さて、就活の話をしようか

 2024年3月3日。修習の事前課題とかサークルの引き継ぎ作業とか卒業旅行の準備とかに追われてるよ。でも、質問箱で要望があったから、note記事を書くよ。求められるって嬉しいね。

はじめに

 この記事を書くにあたり、まずお詫び申し上げます。偉そうな口調でつらつらと意見を述べていますが、全部、私が失敗から学んだことです。私が今入所予定の事務所は、(少なくとも数回事務所を訪れた限りでは)自分の雰囲気によくマッチしており、先生方の人柄もよく、将来的に所属弁護士の一人として活躍していけそうだな、と思えるところです。そういう点で、自身の就活においては最良の結果を迎えることができたものと自負しています。しかし、今回はあえて過程に着目することで、これから事務所就活をされる方の参考となることができればと思い、投稿することにしました。

求める読者像

 この記事は、私が就活を始めてから内定をいただくまでに感じたこと、学んだことが内容となります。個々人のキャリアプラン、志向、置かれる状況によって、就活のやり方やスケジュールも異なってくるので、まずは私の経験談が刺さる読者像を絞っていこうと思います。

企業法務弁護士を志望している人

 他の多くの法曹志望者がそうであるのと同様に、私も企業法務弁護士を志望しています。個人法務を(メインで)志望される方は、就活の時期が後ろ倒しになるケースが多いと思いますので、スケジュールの面ではあまり参考にならないと思います。

中堅ロースクールの在学生あるいは受験生で、司法試験受験前の人

 上位ローとは、東京一慶を指します(異論は認めます)。私は早稲ローの学修環境は非常に良いものと感じていましたが(今後投稿予定の「ロー生活を振り返って 総論」でべた褒めしたいと思っています)、就活に関してだけは、(企業法務弁護士を目指すなら)上位ローと比較して若干見劣りします。中堅ローに在学し、あるいは受験しようとしている方が本記事の主なターゲットになります(当然予備合格者は規格外のため除きます)。

司法試験は就活の一部

 さて、求める読者層を絞ったところで、私が一番伝えたいことが、見出しのコレです。読者の中には、司法試験を「資格試験」と捉えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。確かに、司法試験は「法曹資格付与のため……司法試験法に基づいて行われる資格試験」です(Wikipediaより引用)。しかし、現在の弁護士業界の構造を鑑みるに、真に資格取得のみを目的として司法試験に臨むのは、最早難しいように思えます(というか、司法修習生考試、通称・二回試験の方が「資格試験」なのではないでしょうか)。
 では、私が司法試験を何だと思っているのか、順を追って説明します。

2つの採用試験の側面を有する「司法試験」

 司法試験は、法曹資格を得るために避けては通れない「資格試験」であると同時に、2つの「採用試験」の側面を有しています。1つ目は、司法修習生採用選考の要件としての、採用試験。2つ目は、法律事務所の採用選考の前提としての、採用試験。
 このうち、前者については、法曹を志す者なら誰もが了解している当然のことです(裁判所法66条1項)。大部分の方が修習生として採用されるため、あまりこの側面がフォーカスされることはありません。
 それに対し、後者、これが重要なのです。すなわち、「司法試験に受かっているか否か」によって、事務所選考が左右されます。いかに優秀であろうと、弁護士資格がなければ弁護士業務ができない。この「弁護士業務ができる」という形式的要件を満たすため、司法試験には受かっていなければいけません。

司法試験をサンドイッチする選考スケジュール

 すでに多くの方がご存じの通り、五大や大阪四大、準大手といった人気の法律事務所を目指すならば、ロースクール1年目の夏から就活が始まります(予備勢も考えたら遅いまであるかもしれません)。また、多くの企業法務事務所も、司法試験の在学中受験期である2年目(未修の方であれば3年目)の夏前までに、サマー/オータム/(ウィンター)/スプリングの各期クラークや、採用説明会などがあります(ウィンターは多くの場合予備合格者向けかな?)。注意するべきなのが、司法試験の直前期、6月や7月に説明会を開く事務所があることです。試験のことで頭いっぱいなのはそうあるべきなのですが、行きたい事務所がこの時期に説明会を開催していたら就活にも頭を割かなければなりません。

