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スタートアップのサイエンス-1-2 スタートアップのメタ原則を知る(前半)

先週末に引き続き、こちらの本の第1章を中心に紹介しています。

「Chapter1 IDEA VERIFICATION アイディアの検証」は本書の冒頭ではあリマスが、全279ページ中、実に103ページが割かれており、現代でも十分に見直すべき要素、生成AIの時代において知られておくべきモデルが沢山あります。思ったことを加えながら紹介しています。

1-1 スタートアップにとっての「良いアイディア」とは

https://note.com/o_ob/n/n8f8355b16d6b

1-2 スタートアップのメタ原則を知る

p.38-53がこのセクション。今回は前半のp.42までを紹介します。



・スタートアップとスモールビジネスの違い

VCとして活動しているとスタートアップとスモールビジネスの違いがわかっていない起業家に多く出会うという

違いを7つにまとめている

違い①:成長方法

スタートアップの理想的な成長曲線は、キャッシュが一旦右肩下がりに落ち込んだ状態から急浮上をみせる「Jカーブ」を描く。成功した暁には巨額のリターンを短期間で生むことができる。
かたやスモールビジネスは、従業員を増やしたり商品ラインアップを増やしたり、店舗を拡大したりするなどして初期の段階から線形的に徐々に成長していく。そこそこのリターンを確実に得ていくモデルである。

まさにこの話だな

違い②:市場環境

おそらくこれが最もわかりやすい「違い」で、スモールビジネスは既に存在する市場を対象にし、スタートアップは「それがそもそも存在するかどうか」さえ確認されておらず、その前段に当たるアイデアの発見・仮説検証から始める必要がある、という点。

市場の参入タイミングが重要になる。
例えば「おしゃれなカフェ」を開業するなら、いつ開業しても余り関係がない。なぜ「今やる必要があるのか?」という問に対して合理的な説明が必要。

違い③:スケールへの姿勢

スタートアップは「スケールすることを運命づけられた取り組み」である。
スモールビジネスは既に市場があり、PMFを達成できているものに対して事業展開するので、スケールよりも事業の採算性(ユニットエコノミクス)を高めることができるかが重視される。

違い④:ステークホルダー

スタートアップに資金提供するのはVCやエンジェルであり、スモールビジネスに資金提供するのは銀行や信用金庫。
VCは出資した額に対するキャピタルゲインを求めるので、一気にスケールする可能性を秘めたスタートアップはしか相手にしない。

違い⑤:対応可能市場

ラーメン店、バイク便、理髪店のような商圏が限られているビジネスはスタートアップではない。指数関数的に成長できないから。

違い⑥:イノベーションの手法

既存市場を覆すディスラプティブ(disruptive;破壊的)であるケースが多い。既存市場に対して着実な改良を加えていく持続的イノベーションはスタートアップが行うべき取り組みではない。

違い⑦:インセンティブ

スタートアップは上場やバイアウト(買収)によるストックオプション、キャピタルゲイン。
スモールビジネスは安定的に出せる給料。


1-2は続く


・スタートアップは一時的な組織

スタートアップがPMFを達成してスケールする段階になったら、新たなビジネスを生むことよりも経営効率を追求する「一般企業」に変わる必要がある。これはどんなスタートアップでも避けることはできない。

「ゾンビスタートアップ」という言葉がスタートアップの世界にはある。10年、20年たってもスケールせず、そうかといって倒産もしない会社。実はこうした会社がたくさんある。資金調達はしたがIPOを逃し、当座の食い扶持を確保するために始めたはずの業務(受託業務やコンサルティング業務)がいつの間にか事業の柱になっている。
VCから資金調達しているにも関わらず、スケールやイグジットができない状態になり、スモールビジネスを手掛ける会社になっている。やがてVCから資金回収を迫られ、手元資金がつきて解散してしまうことになる。

・スタートしてアップできるか

曽我弘という伝説の起業家がいる。新日本製鐵で定年まで働いたあとにシリコンバレーに移住し、そこからスタートアップ7社を立ち上げて6社を渡し、その次の1社、スプルース・テクノロジーをジョブスと直接交渉してアップルに売却した人物。

曽我氏曰く、道なき道であっても果敢に「スタート」し、短期間で成果を「アップ」という覚悟で挑んで以内なら、それはスタートアップはないという。
Y Combinator(YC)の創業メンバー、ポール・グレアム氏も「スタートアップは急成長するようにデザインされた企業だ。高いテクノロジーを持ち、VCから投資を受けていても、イグジット戦略を持っていても、急成長していなければスタートアップとは呼べない」と曽我氏と同様の指摘をしている。

1-2の後半、続きはまた明日!



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