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【Ippuku Stand】 「糖質より、たんぱく質より気をつけるべき栄養素」 9月の店長:管理栄養士 柴田

こんにちは。株式会社iCAREの柴田(@sankaku)です。
iCAREでは営業をしていますが、前職では管理栄養士をしておりました。

今回は、先日「Ippuku Stand」の店長をさせていただいたので、その内容をレポートします。
Ippuku Standとは、月替わりの店長が健康について豆知識をシェアし、みんなで健康について考えつつ、コーヒーでちょっと一息つき、普段関わりの少ない他部署の人とも話すきっかけになる、そんなイベントです。
保健師などの産業保健の専門家で構成されるEmployee Successチーム×People部が月1回開催してくださっています。

前回はキャリアコンサルタントの資格を持っている小澤さんが店長でした↓


今月のテーマ

こんな感じで発表してました

糖質より、たんぱく質より気をつけるべき栄養素、それは多量ミネラルに分類される「ナトリウム」です。
馴染みのある言葉でいうと「塩分」というやつです。
今回Ippuku Standで発表した内容を端的にいうと、「ほとんどの人は摂りすぎてるから、塩分控えた方がいいよ〜!」というものでした。

みんなのためにコーヒーを淹れてくれているしのさん(遠目の写真しかなかった)

Ippuku Standでは毎回バリスタ保健師のしのさん(@baristahokenshi)がコーヒーを淹れてくれます。
たまたまこの前日まで地元に帰っていたので、コーヒーに合うかと思い、お土産のお菓子を用意しました。

実はお菓子にも多少塩分が入っていたりするんですけどね。笑
口にするものは幅広く塩分が含まれていることに気づくきっかけになっていればいいと思っています。

余談ですが、お菓子はハッピーな気持ちになるという心の栄養になり得るので、食べ過ぎはよくないものの、全く食べてはいけないものとは私は考えていません。

今月のテーマをさらに深ぼる

今回の発表ではあえて大学講義レベルの難易度にしました。
理由は3つあり、1つは私が易しい内容を伝えることに飽きていること。
2つめはiCARE社員はそこそこヘルスリテラシーが高いので平易でありきたりなことを言ってもつまらないだろうということ。
3つめは、ふだん保健師さんと会話する中で「栄養について教えてほしい」と言われることがしばしばあること。
せっかくなら、保健師さんでも面白いと思うレベルで話せるといいかな〜と考えておりました。
これを機に塩分についてまとめ直したので、下記にその内容を記します。

なお、今回の内容は日本人の食事摂取基準(2020 年版)を参考にしています。
この内容が完璧に習熟できていれば読む必要はありません。

塩分とは

「塩分」は通称であり、厳密な用語ではありません。
「減塩しましょう」と言われた場合に減らすべきは「ナトリウム」です。
我々が普段の食事でナトリウムを摂取するとき、大抵は食塩(塩化ナトリウム)or食塩を含む調味料がほとんどなので、「食塩相当量」と表すことが多いです。
普段の食事で摂取するナトリウムを含む化合物はグルタミン酸ナトリウム(味の素でおなじみの旨味成分)なんかもあるのですが、簡便性を重視して食塩相当量としているわけですね。

塩化ナトリウム(NaCl)は、質量数が23のナトリウム(Na)と質量数が35.5の塩素(Cl)からなる分子量58.5の化合物であり、食塩相当量は、ナトリウム量に換算係数である2.54(=58.5/23)をかけることで求められます。

食塩相当量・ナトリウム計算式
食塩相当量(g)=ナトリウム(g)×58.5/23=ナトリウム(g)×2.54

こういうの化学の授業でやったことある気がする

ナトリウムの吸収と排泄

【ナトリウムの吸収】
ナトリウムは小腸で吸収されます。
小腸のうち回腸では高度の濃度勾配に逆らって能動輸送されますが、空腸ではナトリウムの吸収は糖類の存在によって促進されます。
熱中症の時に塩分と糖を摂ろうというのはこのためですね。

【ナトリウムの排泄】
ナトリウム損失経路は皮膚・便・尿があり、 90% 以上は腎臓経由による尿中排泄ですが、腎臓の機能が正常であれば、腎臓におけるナトリウムの再吸収機能によりナトリウム平衡が維持されて欠乏することはありません。
暑い日に「今日は汗をかいたな」と思っても、案外汗から塩分は損失していないということです。
残念。
(もちろん熱中症の場合は別)

