Chapter-587 多孔性液体爆誕

活性炭やシリカゲルのような、内部に微細な空間を多数持つ物質を多孔性物質といい、家庭用品として冷蔵庫の中やお菓子缶の中で活躍しています。これらにはフィルター効果などがあるので工業的にも使用されているのですが、工場では固体は少々使い勝手が悪く、液体の多孔性物質の登場が待ち望まれていました。

これまで、工場で使えるほど安定なシリカゲルのような液体は無かったのですが、ついにアイルランド、クイーンズ大学の研究者らが多孔性液体の開発に成功しました。研究者らは以前から固体の新規多孔性物質の開発を続けていましたが、あるとき自分たちが開発した多孔性固体の融点を下げれば、多孔性の性質を持ったまま液体になるのではないかと考えました。

物質の融点を下げるためには、元の物質の構造を化学的に一部分だけ改変するのですが、一般的に知られている方法では多孔性が失われるため、新たにオリゴエーテルと呼ばれる構造を開発し、多孔性固体に結合させたところ、多孔性を保ったまま融点を下げることができることがわかりました。できあがった物質は液体であるにもかかわらず、内部には0.55ナノメートルの大量の隙間がある不思議な構造をしていることがわかりました。

今回開発された多孔性液体はメタンや二酸化炭素を効率よく吸収することがわかり、さらに、化学反応によって吸収した分子を意図的に放出させることもできました。この性質を応用するとある工場で排気ガスとして出された分子をいったん多孔性液体に保存し、別の工場でそれを原料として使用することが可能ですし、科学分析で使用されている高速液体クロマトグラフィーなどに応用すれば、完全液体系で、保持層をポンプで交換できる画期的な装置が登場するかもしれません。

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