 司法試験が終われば、先程挙げた大手の企業法務事務所の採用選考も佳境に入ります。大体、9月にはほぼ終わっているのではないでしょうか。もちろん、合格発表は11月ですから、「合格推定」によって内定を出していることになります。中小規模の企業法務事務所もこれに続くような形で、合格発表までに採用選考を終える事務所もあれば、三弁護士会合同就職説明会(通称・三会合同)に参加し、本選考が始まる事務所もあります。いずれにせよ、修習が始まる頃にはほとんどの事務所が選考を終えているように思われます(ひとつ下の期と同じ時期に就活をするという手は残されていますが)。

結論:企業法務を考えるなら、ある程度の手ごたえを感じるレベルで司法試験を終えられることが必要

 ここで、見出しのような結論が導かれます。どういうことかといえば、司法試験を終えた段階で、就活をするメンタルになっていなければならないのです。先述した通り、事務所選考の前提は司法試験合格であり、合格発表以前には事務所側は就活生の合格推定を見ています。それなのに、全く受かる見込みもなく司法試験を終えると、変な構図が出来上がります。「合格する見込みのある就活生を採用したい事務所」と「合格する見込みがあると思っていない自分」。当然、スタートラインに立てる気にもなれず、受験後の就活がおろそかになります。ESを書く気力が起きなくなり、その質も低下、書類で落とされ、それで萎え、気づけばエントリーした事務所すべてで落選するという負のスパイラルが出来上がります(全部私の経験です)。私の場合、10月まで就活に本腰を入れることができませんでした。その間に、多くの事務所における主戦場に立つ機会を喪失したのだと思います。

 なにも、上位合格を狙う必要はないと思います。というか、上位合格は狙ってできるようなものでもない気がします(私のレベルが低いだけかもしれませんが)。ただ、フィフティーフィフティーの状態くらいにはもっていきたいものです。すなわち、「受かってるかもしれないし、落ちてるかもしれない。半々」と澄ました顔で言えるくらいには、論文で手ごたえを感じておきたい、ということです。その上で、早々に結果の出る(そのために合格推定の客観的指標となるとともにメンタルにモロ影響する)短答の点数も、140~150取っておくとなお良いです。私の同期で140以上取っている人は、皆その時期には澄ました顔をしていました。

司法試験の位置づけを抑えたうえでやること

 就活についての記事であるにも関わらず、ここまで長々と司法試験の話をしてきたのは、司法試験受験生にとって、司法試験と就活が切っても切れない関係にあるからです。企業法務弁護士を志望する以上、「結果的に合格できてよかった」ではなく、「合格できそうな答案を作れてよかった」でなければならない。そういう意味で、「司法試験は就活の一部」なのです。

 では、これを踏まえて就活ではなにを重視するべきか。本題がおまけのようになってしまった感は否めませんが、いくつかポイントを列挙していきたいと思います。

事務所選考への参加

 まず、司法試験を受ける年の前年(~当年春)も、各期クラークや事務所説明会には積極的に参加したほうがいいと思います。事務所や、その事務所が扱う業務分野に少しでも関心があれば、その時点で選考企画に参加するメリットがあります。本選考で面接官と初顔合わせになるより、自分の為人を知ってもらったうえで本選考に臨むことができれば有利なのはもちろんのこと、分野やキャリアに対する解像度が高まり、ESや面接での受け答えの密度が濃くなります。ちなみに、私が参加したスプリングクラークでは、先生が提出したESの講評をしてくださったこともあります。
 受験期直前の説明会は、勉強の進捗具合によって参加の当否が分かれますが、本当に行きたい事務所であれば差をつけるチャンスですし、何時間も削られるわけではないので参加してもいいと思います。いずれにせよ、アットリーガルやひまわり求人などを定期的に観察し、興味のある企画にはすぐにエントリーできる状態にしておくことがベストです(私は受験期に全く気付けませんでした)。

履歴書(ES)

 履歴書は、エントリー開始後(事務所がホームページに採用情報を掲載してから)遅くとも2週間以内には出すべきです。弊ローのホームページで、OGの方も「できれば1週間以内に」とメッセージを残されています。時間が経てば経つだけ、書類選考で通る確率も下がっていくという感覚を持つ必要があります。

