TWILIGHT ZONEのはなし

「YOU SPIN ME ROUND」をDVDで観てから、ずっとずっと憧れていた“LOVE LETTERZ MADE”に、やっと行くことが出来ました。

お二人とも声を飛ばすことなく、大きなトラブルもなく、全力で千秋楽まで駆け抜けたそうで。届くかわからないけど、おめでとうございます。お疲れさまでした。どうかゆっくりお休みになってください。

本当にめちゃくちゃ楽しくて、こんな遠いところに住んでいなかったら全通したかったくらい、何度も何度も観たい、永遠に続いてほしいとすらと思える公演だったんですけど、映像化はしないそうなので……(内容的に無理なのはわかっているけれど!) 自分が忘れないために、何度でも思い出せるように、文章にしておこうと思いました。

というわけで、めちゃめちゃ長くなるうえに、えげつないネタバレをかましていきます。配慮する方面が無いと言えば無いのですけど、一応ね。それでも良いよ!という方は、スクロールしてください。








私、本当にラブレターズのコントが好きなんですよ。前にもちょっと書いたんですけど。

冒頭で述べたDVDも、前々回の単独「SIREN」のDVDも、観た時に溢れる何かに押し流されるような感覚を覚えました。その何かとは、感動、愛情、純粋さ、理不尽、性、皮肉、アブノーマル…色々なものが複雑に絡み合った、真っ黒くて大きな波のようなもので。だから見る度にすごく体力を使うんですけど、それがものすごく快感で。何回も何回も見直しては、いつも深いため息をついていました。

そして、「この世界に、直接触れてみたい。」と思うようになりました。

だからめちゃくちゃ期待してたんです。信じられないくらいハードルを上げてたんです。感想ツイートは一切目に入れないようにして、今までのDVDを脳内で反芻して。公演直前は座席が1列目だったこともあり、手がとにかく震えてスマホが持てないくらいの緊張に襲われました。

しかし、そんな高い高いハードルを、2人は棒高跳びで超えていきました。想像よりも遥か上を、それはまあ軽々と。

会場に入って一番最初に驚いたのは、舞台装飾があったことでした。私が見ていた彼らのライブはいつも、だだっ広いステージにスクリーンがあるだけのものだったから。錆びたフェンスと木の板と、そこに絡みつく蔦。青い照明に照らされて、イケイケのBGMが流れていたそこは、私の知っているラブレターズのライブじゃありませんでした。

でも始まったらすぐ思いました。「私の知ってるラブレターズだ!!!」と。

遠足ではぐれてしまった小学生の男の子と、真っ白な四角い箱からこれまた真っ白な顔を出しただけの何かの出会い。これが最初のコント。まじで世界観な!!!

でもこのコントすごかったんです。何て言うか、これ自体がオープニングムービーみたいな演出で。2人のやりとりと同時に、疾走感のあるオシャレなBGMが流れ、それと同時にスクリーンではこれまたオシャレな映像が。あああ~これだけゆっくり見たい!!と思いつつ、舞台でのドタバタSFからも目が離せず。と思えば、塚本さん扮する真っ白い男の台詞がスクリーンに映し出されたりと、きちんと両方に目がいくようになっていて。とにかく疾走感のコントでした。

でもネタの内容だけで見ると、ラブレターズではちょっと珍しいような、昔のネタっぽいような気もしたので、もしかしたら演出ありきで出来たのかなあとか、思ったり。私が知ってる中で一番近いのは覆面高校生・平田君と先生のコントかな。でも1番今回のタイトルっぽかったです。

2つ目。怪談番組のTVディレクター(塚本さん)のところにやってきたおじさん(溜口さん)。クレームだと思ってびくびくしてたら「いつも見てます」とおじさん。ファンならよかったと、先週の日本人形の回の話を切り出すおじさんに対してあれ好評だったんですよ、怖かったでしょ、なんて言ったら、何と、そのおじさんは300年続く人形屋さんの人形職人で、「お宅らが長年作り上げてきたイメージのせいでこちとら困ってるんです。法廷で会いましょう。」と。

この時点で、もう何回裏切るんだよ!すげー!って感動してました。冒頭だけでこんな裏切るー!?って。

でもこの後に、実はこの人形職人のおじさんも日本人形が怖かったことがわかって(また裏切り!)。「作りかけの200が一番怖い」には確かにそうかも!って思った。そして話はおじさんの人形屋としての苦労に変わっていきます。「店たためばいいじゃないすか!」「無神経かよ。」のやりとりが好きでした。

