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長女はつらいよ

 毎日NHKの朝ドラを観るのを楽しみにしている。(2020年春頃)現在放映されている「スカーレット」は、一人の女性が陶芸家になるまでの半生を描くものだと思われる。その主人公、喜美子を見ていると、昔の長女というのは本当に大変だったのだなぁと同情させられる。
 

あらすじを簡単に説明すると主人公の喜美子は、中学を卒業すると同時に地元滋賀県は信楽の陶器を作る会社に入社するはずだったのだが、まだ十五歳という歳若であるということと、女性であるということで寸前で断られる。それから父親が勝手に決めてきた大阪の下宿屋で下働きをさせられ、そこで三年間一度も帰省することなく一生懸命働き、実家に仕送りをしながらもお金を貯め、好きだった絵の学校に入ろうとしていた。しかしその矢先、又も父親から一方的に帰郷して家事をしながら働けと言われ、実家の窮状を察し大阪の勤め先を辞め、学校に通うことも諦めて信楽へ戻り、先の陶器を作る会社の食堂で働き始める。

 そこで、陶器の絵付けに魅せられ、好きな絵を描けることになった。人間としても芸術家として尊敬できる師匠の下で修業をし、なんとか絵付け師として独り立ちした頃、陶芸家の卵の青年と恋に落ちる。が、常々喜美子に早く結婚しろと言っていた父親がその男性との交際を猛反対し始める。
 

これからどういう展開になるのか分からないし、結果的に父親が喜美子を無理やり大阪から信楽へ戻らせたことによって、絵付けという道を見つけることが出来たわけだが、こんなにも理不尽な父親が当時は珍しくもなかったのではないかと、物語ながら喜美子が不憫でならない。


 私の母も長女である。喜美子より少し若い昭和十九年生まれ。実家は洋服の仕立て屋を営んでいたが、店に泥棒が入り、しかも保証人倒れまでして貧乏のどん底だったそうだ。子どもの頃から店のお使いをしたり、皆が夏休みの間遊んでいるのを横目に、人目を忍んでお寺の草むしりのアルバイトをして家計を助けていたそうだ。祖父から「中学を卒業したら働け」と言われたとき、祖母が成績の良かった母を高校に行かせてあげたいと言って、何とか高校に入学できた。当時は十六歳から運転免許を取得できたようで、これも将来のためにと、資格を取らせてもらい、高校卒業後は自動車のディーラーに就職することが出来た。


 しかし、就職してからも三人の妹弟の学費のために、給料のほとんどを家に入れていたという。やっとの思いで買ったカメラや着物を、当時やんちゃをしていた妹、弟に質に入れられたり、あつらえたばかりの洋服を勝手に着られたり、家出をした妹を迎えに行くのに会社に頭を下げて車を貸してもらったり散々な目に遭ったと、母の口から何度も何度も聞かされた。
父と結婚してからの母は、お金に困ることのない生活を送っている。むしろ少し浪費家ではないかとも思える。若い頃あんなに苦労したのにどうしてこうなったのだろう?と責める気持ちもあったが、最近では、長女というだけで沢山我慢をしたのだから、少しくらい贅沢をしても良かろうと思えてきた。どうせあの世にお金は持っていけないのだし。
ちなみに私は喜美子の妹、直子と同じく、勝手気ままな次女でございます。

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