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痛みを知るただ一人であれ


 今年の夏に自分の雑誌を自費で作ることにしました。
 といっても、まだ創刊準備号なんですが、テーマは「推し事3.0」と設定し、これからの時代の推し事について、信頼できる方々と書いております。
 興味のある方は是非!

 さて、宣伝はこれぐらいにして、その「推し事3.0」のヒントとして僕は二つのものを持ってきました。一つは「Web3」。もう一つは「ウェルビーイング」です。
 僕のブログを以前から読んでいる方は、「こいつ、2022年に入ってからやたらと、カタカナワードの本ばっかり読んでるなあ」と思った方もいらっしゃるかも知れません。しかし、それは全てこのテーマの為だったんです。
 自律分散型の推し事の場の形成に「Web3」。
 そして、推し事の意義ややりがいについての「ウェルビーイング」。
 この二つの文脈の組み合わせで考えて行くんですが、自分が一番生産的になれることは何か、自分が一番興奮して情熱を傾け没頭できるかを考えていく必要があります。自分が一緒に作ることで価値が育っていくものも「Web3」の世界では多いです。
 何を好きになるのか、何があると幸せなのか。
 僕はあるメンバーのことを思い出します。
 
 それはSKE48の10期生。
 現センターであるチームEの林美澪です。

 2022年5月現在、彼女はまだ13歳です。
 13歳にして2作連続センター。
 彼女には、今どんな景色が見えているんでしょうか。
 まずは、2022年4月7日に行われた彼女の生誕祭の手紙を読んでみましょう。

「美澪ちゃんへ
 13歳のお誕生日おめでとう。

 最初の印象は、『新しく入ってくる10期生の中に凄いダンスを踊る子がいる』ってことがメンバーの中で話題に上がり、『凄い子が来るんだろうなー』って思ったのを覚えています。
 その子が小学生っていうのを聞いて、さらに驚きました。
 そんなある日、私のことを待ち受け画面にしてたよってメンバーが教えてくれて『えっ!?まさか?嘘だろうなー』って思いつつ、私は密かにずっと気になっていて、早くお話ししたいなって思ってました。
 個人的なお話になっちゃいますが、SKE48 12周年特別公演に向けて皆が色んな曲をたくさん覚えていかないといけない時、まえに飼っていたワンちゃんが天国へ行ってしまい、心も体もボロボロでレッスン場に行った日がありました。
 その日、ちょこちょこっと私のところに来て、恥ずかしそうに声をかけに来てくれたのがみれいたんでした。なんと、お菓子もくれました。それが最初の関わりだったのかな?
 みれいたんは私の出来事を知らないはずなのに、なんか励まされているようで、元気出してって言われているようで、その時くれたみれいたんの笑顔に私は救われたし、さりげなくくれた優しさで、その時の悲しみを乗り越えることができました。『この子は本物の天使だ!』って思ったよ。あの時は本当にありがとう。
