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おすすめの本「アイドル生活10年やってわかった “わたしが主人公”として生き抜く方法」

 2016年12月31日。
 SKE48ファンの僕はテレビの前で僕は驚愕していました。
 NHK紅白歌合戦で企画された「AKB 夢の紅白選抜」という、「NHK紅白」のアプリで投票されたメンバーを選ぶイベントでのことです。
 実際のAKB48の総選挙と違い、一人一票に限りなく近い状況で、SKE48のセンター松井珠理奈が11位で呼ばれました。
 「残酷なぐらいありのままの現実をみせようか?」と欅坂46の「東京タワーはどこから見える?」が今の僕なら頭の中で流れていたことでしょう。口を開けたまま、続々と発表される順位の中で、6位「吉田朱里」という文字が踊りました。
 彼女の順位は、小嶋陽菜、横山由依、柏木由紀よりも上でした。
 「いったい、何が起きているんだ…」
 その時の僕は、難波で起こっていた地殻変動にまだ気づいていませんでした。


 先日、主婦の友社から発売された吉田朱里さんのエッセイ、「アイドル10年やってわかった"わたしが主人公‟として生き抜く方法」に地殻変動のが書いてありました。

 まず、吉田朱里さんのアイドルとしてのスタートが書かれていきますが、彼女自身は「問題児」というところからスタートします。当時14歳で中学生だった彼女は、仕事との向き合い方やスキャンダルのせいで、「やらかしてしまった人」というレッテルを貼られ、一時的に謹慎することになります。
 グループに戻ってからのメンバーの視線とかも、包み隠さず書いていて、読みながら心がヒリヒリしてきます。
 ただ、この謹慎期間中にやっていた自撮りの写真たちが、将来の彼女の武器を見つける萌芽になっていたんですね。

 ううむ、逆境に於いて諦めずに何かやってみるというところは非常に勉強になります。

 そして、彼女はまだグループ内でもやっている人が居ない状況でyoutubeチャンネルを始めます。しかも、「女子力」、「美容」というyoutubeの先人たちが切り開いてきた道に、「アイドル」というレイヤーを重ねて、自分の色をチャンネルに付けていきます。
 ここから、徐々にNMB48は女性ファンを増やしていくことになります。更に「Queentet」という自分でプロデュースしたユニットも結成、何故、その子が選ばれたのかという理由が明確で、ただのありあわせのユニットではないことが分かります。コンサート会場では女性用のエリアも作られるようになります。
 そして、彼女は自分でプロデュースしたコスメが大ヒット。
 一つ一つのアイテムを付ける女性たちの立場や欲しいものを考えながら、成功させていきます。 

 2020年に彼女は卒業します。
 第2章で書かれていた卒業に関するところが印象的で、「夢がみつかったから卒業する」のではなく、「『夢への架け橋』が何本か出来てから卒業する」ということを彼女は薦めています。
 ううむ、これは半年ぐらい前にこの本に出会いたかった、と現在無職の僕は思うんですが、確かにSKE48で考えてみても、卒業後に成功しているメンバーはこれがしっかりと出来ていますよね。

 また、アイドルに求められるのは、見た目やダンス力ではなく「ストーリー」というのは、まさにその通りだな、と思います。48グループという一人一人の「ストーリー」をリアルタイムで体感できるこのグループには、参加する面白さと見守る面白さ、どちらもあります。
 彼女自身が、総選挙ぐらいまでは「アイドルを押し上げる」という感じだったのが、それ以降は「自分の力で夢を叶えていく」という感じに変わったので、「アイドルを育てる」というファンの方にとっては、自分は物足りなかったかもという内容が書かれていました。
 恐ろしいぐらいの分析力。
 彼女の分析力や研究熱心なところは、コスメの商品開発にもどんどん活用されていきます。先ほどの女子にNMB48が受け入れられ始めたことで、「釣り」が得意なメンバーに影響が出たのでは、と考察できるところまで、凄まじい俯瞰の視点だと思います。
 

 で、そんなに成功を収めているんだから、「レディ・プレイヤー1」や「ワンダーウーマン1984」の社長たちみたいに、性格が悪いに違いない、「俺はガンダムで行く!」と宣言して本をゴーグルのように装着してアラを探していったんですね。
※イメージ映像


 しかし、彼女の場合、飾らない性格で親しみを持ちやすいんですね。
 ご家族とのエピソードは涙なしには読めませんし(特におにぎりのエピソードが好きでした)、最後のお父様との抱擁は嗚咽してしまいました。
 これからも自分の価値観を大事にしつつ、成長を続ける彼女がどんな世界観をyoutubeやプロデュースする企画で見せてくれるか楽しみですね。


 実は、ここまで読んでいて、SKE48でも同じようなブレイクスルーをしたメンバーがいるのでは、と思いましてね。
 それが「かおたん」こと、松村香織です。
 「いや、何が何でも強引だろ。よし、この記事は閉じて、『ジュラシックパーク』のオッサンがトイレで食べられるシーン観まくろう!」と思ったあなた。
 あのシーンは映画館でも大爆笑でしたが、少し待っていただきたい。
 松村香織自身も「干されのカリスマ」という「問題児」としてスタートします。運営とも果たしてうまく行っていたか、というと怪しいです。
 そこからGoogle+という「自分だけの武器」を見つけていきます。バラエティ番組での大活躍によって、SKE48に「オモシロ」という価値観やムーブメントを生み出しました(ストロベリーパンチが受け入れられる下地は彼女が作ったのでは、と思っています)。
 また、業界関係者との関係をきちんと作って、卒業後の道を確立していったところも共通していますね。顧客層が中高年男性中心という対照的な進化も面白いです。 
 そして、なんと言っても成り上がっていくストーリー。
 この人は明日どうなっているんだろう、というスリルは彼女ならではのものだと思います。
 かおたんは昨年結婚し、前から言っていた家庭を持ちたいという自分の夢を掴みます。彼女もこれからどんな世界観を作るのか気になります。

 さて、こんな吉田朱里さんとかおたんなんですが、実は2017年の1月11日の「AKB48のオールナイトニッポン」で共演していました。ちなみに、須田亜香里もいて、「あかりん」と「アカリン」の共演もしてましたね。
 かおたんから見た吉田さんは、中学生から入ってきた彼女に対して「今の見た目からしたら、大分こなれてきてる。悪い人に引っかかんなそう、ちゃんと出来てそう」と吉田さんのしっかりとした価値観を評価していたのが印象的でした。

 ううむ、今回この本を読みながら東のパイオニアがかおたんだとしたら、間違いなく西のパイオニアは吉田朱里さんだな、と感じました。
 活躍の仕方やターゲット層こそ違えども、ブレイクスルーの方式には何か共通点があるのでは、と今回思いました。
 今、現役で頑張っているアイドルたちにも、今いる立ち位置の変え方や将来の夢との繋がり方を見つける上で、きっとヒントになるので、是非、読んで欲しい1冊です。

※ ちなみに、吉田さんのNMB時代の僕のベスト曲はこれです。


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