食事摂取基準によると、成人の推定平均必要量は600 mg/日です。
「推定平均必要量」という言葉が初めての場合、意味がわからないですよね。
日常生活で滅多に使わないので覚える必要はありませんが、50%の人が必要量を満たす量(50%が欠乏、50%が充足)で、科学的に根拠があるものを指します。
ちなみに、「推奨量」はほとんどの人が必要量を満たす量(97.5%が充足)のことを言います。
600 mg/日に先ほどの換算係数をかけると、食塩量は1.5g/日となります。
つまり、半数の人は食塩の摂取がたった1.5g/日で健康に生きていけるということです。
「たった」といっても比較材料がないと分かりにくいかもしれませんが、味噌汁1杯の食塩相当量は1〜2gです。
塩分だけでいうと、味噌汁1〜2杯で十分1日に必要な量はまかなえてしまいます。

食塩摂取と血圧の関係

食塩摂取摂取量が多くなると、高血圧のリスクが上がることが知られています。
佐々木敏「栄養データはこう読む」で食塩摂取と血圧の関係について示されていました。
(ちなみに佐々木先生の本は面白い上、エビデンスが丁寧に記されていて、とてもおすすめです。)

佐々木敏 栄養データはこう読む 女子栄養大学出版より(https://eiyo21.com/book/9784789554596/

1日あたりの食塩摂取量が14gの場合、50代で収縮期血圧が140mmHgに達するのに対し、1日あたりの食塩摂取量が7gの場合70代でもまだ収縮期血圧140mmHgには到達しません。

高血圧治療ガイドライン2019では、「脳心血管過剰死亡・罹患の半数以上はI度高血圧(140~159 ⁄ 90~99mmHg)の比較的軽度な血圧高値の範囲から発生している」と報告されています。
私の周りにも血圧140 ⁄ 90mmHgを超えてる人は多いですが、この値でも脳卒中や心筋梗塞になる人はなっちゃうのです。
こわ。

そう考えると、日々の減塩は将来的な健康に大きく影響を及ぼすので、重要なことが分かります。

食塩相当量の目安

ではどれだけ減塩を心がけるとよいのでしょうか。

現状として、日本人は1日あたり男性10.9 g、女性9.3 gの食塩を摂取しているとされています。
なお、このデータは令和元年の国民健康・栄養調査を出典としており、調査方法の特性上、少ない値で報告されがちなはずで、実際には日本人はもっと食塩を摂取しているのではないかと私は疑っています。

食塩相当量の目安をまとめてみた図

目標として設定されている値はいくつかあります。

WHOの推奨は5g未満でした。
またまた余談ですが、WHOのファクトシートによると、減塩介入の拡大に 1 ドル投資するごとに、少なくとも 12 ドルの利益が得られるらしいです。
このnoteのタイトルを「糖質より、たんぱく質より気をつけるべき栄養素」としていますが、減塩の投資は国家レベルで相当なインパクトがあるはずなので、低糖質ブーム・高たんぱくブームもいいですが、減塩ブームも来てくれたらいいのにと思います。

高血圧ガイドラインでは6g未満と設定されています。
WHOの方が厳しいんですね。

日本人の食事摂取基準の目標量では男性7.5g未満、女性6.5g未満と設定されています。
「目標量」というのは、現実的に目指せそうな範囲で設定している値です。
本来、目標量でも塩分はオーバー気味なのです。
ちなみに、例えばラーメンだと6〜10gなので、スープまで飲み干してしまうと、1杯で1日の目安量を余裕で超えてしまいます。

……私だって激辛部(激辛好きが集まるiCAREのサークル)で蒙古タンメン中本をまた食べにいきたいし、未だ行ったことのないラーメン二郎なんかもチャレンジしてみたいんだけどなあ。

今を楽しみつつ、将来への備えを

今回発表の対象としたのはiCARE社員であり、比較的健康な人たちでした。
しかもiCARE社員の平均年齢は34.4歳(2022年度)と若めです。
若いうちから減塩を意識すれば、50代、60代、70代になった時の健康リスクが少しでも軽減できるはずです。
私は塩分のリスクを知って、ラーメンを食べる時は食べるけど、日頃はしっかり減塩をしていきたいと思っています。
具体的な減塩方法はネットにたくさんあるので、ググってみてください。

最後に

参加者の感想で、和歌山出身の方が「梅干しを食べることが習慣だったけど、塩分が多いなんて知らなかった」とコメントをもらって面白かったです。
地域によって食文化が違うんですね。
また、「私の夫も和歌山出身で、梅干しが好きなんです!」という人もいて盛り上がり、他部署のメンバーの意外な共通点を発見する場にもなりました。

さて、iCAREでは一緒に働く仲間を募集しております。
私のように健康について考えてきたバックグラウンドを持つ人もいれば、健康に興味があって今からチャレンジしていきたいという人まで様々おります。
「働くひとの健康を世界中に創る」に少しでも興味があれば、ぜひこちらのサイトを覗いてみてください。

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