 そして「るーちゃん」って呼んでくれるまで距離が縮まったね。
 私のことを『神推しです、大好きです』って言ってくれる後輩メンバーは初めてだったから、実は涙が出るほど嬉しくって、会うたびにニコニコ笑顔で来てくれるみれいたんがたまらなく可愛くて、いつも癒しをくれてありがとう。生まれてきてくれてありがとう。
 何気ない日に私の好きなキャラクターグッズに、しかも私のペンライトカラーを揃えてプレゼントしてくれたり、『ファンの人かなー?』って思うくらい公演の感想を長文でくれたり、『るーさん卒業する時は私も卒業します』って不意に言ってくれた時は笑いを通りこしてビックリしちゃったよ。
 まだみれいたんと一緒に頑張りたいし、みれいたんの輝く姿をこれからもそばでたっくさん見たい。だからこれからもよろしくね。
 Black Pearl( ブラックパール )のMV撮影の帰りだったかな?新幹線を降りてから『るーさん、チケットがないです』って言った時は二人ともとっても焦りました。そしたら、『もしかしたらゴミ箱に捨てちゃったかもしれません』って言ったので、今なら間に合うと思って急いでゴミ箱のところに行ったらチケットがあって一緒に安心したね。
 『明日学校に行けるんです』ってワクワクウキウキしてるところ。うさぎのリュックサックを背負ってるところ。『シー』って言っちゃうほど笑い声が大きくて、ツボが浅いところ。メイクさんにメイクをされながらコクコク寝てるところ。たくさんの時間を過ごすようになって、みれいたんの赤ちゃんな一面が見れてとっても嬉しいです。
 でもステージ上やカメラの前になるとダンス、歌、表情、何もかも完璧で、SKEのセンターになるために生まれてきたんじゃないのかな?って疑っちゃうくらいキラキラオーラが凄いなっていつも見ています。
 まだ産まれたばっかりなのに新世代コンサートの時は大きな会場でソロで歌っている姿だったり、新曲『心にFlower』の落ちサビで一人だけ立って歌っているみれいたんを見ると毎回感動して泣きそうになるのはここだけの話。
 常に全力で、弱音を吐かず、色んなお仕事に挑戦しているみれいたんを見て『ちゃんと寝れるかな? ご飯食べてるかな?』って心配になる時があります。
 みれいたん、みれいたん自身が13歳ってことを忘れないでね。これからももっと甘えてきてほしいし、困ったことがあったら何でも言って欲しいし、全力で助けます。いつだって、み~んなみれいたんの味方です。全力で守ります。
 みれいたんはいてくれるだけでいいんです。私が頑張れる一つの理由はみれいたんの存在です。
 これからもみれいたんの神推しの一人でいられるように頑張ります。
 あっ、みよまる、るーちゃん、みれいたんの3つ子トリオも広めていこうね。
 改めて、お誕生日おめでとう!
 みれいたんが幸せな13歳の1年を過ごせますように。
 お手紙を書かせてくださったみれいたんファンの皆さん、本当にありがとうございました。
 みれいたんのことが大好きなチームS井上瑠夏より」