でも、オチがすごい切なかった。「リアルに考えて、600体のその人形、42万で買い取りますよ。」「くぅ~(泣)」おじさんがんばれ。

そして幕間!映像じゃなかった!1人が引っ込んで、セットが転換している間、残った1人がコントを続けてるんです。そこに次のコントの人が出てきて、少しやり取りがあって、入れ替わりでもう1人が着替えるっていう、もうほんとに、ずっと楽しいシステム。天才かよ!と思った。

そしてこのシステムのいいところは、前のコントのキャラであればそのキャラクター1人1人のより深いところが見れるし、次のコントのキャラであればもうそこでどんなキャラかが少しわかってもらえるんですよ。だから次のコントを見ていて、ああなるほど!ってなったりする。それがすごく楽しかった。

3つ目。これが私は1番好きなコントだった。塚本さんがいつも言う、「友人の友人くらいにこんなやついるかもっていうのを作りたい」っていうのが、まさに!って感じのネタ。

大好きな飼い犬のペルがいなくなってしまった溜口さんと、その親友の塚本さん。悲しみに打ちひしがれる溜口くんを思って、たくさんのビラを刷って、近所の人に声をかけて歩く塚本くん。友達思いのイイ奴なんですよ。

ただ、動物に対する興味が0なんです。「ぜろなの…動物がぜろなの…」これはための好きだったセリフ。

友達を思う気持ちはすっごくあるから全身全霊で協力してくれるんだけど、動物を思う気持ちが0だから、「似た新しいやつ、ペットショップに探しに行こう。」とか「8万したんだもんな、原付無くした感じだよな。」とか言っちゃう。だから溜口くんも怒るんだけど、「わかんねえんだから仕方ねぇだろうが!!」って逆にキレられちゃう始末。サイコ野郎だ…!

と思って溜口くんが「お前にとってはあれか!桃太郎のお供の犬・猿・雉は、武器・武器・武器か!!」っていうと、「友達だろ…?桃太郎にとって犬・猿・雉は、大事な友達だろ…?」と。そう、忘れてたけどこいつはイイ奴なんです。友情が絡むと尚更。

最終的には「俺じゃダメか?」って、代わりになろうとまでしてくれる。まあ、散歩とか世話ができりゃ犬じゃなくてもいいっていう、相変わらず動物0の発想の上での提案だけど。でも最後には無事にペルが見つかった連絡が来たところで、ペルさながらに携帯を奪い、口にくわえていなくなるという可愛らしいオチでした。ため「お前はペルじゃない!!!!」

4つ目。父ためと、息子塚本。いつものメガネに学ランのガリ勉ルックの息子が、東京に出てミュージシャンになりたいと。もちろん父親は反対するんです。そんなの上手くいくわけないだろうと。そして息子の携帯が鳴る。気まずそうな顔をして、出ない息子。そこですかさず父親は言うんです。

「お前はそもそも楽器だって何も出来ないだろう。こんな時に携帯の電源も切れないようなやつはダメだ。」

しかし、なかなか鳴り止まない着信音。出なさい、といっても出ない息子。ん?と思ったところで、急に着信音にアレンジが加わり始める。ん??ん????と思ってたら、息子が突然その音楽に合わせて歌いはじめたのです!

ラップを!

出、出たー!ラップ!塚本さんが好きなだけのラップ!って感じでした。正直歌詞はほとんど覚えてないけど! でも綺麗に韻を踏んでて、ラップもどきとかではなく、ほんとにラップでした。(最後のトークでここの歌詞を飛ばしてて、4小節くらいフリースタイルだったって言ってた。ほんとにすげえ!!)

それに対して戸惑う父。「My father Fuck Men~」「やめなさい。ファックメンはやめなさい。」このやりとり4回くらいあった。すごく好き。

でも全然やめない息子。しびれを切らしたお父さんは、息子からマイクを取り上げました。そして、息子に対して説得を始めます。

歌で。

もうね!!溜口さんの歌がうますぎる!!知ってたけど!!テノール歌手みたいな歌い方するから、説得力もあるし。そして始まる、息子のラップとお父さんのテノールによるバトル… あんまり覚えてないけどお父さんの「公務員じゃダメか~月30で十分だろ~(ニュアンス)」みたいの好きだった。

そして熱いバトルを繰り広げた末に。
息子「お父さんも東京行く?」
父「ヒィーア!!」
最終的には会社まで辞めてきて、息子を引かせてしまったお父さんでした。

ここのつなぎがすごく好きだった。お母さんに上京の許可をもらいラッパー感あふれる喜び方をしているところで、ばったり友人の溜口くんに遭遇。「おお、久しぶり。部活もこないしさ、どうしたんだよ。」と心配するため。そのために対して「…Fuck you!」両手の中指を立てて言うんです。ラッパーモード抜けてなさすぎかよ。そして立ち去る塚本くんに「…部活来いよ~」いいやつかよ。

