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Pain is inevitable. Suffering is optional.——人生をポジティブに導く運動体「モメンタム」の掴み方

大なり小なり、程度に差はあれど、生きとし生ける全ての人間はストーリーを持っている。

斜め前の席に座る彼女の横顔に釘付けになったり、坊主刈りで白球を追いかける夏に青春を懸けたり、移動時間の全てを英単語の暗記に注いだり、意識的に、もしくは無意識的に選択を繰り返す。

選択を繰り返すなかで、もう未来が見えないと絶望するほどの谷に落ちたり、見渡す限り希望に満ちた景色を山から眺めたりする。

人生は振り子のように往復運動する。幸と不幸を往復し、禍福を反復し、そしてジクザグと之字運動を繰り返しながら、少しずつ前進していく。

その大前提を理解した上で、「誰もが1回目の人生を生きている」という但し書きを目に焼き付けた上で、不幸を遠ざけ幸を身に纏い、禍を跳ね除け福と共生する自分なりの模範解答を書き残しておきたい。

人生をポジティブに導く運動体

視線を自分から外しただけでも、圧倒的な成果を残している人が山ほど存在し、上を見たらキリがないので、自分の口ほどにもない、底の知れた人生を晒すことが億劫で仕方ないが、過去を振り返ってみる。

僕は一度(たった1年)だけ、何をしても人生がポジティブな方向に導かれる感覚を味わったことがある。たとえ、遅刻をしたことでさえもだ。

目の前に順を追って準備される階段を登ることに必死になっていると、今度は順番さえ存在しないランダムな階段がやってくるようになった。それでも、迷いなく、足を踏み外すこともなく登ることができた。そして次第に、準備されなくても階段をつくることができる日もあった。

さながら「フロー」と表現するのが正しい毎日だった。好不調の波は存在せず、苦痛と快楽を同時に享受しすることができた。我に返って立ち止まると、少しだけ視線が高くなっていた。

なぜ、そんな時間を過ごすことができたのか。僕はその当時、人生をポジティブに導く運動体を捕まえることができていたのだと思う。僕の師匠はそれを、「モメンタム」と呼んでいた。

モメンタムはどこにいて、どうやって捕まえるのか

“怒涛”と表現するのがぴったりな、疾走感に溢れた日々が終わってから、もう丸一年が経ってしまう。どこかでモメンタムを逃してしまったらしい。すぐさまにでも捕まえたいが、なかなか捕まえられない。

改めて、あの日々を振り返り、それと出会い捕まえる方法を考えたい。

何が出会いの契機になるのか。多分、入り口は淀みのない覚悟にある。

他者の価値基準を自分から排除し、純粋無垢な夢と目標を掲げてみる。その大小は問題ではなく、雑じり気ない本心かどうかが大切だ。そして、掲げたら、やり切ると誓う。すると、その運動体が現れる。ただ、まだ視野には入ってこない。

そのポジティブな運動体は、ネガティブな表情と他責思考をやけに嫌う。清濁を併せ呑み、全てを機会と捉え、120%の力でフルスイングを繰り返すと、彼らは少しずつ近寄ってくる。

ただ、傲慢な態度をとってはいけない。傲慢さは自責思考を踏み台にして他責思考を積み上げるからだ。やり切ると誓う——人生に楔を打った以上、例外は存在しない。常にその事実を胸に刻んでおく必要がある。

そうやって謙虚さを背負って豪快にスイングを続けると、視界にモメンタムが入ってくる。いや、実際は目に見えないが、そこにいると分かる嗅覚が育つ。

視界に入った瞬間に、そこにいると嗅ぎ分けた瞬間に、事実上モメンタムを掴んだといえる。ポジティブな運動体は、ポジティブな運動体を好む。自分がポジティブな運動体に進化した瞬間に、彼らは突然僕らの中に入ってくる。

そして彼らは、「後をついてくるように」と声をかけ、半歩先を走りはじめる。彼を捕まえ、彼を追いかけて走り続けると、彼が追いかけるモメンタムまで視界に入るようになる。ポジティブな運動体は、ポジティブな運動体を好む。成功体験が連鎖していくフローは、こうやって生まれていく。

モメンタムを追って走る最中は、自分の人生に嘘をつくことが許されない。やりたいことをやり、好きな人に好きだと伝え、行きたいところに飛んで行かなければならない。ポジティブな運動体は、ネガティブな表情と他責思考をやけに嫌い、そして後悔も嫌う。

作家・村上春樹は、月に200Km以上走るランナーとしての顔を持っている。彼が目にしたとある新聞記事に掲載されていた、ランナーがレース中に唱えるマントラが、痺れるほどにクールなので、紹介したい。

Pain is inevitable. Suffering is optional.——痛みは避けがたいが、苦しみはこちら次第

痛みを感じてしまうのは避けがたいことだが、苦しいと捉えるのか、成長と捉えるのかは、本人の考え方次第。

このマントラは、マラソンに限った話ではないと僕は考える。仕事において、人生において、何にでも共通する話だ。

「苦しみはこちら次第」の一点張りで、清濁を併せ呑み、全てを機会と捉え、120%の力でフルスイングを繰り返すと、彼らは少しずつ近寄ってくる。

そして耳元で、「自分の人生のイニシアチブを握っている人は、それが何であろうと魅力的で美しく、勇ましく格好いい」と教えてくれる。


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