 るーちゃんの美澪ちゃんへの愛が伝わる素敵な手紙ですね。
 「みれいたんはいてくれるだけでいいんです。私が頑張れる一つの理由はみれいたんの存在です」という箇所は、まさに彼女がコミュニティの中にいてくれるだけで多くの人が幸せを感じる「ウェルビーイング」に通じるものがあると思います。

 では、美澪ちゃん自身はどう考えていたんでしょう。
 この時の生誕祭のスピーチで彼女は、「12歳の年は凄くほんとにビックリすることが多くて、胃が痛くなることが凄く多かったです」と語っています。そして、大きな4つの出来事が挙げられていきます。
 一つ目はガイシホールの「虫のバラード」。
 まだ新人の彼女がソロ曲を任せられる。しかも、ガイシで「虫のバラード」というと、矢神久美さんを思い出すファンの方もいるかも知れません。歌唱力だけではなく思い出を越えられるか、という戦いにもなります。「今まで自分はダンスしかしてこなかった」、という不安を見事に乗り越えたと思います。披露の場を与えてくれた感謝の言葉も忘れていません。
 二つ目は、「あの頃の君を見つけた」のセンターです。
 珠理奈の次のシングルセンターで「自分で大丈夫だろうか?」という不安があったそうです。先輩たちを後ろに従えてできるのか、という不安をレッスン場で感じたということを語っています。しかし、「美澪ちゃんがセンターで良かった」という言葉に「嬉しくて、頑張ってやってきて良かったなっていう風に思って」と語ります。センターに選ばれた背景には、自分が習ってきたダンスとは違うアイドルダンスを頑張って研究してきたこともあるのではと分析しています。この時、印象的なのが、アイドルダンスを研究してもなかなか上達せずに「なんか努力する諦めようかなと思った時期もあった」という言葉です。
 美澪ちゃんの人間味と、諦めかけた時に努力を止めなかった人間だけが、センターに行けるんだな、というのを感じました。
 三つ目は、「心にFlower」でもセンターに選ばれたことです。
 連続して選んでもらえたからには、前作と同じではダメだ、と自分のいいところを見せられるようにダンスを頑張ったそうです。今回のダンスは美澪ちゃんとの相性も良く、「ダンスのSKE」、「SKEらしさ」を感じさせるものになったのではと思います。
 美澪ちゃん自身も「ダンスが凄いね」と言われることが凄く嬉しくてと語っています。
 四つ目は、「Seventeen」の専属モデルになったことです。
 SKE48には、素敵な先輩たちが沢山いるのに自分で大丈夫なんだろうか、という不安もあったそうですが、「せっかく私に声をかけてくださったのにそこで諦めるのは、その選んでくださった方々にも申し訳ないし、私の心も許せなかったので」という決心でモデルにも挑んでいきます。
 この四つ目の「Seventeen」専属モデルになったのは、かなり大きいことだと僕は思います。なんの配信イベントでもゲームのイベントの賞品でもないんです。
 そして、彼女は先輩たちへの感謝の言葉を次のように語ります。
「そして何より近くにいる先輩に凄くたくさん支えられてきて。最初はちょっと先輩にお話しかけることが凄く『大丈夫かな?』っていう風に思っていて。『私迷惑じゃないかな?』っていう風に思っていたんですけど、凄い今ではたくさん話しかけてくださる先輩や、今日はもう誕生日プレゼントだったりをいただいたりとか、本当に本当に幸せで、SKE48の先輩方と出会えて良かったなっていう風に凄く思っています。」
 自分がSKE48にいること、そして、選抜にいて、センターにいることについて、彼女は不安を抱きます。しかし、その不安は先輩たちによって氷解されていきます。しかし、彼女の不安はまた新しいものが生まれていきます。
「なんか最近というか、そのセンターになってからというか、なんか自分のやりたいことがわからなくなってきて。
 なんか、凄い周りの、なんか友達とか、凄い自分に目標がある子が多くて。でも、その自分はセンターになってからというかアイドルになってから何を目標にして今まで生きてきたのかなって思うと、ちょっと分からなくて。
 なんかそんな人が今センターにいて大丈夫なのかなっていう不安も凄くあって。
 だからなんだろう、凄い最近は色んなことを考えて、なんか毎日泣いちゃったりとか凄い周りの方に迷惑しかかけてなくて。特に、その家族にはほんとに迷惑しかかけてなくて。だから、何だろう、なんか『自分がいて大丈夫かな』って思うことがたくさんあって。」