その溜口くんに今度は電話が。お父さんに頼まれてスタバにおつかいにきているのです。これがまあスタバ慣れしてない息子で。

「お父さん頼んだのなんだっけ??えーっと、ホワイト?チョコラティ?クランブル?ココ?グランデ?え?フラペチーノ?・・・・6個ってこと?6個ってことなの?」
「う~~ん…もうホットコーヒーでいい??ホットコーヒーでいいね??」

か、かわいい~~。

5つ目。その息子と父親のコント。息子がおつかいから帰ると、父親はうたた寝をしていました。それを起こそうと近寄ると、目に入ったのは机に広げられた大量の書類。息子は慌てて父親を起こし、問いただします。

「これ、全部違う人の履歴書だよね?でも全部、お父さんの字だよね?」

実は、とても真面目なゆうちょの職員のお父さんには、すごい趣味がありました。

スタバが大好きでスタバの店長になりたい。でも、さすがにゆうちょ職員にそれは難しい。だから、脳内でスターバックスお父さん支店を開店し、ネットで拾った写真からその人の架空の履歴書を作成。そして、その人たちと脳内で面接をしていたら、寝落ちしてしまったというのです。

これがバレた時のお父さんの台詞が秀逸で。
「お父さんな、これがバレたとかそんなことより、やっとこの楽しみを人に話せる喜びが大きいんだよ!!」
わ、わかるぅ…。人に言えない趣味ってそうよね…。

でも、このお父さんの何がやばいって、その架空の履歴書の細部にわたる作りこみもやばいのですけど、片っ端から不採用にするところ!妄想なのに!都合のいい社員だけ作ればいいのに。「でも週末入れないから不採用です。」ってバンバン落とすんです。一体どんな人が雇われているのか、お父さん支店…。布石のおばさんと、向井理を元自衛隊員の権藤博康として面接して落としてたのめっちゃ面白かった。

そしてここのつなぎが、部分的に言うと2時間で一番好きでした。
スタバ父と入れ替わりで出てきた、学ラン姿のため。模試のせいで彼女との待ち合わせに遅れてしまったんです。彼女はすごく怒っているようで。

「ごめん!許して!ほんとごめん!」
「ええ?10回クイズ??あれ嫌だよう…恥ずかしいよう…」
「やったら許してくれるの?…うん、わかった。やるよ…」
「I love you,I love you,I love you…(めっちゃいい声)」
「ハイ!10回言ったよ!………ひじ!」
「これなんだよお~~~なんの時間だよう~~~~」

やべぇ彼女に翻弄されるため!!かわいい!!!

この後の6つ目のコントが本当にヤバかった。そりゃ映像化出来ないわっていうコントだった。

さっきの生徒と、塚本先生のコント。塚本先生は、高校受験を目前に控えたところで成績がガクンと下がり、何だか思い悩んでいる様子の溜口くんを呼び出しました。すると溜口くんは、「2個下の彼女がいるんだ。付き合ってもう半年になるんだけど…」何だ~可愛い話じゃないか、って先生。でも、溜口くんの悩みはそんなものではなく。

「…求めて、くるんだ。肉体関係を…。」

経験豊富な中1の彼女に迫られ、童貞なのに意地を張って経験があると言ってしまい、どうしたらいいのかわからない。というのがための悩みでした。そしてついに、先生にお願いするんです。

ため「先生!僕にS○Xを教えてください!」
先生「ああ言っちゃった!」

この後この台詞のバリエーションだけで1分くらい持たせるすごい時間がありました。ためが壊れてしまいそうだった。「S○X先生!」が好き。

でもこの後、先生も童貞だったことがわかるのですが「たらふく映像見てます」という言葉を頼りに、ヤンキーが屋上で遊んでいたシャチの浮き輪で実践教育がスタート。彼女のかよちゃんに見立てたシャチを操る先生の顔はあまりに真剣で、さながらそれは競艇選手のようでした。

まあそれはそれは色んなシミュレーションをするんですけど。
「五○丸ポーズの手元を凝視する」に関しては怒られるぞ!と思った。

先生がために童貞指摘された時の吹っ切れ方もすごくて!
「別にいいけどね!別に!別にいいけどね!」
「ハイ内申点下げまーす。」
「国語1にしまーす。」
ここだけ抜粋するとすごい最低な大人だな!

