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【12】現代は人類が理解できない事象が起こる「魔法の世紀」。21世紀を正しく理解するためにAIの変遷を振り返る #小原課題図書

第13回 #小原課題図書 は、普段あまり触れることのないテクノロジー領域。内容の近い『魔法の世紀』『人高知能は人間を超えるのか』と『メディア文化論』の二つに分けてレポートしていきます。

師匠・リョーさんはテクノロジー領域で記事を書くことが多い。特に日テレ発の人気メディア・SENSORSは立ち上げから従事されています。今回の課題図書にある『魔法の世紀』の著者は、SENSORS(テレビ番組)でMCをされている落合陽一さんであり、アシスタントを務める上でこの領域をある程度押さえておくのは必須です。

AI、AI、とミュース番組やウェブメディアで盛んに取り上げられていますが、「ピンとこない」のが正直なところ。「自分の仕事がテクノロジーに置き換えられてしまうのではないか?」そんなことを不安に思うことはありますが、かといってそれほど問題視していません。ひょっとすると、僕と同じように考えている人も多いのではないでしょうか。

今回は、そうした時代の流れを解説しているこの2冊をもとに、21世紀がどんな時代なのか、AIによって人類はどう変化するのか、この2点を考えたいと思います。

『魔法の世紀』/落合陽一

僕が生まれた1994年は、すでにインターネットが普及し始めていた時代。物心がつく頃にはコンピュータが自宅にありました。特に珍しいものでもなく、検索すれば無数の情報にアクセス可能できることを不思議に思ったこともありません。いわゆる“デジタルネイティブ”にあたります。

ただ、もちろんコンピュータはかつて革命的な発明でした。かつてコンピュータはは暗号読解や弾道計算の装置でしたが、映像を通じて複数の人間が同時につながる媒介、メディアにあり方を変えていきます。これまでの時代は映像を通して人々がつながる時代で、作り出すのに最適な装置でした。まさに「魔法の箱」ともいうべき存在です。

しかしながら、インターネットは同じイメージを共有するディスプレイとしてのあり方から、インタラクティブなつながりを作る装置へと変化していきます。中間媒体を一切介さず、インターネットそのものが直接的なつながりを作るようになりました。

それほどまでに革新的な技術変化が起きているのにもかかわらず、それを当たり前に使っています。Twitterで双方向的なコミュニケーションが同時発生していることに何の疑いも持っていません。この原理を人々に意識させない無意識性こそが魔法であり、インターネットによって誰もがこの魔法のなかで生活し、魔法を使いこなす時代が、落合さんの言う「魔法の世紀」です。

インターネットは人間の理屈では捉えきれない

上記したように、かつては映像を介して人々がつながる時代。しかしながら、インターネットの飛躍的な進歩によって私たちの頭では理解できないような事象がいたるところで起こるようになりました。

VRやARが誕生し、虚構の中で生きる未来もそう遠くはありません。AIをはじめ、コンピューターの加速的な進歩は人間の理屈では説明のつかない次元に足を踏み入れています。しかしながら、これはインターネットの本質をついているそうです。

映像の世紀であった20世紀は、人間が理解可能な理屈を通して世の中を捉える時代でした。現代、つまり魔法の世紀はその逆をいく時代で、インターネットが日常に染み出してきていますが、インターネットの本質を理解している人は非常に少ない。人間には理解できない理屈で事象が発生し、発生したのちに理屈をつける時代へと変化しているのです。

21世紀以前の理屈によって定義される世界観において、映像の中で作り出されていた世界が、現実世界にも見られるようになりました。人間にとって都合のいいように解釈されてきた世界観が崩れ、モノと人、環境と人、そういった人間ー機械系の区別が希薄になっています。このパラダイムシフトによって訪れる世界をデジタルネイチャーと定義するそうです。

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『人高知能は人間を超えるのか』/松尾豊**

人工知能(AI)の話題が盛んになり、周辺領域がにわかに騒がしくなっています。人工知能は驚くすべきスピードで進化を続けていて、将棋の世界では人工知能がプロ棋士を打ち負かすまでになっています。

また、人工知能が人間の知能を完全に上回るシンギュラリティが2045年だとも言われています。しかしながら、そうした断片的な情報を持っているだけではその本質を理解できません。同書は今日に至るまでの人工知能の進化をまとめています。

昨今の人工知能における賑わいを見る限り、人工知能は現代に彗星の如く現れたかのように思えますが、実は過去にも何度か世間を賑わせたことがあります。

1956〜1960年(なんと40年前!)が第一次AIブーム、1980年代が第二次AIブーム、そして現在は第三次AIブームです。これまでは、人工知能によって世の中に確信が起きるのではないかと期待を持たれましたが、実際のところ普及することはありませんでした。しかしながら第三次ブームを迎え、本当に世の中が劇的に変わるのではないかと言われているわけです。

これまでAIが世の中を変えられなかった理由は一つ。人の手を借りなければ正解を導き出せないからです。条件を与えれば機械学習によって賢くなっていくものの、コンピューターには知識がない。知識がなければ答えを導くことはできない。たとえば複数枚の画像から猫の画像を選び出すにしても、何が猫の特徴なのかを人間が教えてあげなければいけませんでした。

AIブームの沈黙を破る「ディープラーニング」

しかし、2012年になりデータをもとにコンピューターが自ら特徴量を作り出す技術が生まれました。「ディープラーニング」です。これまで人間が介在しなければならなかった領域に人工知能が足を踏み入れたことで、ブレークスルがおきました。

ディープラーニングは、人間の知能がはるか及ばない速度で解析を行い、一瞬で答えを導きます。落合陽一さんがおっしゃる「人間が説明できない理屈」で事象が巻き起こっているのです。

AIの発達によって人間の仕事の多くは奪われると言われています。「どうやって世界の人工知能に日本の人口が勝つのか?」という議論もありますが、私たち一般市民からすれば「人工知能に仕事を奪われないようにするのか?」の方が気になる課題でしょう。

ただ本書の中では、人工知能が数年から十数年のうちに世の中の多くの場所で使われる確率は宝くじで5億円が当たるようなものだとも言われています。

2045年を一つの目安におきつつ、今後の来る「超AI時代」に備えるために一度正しくこれまでの経緯を辿り、自分が時代の中で取り残されていかないための施策を練るべきかもしれません。もしよければ、落合さんの著書『超AI時代の生存戦略』に詳しいことが書かれているので、ぜひご一読を。





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