 形式面では、「日本語として不自然な文章でないか」「フォーマルな言葉遣いになっているか」「誤字脱字はないか」「聞かれていることに応えられているか」「結論を冒頭で端的に述べることができているか」がポイントになります。この辺は、ぜひ身近な人に添削してもらったほうが良いです。稀に手書きでの提出を求める事務所もあるようですが、一般にはPCに慣れていないのではないかという印象を与えてしまうため、PCで入力すべきです。

 内容面では、(特に志望動機において)ストーリーが重要になります。ESを書く際、提出先事務所の理念、業務内容、求める人物像を把握する必要はありますが、これについて、詳細に理解していることを示す必要はないようです(まだ実務についていない手前、ここを深堀りしても理解の浅さが露見するだけになります)。むしろ、事務所は新卒採用において学生の為人を見ているため、これまでどのような経験をして、特定の業務分野に興味を持ったのか、具体的な法想像を目指そうと思ったのかといった、学生のした「経験」の内容と、その経験と結論との「因果関係」が知りたいのです。ここで、うまくストーリーを作る(創作という意味ではなく、自然な文脈としてつなげられるという意味)ことができれば、説得力のある文章が出来上がります。結論(私が貴所を志望した理由はAだからです:端的に)→経験(Bをしていました)→因果関係(Bに取り組むなかでAだと思いました)→結論(貴所はAなので志望しました:詳しめに)という構成になるのではないでしょうか(場合によりますが)。

 なお、字数制限がない場合、あるいは書式自由の履歴書を提出する際、私は「志望動機」と「自己PR」はそれぞれ800~1000字くらい書くようにしていました。もちろん、分量が多すぎると、多忙を極める弁護士先生の負担となるため避けるべきですが、かといって少なすぎると志望度が低いと思われかねません。フォーマットは自由に改変していいので、枚数を増やしてでも書くべきだと思います。

面接

 一般企業の選考と変わらない点として、ネガティブチェックに引っかからないようにすることや、一般的な就活マナーを守れることが大事です。また、面接を担当される先生方から名刺をいただくことも多いので(就活生の方から渡す必要はありません)、名刺の受け取り方も心得ておく必要があります。

 企業法務を志望すると、多くの場合、「企業法務」という分野の理解度が問われます。そもそも、企業法務とは企業活動に関する法務全般であるため、企業法務を志望しています、というだけでは解像度が低すぎるのです。企業法務のうち、どの分野に携わってみたいのか、どの分野に関心があるのかも、2、3個答えられるようにしたほうがよいでしょう。

 たまーに突拍子もない質問がされることがあります。私が一番印象に残っている質問は「自分を動物に例えると何ですか?」でした。まあ正解な動物などあるはずもないですが、即興で、その事務所が求める人物像とリンクする理由付けとともに、何かしらの動物を答えることができれば成功だと思います。いずれにせよ、これは対策できるものではない気がします。

 逆質問も重要です。面接ではこの時間も必ず設けられるので、3つ4つは用意して臨むとよいでしょう。私は事務所選びの際に、風通しのよさ、意見交換のしやすさを重視していたので、事務所の雰囲気であったり、意見交換の機会、制度、ツールについては必ず質問していました。

語学力やその他の資格

 この点は、事務所によって重視するかどうかが異なります。応募要項や説明会で言及されていることもありますので、適宜確認してみてください。
 とはいえ、司法試験受験前ではその合格(の自信をもって終えられること)が第一です。TOEICやTOEFL、簿記等の資格があれば選考で多少なりともプラスに働くことは間違いありませんが、優先度は司法試験合格に比べると当然低下します。よほど志望度の高い事務所で要求されている場合を除いては、司法試験の勉強に専念するべきだと思います。

おわりに

 私も就活中、「就活はご縁だから」とよく言われました。確かにその通りではありますが、決して運だけで決まるものではないと思います。普段の努力によって、いざ運が巡ってきたときにその運を掴みとれるだけの力を養うことが肝要だと思っています(「運も実力のうち」とはこういう意味ではないかな、と考えています)。多くの事務所、多くの先生方に出会い、その場その場で自身を見てもらう努力をすることで、ご縁に巡り合える確率も上がるのではないでしょうか。

 さて、やることが山積しているので、現実逃避はこのくらいにしようと思います。次回は当初の予定通り「ロー生活を振り返って 総論」を投稿しようかな。
 それでは、また。

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