 彼女の中の不安の正体は、僕には分かりません。ただ、先ほどの「胃が痛くなること」がヒントになるかも知れません。
 2作連続センターや専属モデル。
 先輩たちや同期の目標を短時間で、一気に手に入れてしまった。
 彼女が13歳の間に「目標」を作りたい、と語っているのもここと繋がっている気がします。
 彼女は目標について、生誕祭のスピーチの中で下記のように語っています。
「やっぱり目標に向かってないと自分はほんとに生きてる感じがしなくて。最近とか何を楽しみに生きてるかなって考えて、なんも出なかった自分が一番嫌いなので、もっと人生を楽しめるように、自分も頑張りたいと思うし、そしてほんとに家族には謝ることしかなくて。ほんとにいつも困らせてしまってごめんなさい。
 だからもっと中学2年生、13歳はもっと、周りから、何だろう、心配されないように、ちゃんと頼ってもらえるように頑張りたいと思います。後輩も、学校でも入ってくるし、SKEの中でも入ってくるので頑張りたいと思います、もっと。
 そして、活動でもちゃんと目標を見つけないと、自分が見失われていきそうで怖いので、自分の好きなことをやりたいと思います、これからも。これからは自分の好きなことをたくさんしていきたいなっていう風に思ってます。」
 「目標がない」ことに関しては、自分が彼女と同じくらいの年の頃に、果たして目標なあっただろうか?という疑問が生じてきましたが、皆さんはいかがでしょう。ただ、彼女のスピーチを知れば知るほどに、「今はそんなに焦らなくていいんだよ」と声をかけたくなります。
 先輩の鎌田菜月さんも、2022年4月18日に放送されたラジオ番組「サクラバシ919」で、「13歳の子が家族に迷惑をかけるのは当たり前だと思うのに、心配かけちゃって…と泣いている姿にすごくくるものがあって」と語っていましたね。
 じゃあ、僕らファンにできることは何なんでしょう。
 まず、彼女の活躍できるSKE48という場を守り続けることは大前提だと思うんですが、「運営の推され」とか「ゴリ推し」いう言葉で彼女の努力や苦悩を貶めるのではなく、きちんと評価するべきところは評価し、新しいSKE48の入り口になる人を大事にしていくべきではと思います。
 松井珠理奈から、小畑優奈から何も学ばないほどSKEファンは幼くないと信じています。
 少しだけ脇道にそれますが、彼女の読書家に僕は注目しています。
 インプットがしっかりしている人は、アウトプットもやはり素晴らしいことが多いです。ボキャブラリーだけでなく、文章の組み立て方、思考の回路も豊かになっていきます。
 たとえば、先ほど挙げた4つの不安の1つだった虫のバラードについてのアメブロです。


 彼女のブログにちゃんと軸があって、内面の変化があったのに気づいたでしょうか。
 自分の声が嫌いというところからスタートして、歌うことを諦めかけた彼女が松井珠理奈という大先輩がくれたきっかけをもとに自分の声が好きになる。
 素晴らしい構成だと思います。もし、これを計算なしで構文出来ているのなら、どうか、彼女の読む時間と書く時間を確保して欲しいと思います。
 あとは、優れた歌詞を選ぶセンスにも長けていると思います。
 こちらのブログを読んでみてください。

 もう一つ、お時間のある方は読んでいただきいアメブロがあります。
 それは、ファンの方々からのコメントにリプをしたアメブロなんですが、これが丁寧なんですよね。

 
 小難しいことを色々と書いたかも知れませんが、多分、これからの数年間で彼女の環境はまだまだ目まぐるしく変わると思います。推し方も変わっていくかも知れませんし、センターまでのゲームもアイドル業界の価値観も変わっていくかも知れません。
 でも、アイドルを推すことの基本はずっと変わらないと思います。
 林美澪という一人の少女が笑顔になったり、一つ結果を残していったりすることが、ファンの方々の幸せになっていく。
 それはあなたがいてくれることが幸せであるという「ウェルビーイング」につながると思います。
 マルチバースがあるなら、2011年ぐらいの48全盛期のSKE48に林美澪が入る世界や、総選挙で林美澪が超選抜に入る世界もあるかもしれません。しかし、彼女が現れたのはとっくに48グループブームが終わった後のSKE48です。しかも、コロナの影響でアイドル業界はまだ打撃を受け続けています。
 時代は時に若者の未来を見えにくくして行くと最近は思います。
 先の見えない時代の中で、痛みが生じるものもきっとあると思います。
 中にはセンターというただ一人のポジションだからこその痛みもあるかも知れません。
 でも、彼女なら乗り越えられる、いや、正確には彼女とファンの方々とメンバーたちなら乗り越えられると思います。彼女が声を好きになるきっかけをくれた人が、多くの痛みを知っていても、優しくみんなみんなで前に進んでいたように。
 どうか、明日も美澪ちゃんが笑顔で踊ってくれているように。その笑顔はるーちゃんの時のようにきっと誰かの悲しみを癒す優しさを持っていると思います。 

 
 林美澪さんの一日も早い回復をお祈りしております。


こんな大変なご時世なので、無理をなさらずに、何か発見や心を動かしたものがあった時、良ければサポートをお願いします。励みになります。