ君役。


・八部 まさお(やべ まさお) - 工藤正貴

なんかやたらと汗と筋肉を見せつけるシーンが多かったように思いましたが・・・
そのあたりに前監督作である『鉄男』と同質のフェティシズムを感じますね。

 実質的な主人公。冒頭で思いを寄せるヒロインが早々に犠牲になってしまったのが切ないですが、軽蔑していた稗田と和解してお別れするラストシーンは何とも言えない爽やかな存在感でした。  

・渡辺(わたなべ) - 室田日出男

冒頭に登場する、その地の因縁を知る不気味な寡黙な老人。
なんか強烈な既視感が、と思ったら・・・。
『スウィート・ホーム(1989)』の冒頭に出てくる
ガソリンスタンドの主人(演:伊丹十三)にダブったんだ。

 昭和の名優だけあって、短い出演シーンながらもさすがの存在感。
 あえて見せない自決シーンも大変なインパクトでした。


 その他にも、今ではベテランの俳優さんがチラホラ・・・。

竹中直人さん(まだ髪がある!!)
画面左側、ヒロインのお母さん役が若い頃の余貴美子さん。
ラストのエンドロール観るまで気づきませんでした…。



Ⅲ. ムムムなシーンの数々

冒頭の稗田ことジュリーの登場シーン。
どっかの探偵さんかいな・・・。
ヒルコが這いずって迫ってくる主観シーン。作中かなり多用されてます。
おそらくですが、後の95年からはじまる映画『学校の怪談』シリーズなんかで
オマージュされたんじゃないでしょうか?
学校の送電線を鎌で切断する用務員さんの図。
『丑三つの村』の犬丸継男みたい…。
お手製感溢れすぎな妖怪退治道具!
ヒルコにはある程度効果が有りましたが、マシュマロマンには無理でしょうな~。
『おかげでした』の「全落シリーズ」で日村さんがジュリーに喩えられてましたがそれも頷ける…
ザ・死亡フラグだけど助かったまさおくん。
古墳での大量のヒルコとの最終決戦の装備は、
なんとキンチョールと鎌。
※鎌はまぁいいとして、キンチョールが効くことへの解説は最後まで無し。
ヒルコから解放されたヒロインの魂が旅立つが……合成が不気味過ぎる。
せめて最後ぐらい人間の姿に戻してあげてよ。
ど~こかで~ だ~れかが~♪
き~っとま~って~ いて~くれる~♪



Ⅳ. おわりに

 本作は平成初期ゴジラやガメラのように、CGが未だ未熟で添え物ゆえにミニチュア特撮としては円熟期の作品で、当然そこが見どころなのは間違いないです。
 が、上述のように、なんといっても脱二枚目演技のジュリーのはしりの作品として大変面白く、90分程度の尺の中に説明不足感は有りながらも、一方で数々の謎のヒントも点在しているので、それを考えながら繰り返し観るのも楽しいし、製品版の特典映像観たくなったりもしちゃったり。
 ただ、80年代末に流行ったスプラッター描写の残滓がアリアリと見て取れるので、これから観る方はそのへんお気を付けいただければと思います。



それではまた。
どうぞよしなに。(・∀・)

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