サークル・オベリニカ

マルチメディア系創作団体【サークル・オベリニカ】🌸|文芸・イラスト・ゲーム・映像| 【…

サークル・オベリニカ

マルチメディア系創作団体【サークル・オベリニカ】🌸|文芸・イラスト・ゲーム・映像| 【各種SNS|https://lit.link/oberinika

マガジン

  • 【文芸】桜賀創藝 -Ōka Sōgei-【バックナンバー】

    サークル・オベリニカが刊行するオンライン文芸雑誌『桜賀創藝 -Ōka Sōgei-』 メンバーからの寄稿作品を集積し、各号のテーマ・フレーズが物語を形作る。創造性と個々の深い精神性が織りなす作品世界が読者を深部に誘い込むだろう。 さあどうぞ。愉快な言語表現の旅へ。 (寄稿作業期間では、作品順序が乱れる場合があります)

最近の記事

【創刊号】作品解説【黎明】

- 本文|坡嶋 慎太郎 - 私は物語の中に物語らしき物語を求めず、ただ夜半に咲く一輪の花の如き鮮烈さを求める。すなわち、心に響くか否かということになる。 そういう意味では『桜賀創藝』はどうにも暗い印象が拭えない。創刊号であるが、日の出を感じづらい。「黎明」ゆえに陽の差す前の黎を色濃く残している。だが色味が同じであっても、そこには種類がある。みな、心に一も二も重石を抱えている。鮮やかな虹ではないが、単なる墨ということでもない。私はそれを気に入っている。 「解説」などと銘打って

    • 【小説】継ぎゆくイノチ - 炉紀谷 游【ヒューマンドラマ】

      - 序 - - 本篇 -  ――私はあなたの父親を殺しました。  これが道徳的に正しいのかどうか、私には検討もつきません。けれどもね。  とにかく――私は生きるというエナジーを、なんでもないところに注ぎ込みたくはなかった。  生きるというのは、液体のようなものでしょう。  生命という光り輝くエナジーをあちらこちらへこぼしながら、わずかに残ったエナジーを、本来注ぎたいと思っていたところに少しだけ与えるということなのだと。  私の中で、あなたの肉親を殺すことが、生きるという営

      • 【詩歌】黎明詩群 - 加宮 つばめ【オベリニカ】

        - 序 - - 本篇 - 【翌る日には】  朝。陽が昇ると同時に一日が始まると習ったけれど、それはどうにも間違いなようです。わたしの人生はいつから始まって、いつ終わってしまうのでしょう。窓を開けても無彩色。微かに雨の匂いがします。これから降るのか、もう降ったのか。わたしには皆目見当も付きません。  通りに一匹の猫がいました。ひどく汚く濡れそぼっているようにも、優雅に水浴びを終えた後にも見えました。人は見たいように物を見るらしい。ならば、わたしに付いているこの二つの眼は一

        • 【小説】カメラを手にして - 望月 凛【ヒューマンドラマ】

          - 序 - 自信を失った大学生に与えられたものがあった。 - 本篇 -  私は、何も成し遂げたことがない完璧主義者だ。解きかけの問題集に、一曲も奏でられないギター、買ってから何日も放置された本。中途半端が身を寄せ合って自室を形成している。それに対して弟は、一点集中型で興味のあることを大成させることが得意だ。将棋も絵画も卓球も、私の真似をして始めた弟がいつの間にか私を追い越していた。この状況は私を卑屈にさせるには十分だった。やがて、「どうせできない」と夢や目標を語らなくな

        【創刊号】作品解説【黎明】

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        • 【文芸】桜賀創藝 -Ōka Sōgei-【バックナンバー】
          9本

        記事

          【詩歌】チャイルドたち - すべての父母【オベリニカ】

          - 序 - 私が産みました - 本篇 - 散らかった四畳半 空の鳴き声 外にいるよりずぶ濡れかもな 日が沈む 赤く染まる 今日が終わる 始まる人もいるのかな 人には人の暮らしがある 嫌いなあいつも 好きだったあいつも 同じ空を見ているようで それぞれの景色があるのかな あんよあんよ 赤子の足音 暗夜暗夜 自分の無力さに泣きたくなる時間 あんよあんよ まだ未来に希望があった時間 暗夜暗夜 直接見ることのできない空 蛙のように押し潰さ

          【詩歌】チャイルドたち - すべての父母【オベリニカ】

          【小説】次の夜明け - aoi【ファンタジー】

          - 序 - 明けない夜はない。止まない雨はない。君たちは軽々しくそう言うけど暗闇を照らすライトや、雨を凌ぐ傘をくれようとはしないよな。いや、別に君たちが間違ってるとは思わない。ただ、ふとそう思っただけなんだ。 - 本篇 - 「この国は狂ってしまっている!」  そう言って1人の若者が赤い旗を掲げた。  元よりこの国はおかしいと思っていた国民の多くは彼に賛同し、兵となった。この国は人口が5万人ほどの小さな国だ。国土もそれほど大きくない。馬であれば1日で端から端まで行けてしま

          【小説】次の夜明け - aoi【ファンタジー】

          【小説】藍色とノクターン - Yayuki【ヒューマンドラマ】

          - 序 - フィクションにほんの少しの体験を混ぜて、黎明風味にしてみました。 - 本篇 -  深く長く覆いかぶさっていた闇が明けるころ、空は鈍い藍色を映し出す。藍々はこの空の色が好きだった。何にもなれない自分を唯一受け入れてくれる場所。藍々は、冷たい地面に座り込んで、もう何回見たかも思い出せない藍色を見つめた。はじめのうちはこの藍色を見るたびに心の隅に罪悪感を抱いた。今では後悔していない。ただただ美しい藍色だった。少し肌寒さを覚えだした秋の夜明け、藍々は混沌とした街を見

