ベンチは必要か?流動空間と滞留空間について考える。

 私たちは3次元空間の中で生きています。

無意識のうちに周囲の空間を認識して生活しています。あまり意識をしていなくても居心地の良し悪しを感じ取ることができます。


空間の本質を考えるとざっくり2つに分類することができます。

それは、流動空間と滞留空間です。

言い換えるなら、絶えず流れのある場所とよどみのある余裕がある場所です。

 

これはどこにでも存在します。

家の中にも動線と呼ばれる移動するための場所とくつろぐ場所があります。

公共施設の中にも通路になる場所と立ち止まったり座ったりできる場所があります。

建物の外でも、例えば公園にも移動する場所ととどまる場所が存在します。

 

いかに効率よく人を運ぶかに重きを置く巨大なターミナルでない限り、多くの場合はそこにいかに留まるかは重要なテーマです。

 

日本では超高齢化社会が進み、世界的にもノーマライゼーションの考え方が一般化してきています。

個人所有の建築ならまだしも、公共性の高い空間では今まで以上にいかに快適に滞留するかは大きなテーマです。

 

しかし、問題は複雑です。資本主義社会において収益性とは切っても切り離せない関係にあるからです。

滞留空間は状況によっては何も生み出さない空間とも捉えることができてしまいます。

そうなるとただの“無駄な空間”となってしまいます。

 

では、滞留空間は不要ですか。効率の良い経路だけあれば十分でしょうか。

 

人間はそれほど単純ではありません。

私たちは人間にロボットのような効率だけを求めるということができないことを知っています。

 

流動・滞留の定義

ここで、これから公開していく記事で使用する言葉の定義をしておきたいと思います。

今後、登場する用語はこのようなイメージで進めていきたいと思います。

流動空間 立ち止まると他の人や物の邪魔になってしまう空間。絶えず人や物の流れがある空間。場所と場所とをつなぐ通路などがこれにあたる。

滞留空間 立ち止まることを含め、止まることのできる場所。流動空間の対局にあたる。

◆滞留空間は留まる長さによって以下のように分類できる。

一時滞留空間 独立してまたは流動空間に付随して存在する立ち止まれる空間。

・着座滞留空間 一時滞留空間にベンチ等が置かれ座って留まることが可能となっている空間。

・滞在空間 ベンチのみならずテーブル等も設置されていたり、ベンチがソファ等の形状によりの長い時間の滞在が可能な空間。 

空間構成において、ベンチ等への着座はひとつのキーになってきそうです。


イメージとしては

流動→一時滞留→着座滞留→滞在

という感じでしょうか。


ということは、ベンチ(厳密にはその周囲の空間も含む)は滞留空間の中でも着座滞留が可能な空間と位置付けることができそうです。


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