あとかよちゃん中1だって言ったのに、「甘めのカクテルでベロベロにします。」って言っちゃう応用力の無さが愛おしかったです。

7つ目。これが最後のコント。コントっていうか、もはやエンターテインメントっていうか、アトラクションだった。

舞台は文化祭を控えた刑務所。看守の溜口さんと、模範囚の囚人番号24番。この24番が突然提案をするんです。

「文化祭で脱出ゲームがやりたいです!」

脱獄される!と思った看守はもちろん止めます。けれど24番はあくまでゲームをプレイするのは我々ではなく客人であり、自分たちは運営側だから、絶対に脱獄はしないと必死に訴える。偶然通りかかってその話を聞いていた所長は、その熱意を買い、彼に許可を出しました。

そして文化祭当日。囚人たちによる脱出ゲームをプレイすることになった看守。24番ではなく“TKプリズナー”として“囚人の館”に君臨する塚本さんの声に導かれて、1つ1つ謎を解いていきます。

これほんとにすっっっっっっごかったんですよ!!!!!!

まず、謎自体のクオリティーがめちゃくちゃ高かった。
難易度はそこまで高くはなかったですけど、きちんと考えないと解けない、質のいい問題だと思いました。

それに、あくまでコントの一部だから解くのに時間がかかりすぎてもダメだし、難しいのに看守がサクサク解いちゃったらお客さんは置いていかれちゃう。だからって簡単すぎたら面白くない。ほんとうに丁度いい難易度だった。作家さんに頼んだと聞いて納得でした。

そして、お客さんも一緒にそれを楽しめたんです!

会場に入った時に配られてたんです、暗号の紙。ずっと何だろうって思ってて、脱出ゲーム……ってなった時にこれか!??って。そしたらゲーム中盤で、全く同じ用紙の大きいものが舞台上に登場して。それにマジックを持って対峙する看守さんと同じように、私たちも暗号とにらめっこ。

そして何より溜口さんが演技派なんですよ!多分そう何問もは問題用意できないはずだから、もう何回も解いたはずの暗号のくせに、まあそれはそれはめちゃくちゃ焦るんです。

そして言うんです、私たちに。
「黙ってないで教えてくれよ!」って。

それ言われちゃったら、お客さんだって助言せずにはいられないから。あちらこちらから暗号のヒントが飛び交い、それに促されるように問題を解いていく看守……もう、すごい一体感でした。ほんとにみんなで遊んでいるみたいだった。

でも看守さんすごい早とちりするし、うだうだ言わずに解けばいいのにダダこねて時間無駄にするし、そういうコントとしての笑いどころもきちんとあって。最後は一瞬、えっこれこんなオチ……?と思わせといて、ほんわかするような愛らしい結末。

最後にふさわしい、すばらしいコントでした。

そして、相変わらずオシャレなエンディングムービーの後に、2人のちょっとしたトークがあり。

約2時間の公演はあっという間に終わってしまいました。

改めて、大好きなラブレターズのコントを間近で見て、コントってやっぱり演技力がモノを言うのだと思いました。
私は2人の演技でそれぞれ好きなところがあって、そこを中心に見ていたから、そう思うのかもしれないですけど。

塚本さんは、目がすごいんです。とにかく。
そのキャラクターとして、少しの雑味もない目なんです。

今回は先生と囚人が顕著だったかな、と個人的には思います。先生がシャチを操縦する時のあの異常なまでに真剣な目も、「ぶってください!」と看守に頬を差し出す24番の自尊心ゼロの服従の目も、目に焼きついて離れない。それだけ印象的で、キャラクターとしての説得力がある目でした。

溜口さんは、表情と声と動きの幅。
恐らくそれをまとめて演技力というのでしょうけど。

本当に器用な方だなあと思いました。
何でも演じられる人なんだと。

表情もコロコロ変わるし、地声の音域が広いからキャラによって声もガラッと変えてくるし。飛び跳ねたり転がったり、大きな動作も出来る大胆さもありつつ、細かいちょっとした動作も気を配ってるんだろうなと感じる丁寧さ。

あと、私はいつも「ためかわいい!ためかわいい!」と言いまくってるんですけど、実物も本当に可愛かったです。サラサラの髪の毛と大きな目が画面越しに見ていたまんまでした。

以上が今回の公演の感想です。

色々掻い摘んでもこれだけの文章を要する密度の公演だったのに、年内にも単独やろうって言ってるんですよ、あの人たち。

そういう化物じみた現場主義感が、ラブレターズだなって思いました。

どうか次の公演も行けますように。

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