          【小説】藍色とノクターン - Yayuki【ヒューマンドラマ】

          サークル・オベリニカが創り出すオンライン文芸雑誌【桜賀創藝】始動!! https://note.com/oberinika/n/n1658d8582f0c?sub_rt=share_h

          サークル・オベリニカが創り出すオンライン文芸雑誌【桜賀創藝】始動!! https://note.com/oberinika/n/n1658d8582f0c?sub_rt=share_h

          【小説】後悔と悪魔 - n.【現代】

          - 序 - そのうち読み返して、自分に響いたらいいなって。 - 本篇 -  よる、どうにも眠れないというときに、私はいつも後悔ということをする。  歳を重ねれば重ねるほど後悔の厚みはましてゆく。生きてきた日の数だけ誤ったり苦しんだりするからだ。  みんなは「後悔などするものではない」といって、過去の出来事を遠く置き去りにする。  でも私にとって後悔は自然なことなのだ。  かつて人は、未来を後ろ向きに考えてきた。すなわち、絶対的に不可知なものだ。一方過去は常に目に見えるも

          【小説】後悔と悪魔 - n.【現代】

          【創刊号】刊行に寄せて【黎明】

          - 本誌について - - 本文|炉紀谷 游 -  桜賀創藝は、サークル・オベリニカのメンバーが綴る物語の一片を集積したものです。  様々なテーマが、作者の想像を掻き立て、その集合体が作品群として完成する。  文芸雑誌の体裁を取っているのは、それぞれの作品がゆるやかにつながることを期待しているからです。  文字を書くことも、世界を創り出すことも、容易いことではありません。  私たちにとってありふれた言語というものを使って、想像世界を実現させることは高度なイメージの問題なの

          【創刊号】刊行に寄せて【黎明】

          桜賀創藝 創刊号「黎明」

          桜賀創藝 創刊号「黎明」

          【試論】去る人、残るもの - 炉紀谷 游【大学サークル論】

          〈はじめに〉  はじめに断っておきたいのは、本稿が論ずることで何らかの代表性を示したり、内容に関しての正当性を、読者が持ちうる主義主張を越権してまで述べたりしたいわけではないということである。  あくまで本稿は、この2年ばかりに渡って行ってきた大学内サークルの運営についての所感をつらつらと書き連ねるばかりの、言うなれば、ちっとも既存知識の拡張にならないような表現の集まりだ。  加えて、本稿は2023年3月17日に投稿された記事を大幅に加筆して再投稿したものである(原典削

          【試論】去る人、残るもの - 炉紀谷 游【大学サークル論】

          【優秀作】旅を夢む。 - 坡嶋 慎太郎【純文学】

          あらすじ フリーのカメラマンである「私」は、自身が写真に興味を持ったきっかけを回顧する。友人・沼津の言葉を聞き、人生に対する漠然とした不安を拭う方法を探す「私」は、今日も救いを求めて歩み続ける。 本編  Light。カメラのフラッシュが純粋な闇に覆われた宵の中に一輪の光を灯した。照らし出された空中を一匹の羽虫が飛んでいたのが、妙に印象的だった。    私が写真に興味を持ったのは大学一回生の時だった。その頃、私は青年期にありがちな「自身の存在の必要性」についてぼんやりと考

          【優秀作】旅を夢む。 - 坡嶋 慎太郎【純文学】

          【小説】存在の有無に関する思案 トイレにて - フェノメノン・フェノメノロギー【日常】

          本編  駅のトイレを想像してみてほしい。トイレとは、一般的には狭い空間である。次に、自宅のトイレを想像してみてほしい。そこには窓があるだろうか。あなたの家のトイレは、中から外の様子が見えるだろうか。  私は幼い頃からマンションに住んでおり、小学校から高校に至るまで、実家から通っていた。大学も実家から通うことができたため、幼少期からずっとこのマンションで暮らしていることになる。要するに、私はこの家のことをよく知っている。思い浮かべれば家のどの場所も鮮明に頭に浮かぶし、細かな

          【小説】存在の有無に関する思案 トイレにて - フェノメノン・フェノメノロギー【日常】

          【小説】無命界 - 山笠美紀乃【ファンタジー】

          本編  とある寂れた家の中に入ると、狭い狭い部屋の中に机があって、その机の上には一冊の手帳が置いてある。  表紙に『日記』と書かれたそれを手にとって、あなたは中身を読み始めた。 『日記』 前書き  前書きとは題したものの、もう一体、何から書き始めれば良いのか、てんで分からない。  そもそも自分を落ち着かせるために書き始めた日記ではあるが、何を書けば落ち着くことが出来るのやら。  というか一体、誰に向かって書いたものか。  日記というものが未来の自分に向かって書くもの

          【小説】無命界 - 山笠美紀乃【ファンタジー】

          【小説】地球の孤児たち - ひいろ【青春小説】

          あらすじ 「僕さ、宇宙人に会いたいんだよね」 もし地球の外にある広大な宇宙に誰もいなかったとしたら───。孤独に怯える大学生が、友だちと一緒に星が流れる夜空を見上げる。 本編  まだまだ暑さが残る八月の午後七時、僕はコンビニで買ったアルコール度数の低い缶チューハイ数本とビーフジャーキーが入ったビニール袋をガサガサと鳴らしながら友人の家へ向かっていた。  今夜はペルセウス座流星群が極大を迎えるらしい。朝のニュース番組では流星群が見られるのを楽しみにしている人達のインタビ

          【小説】地球の孤児たち - ひいろ【青春小説】