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【9】『海辺のカフカ』が教えてくれる、自分を変える地図 #小原課題図書

今週の #小原課題図書 は『海辺のカフカ』。村上春樹作品を読むのは初めてで、そもそも小説自体ほとんど読んだことがありません。

村上作品は、友達が言っていたかテレビで見たのかわかりませんが、「とにかくわかりにくい、回りくどい」と聞いています。それくらいしか事前情報がありません。

…そして実際に読み終えましたが、物語の全体像を上手くつかむのは難しかった。物語は、少年「カフカ」と老人「ナカタさん」の二本立てで進んでいきます。時折その二つの物語が交錯し、双方に暗示し合いながら、結論へと進んでいきます。

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カフカは「父親を自らの手で殺す」という父の予言から逃れようと四国に家出をし、そこで出会う人たちに様々な影響を受けながら自己を見つめていく。最終的には父を(メタフォリカル的に)殺してしまうが、いずれ東京へと帰る。

また、ナカタさんも同じく四国を目指す。四国へ旅だったのち、ストーリーは大きく省略するが、死に至ることになる。このナカタさんは、メタフォリカル的にカフカそのものである。

…一読しただけでは内容を掴みきるのは難しいと思います。特に僕のように小説を読んだことがない人にとっては一層複雑です。

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今回、読む前から『海辺のカフカ』をどう読むかを決めていました。小説ですから、主人公がいます。自分を主人公になぞらえて、現状困っていることの答えを探すつもりでした。とても主観的なまとめになってしまいますが、ここ数日は物語のを楽しむだけの余裕もなかったのでご容赦ください。

**(上巻)

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「場所なんてどっちでもいいんだよ。トイレと食事。蛍光灯とプラスチックの椅子。まずいコーヒー。イチゴのジャムとサンドイッチ。そんなものに特に意味はないのよ。なんに意味があるかといえば、私たちがどこから来て、どこに行こうとしてるかってことでしょう。ちがう?」

最近悩んでいたことは、他でもなく自分のふがいなさだ。これまでに同じような悩みに当たったことは少なくない。その度に環境を変えて、気持ちを新たにしてきた。ただそこで気づいたのは、環境は人を変える大きな要素ではあると思うけれど、環境が変わったからといって、人が変わるわけではない。

「この広くて深い森は全て君のものだ。便所がどこかなんて君が決めればいいことじゃないか」と、大島さんは言う。

変わる必要がないと言えば、そこまででもある。すべての人が頑張る必要もない。

「いったん始まった戦争を中止するのはとても難しい。一度鞘から抜かれた件だ、血は流されなくてはならない。これは理屈でもない。理論でもない。私のわがままでもない。ただの決まりなんだ。」ジョニー・ウォーカーは言う。

ただ、チャンスはそう何度もやってくるわけではない。さらに、それは本当に大変なことである。血を流さなくてはならない。

「君には自分の生きたいように生きていく権利が僕にはあると思う。15才であろうが、51歳であろうが、そんなことに関係はなくてね。しかし残念ながら、そういうのは世間一般の考え方とは合致しないかもしれない。」

自分の好きなように、自分のペースで、自分が思うように生きられたら、と思うことも少なくありません。もちろんその権利を持っていると思います。

「…もし君の選択や努力が徒労に終わることを宿命づけられていたとしても、それでもなお君は確固として君であり、君以外の何物でもない。君は君として違いなく前に進んでいる。心配しなくていい」

究極的には、他者と比較する必要もなく、誰かに勝つ必要もない。そもそもそういう考え自体が不要であるようにも思えます。

(下巻)

それがどんなに突飛で奇矯なことであっても、星野青年は、この老人が口にすることはいちおうそのままいちおうそのまま信じておいた方がいいような気持ちになっていた。

ただ、言行一致しないことは許されない。

20歳のときに神保町のカフェでアルバイトをしていました。ちょっとしたミスをして、店長に注意を受けたことがあります。「昔からこういうところがあるんですよね」と舌を出した僕に、店長は「なおそうと思ってないから、なおらないんだよ」といいました。

ここを出ていかなければ、とても生きのびてはいけないと思った。そして二度とこの土地を目にすることはないとかたく信じていた。

『海辺のカフカ』は、とおの昔に忘れてしまったような、僕の欠点をみるみる洗い出していきました。それはもう、本の内容が頭に入ってこないくらいに。

「なんだってかまわん。金槌でたたいてもいい。包丁で刺してもいい。首を絞めてもいい。火で焼いてもいい。かみ殺してもいい。君の好きな方法をつかってかまわん。とにかく息の根をとめろ。圧倒的な偏見をもって強固に抹殺するんだ。」

自分を殺すときに、方法はなんでもいい。環境を変えるのもいいし、手段を変えるのでもいい。ただ、今この瞬間に殺さなければいけない。またとないチャンスで自分を塗り替えなければいけない。



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