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関西の中学受験における国語で求められる力について

はじめに


 こうみえて、関西で10年間ぐらい教育業界に居ましてね。
 「関西の中学受験といえば、あそこだよねえ」というところに在籍して国語を教えたり教材を作ったりしていました。
 塾屋さんの面白いところは、なんと言っても色々な中学の学校資料が読めることです。関西は1月の第2土曜日が統一入試日になることが多いのです。そして、その問題の出題意図がだいたい6月前半ぐらいから各中学の塾対象の説明会で配られます。
 どこの塾も同じだと思いますが、この学校資料をアーカイブ化してその会社の人間で共有します。つまり、見ようと思えば関西中の学校の先生の出題意図が見られるわけですね。
 また、塾に各中学の先生に来ていただいて、話を聞くイベントも盛んですよね。何気ないこぼれ話の中に「あっ、そういうことも考えて出題してたのか」と気づかされることもありました。
 ちなみに、僕が居たのは、2008年から2018年までなので、もう5年も前の情報です。ただ、10年間で求められる根幹の部分は変わっていないなあ、と思います。ひょっとすると、今も変わっていないかも知れません。なので、あくまで僕がいた頃のシーンは、こういうことを求められていたということを書いておきたいと思います。特に最難関校に関しては、求められるものは似ているのでは、と思います。
 それでは、行ってみましょう。

① 早熟度

 いきなり元も子もないことを書くんじゃあないよ、と思われた方もいるかも知れませんが、多くの中学の国語の物語文や随筆文の文章選びの基準や問題の出題意図として出てくる言葉があります。
「他者のことを想像できるか」
「相手を思いやれる心」
 これはどういうことか、というと、要は自分はこう思うから、物語に登場する人物も同じ気持ちになると思う、という生徒がやっぱりいます。そうではなくて、こういう出来事があると、人はこういう気持ちになるのか、という引き出しが沢山あることが、早熟度だと僕は思っています。
 たとえば、道で好きな子に出会ったとしましょう。
 本当は好きなのに、「お前なんかブスだ」と相手を傷つけるような言葉を言ってしまう。この時の主人公の気持ちを問われたとしましょう。
 言葉だけでとらえてしまう人は、「嫌い」という答えを持ってくるわけです。
 じゃあ、さっきチラッと出た人の気持ちを想像する時の引き出し、いや、サンプルと言った方が分かりやすいかも知れませんが、それを増やすにはどうすればいいでしょう?
 読書です。
 ええっ、と思われた方もいるかも知れません。
 分かりますよ、今、アメリカの西海岸のインテリ層の教養ってもうネットフリックスに変わりつつありますもんね。なんでわざわざ、紙の本とかで文字を追わなきゃいけないんだ、と思うでしょう。でも、中学入試の国語は、「イカゲーム」でも「無人島のディーバ」もまだ出題されないんですよね。読みながら、頭の中で漫画の絵でも実写でもいいから想像していくしかないわけです。
 まずは、短い短編でも良いので、本を読む経験を持ってもらいましょう。
 

② 情報を処理する力


 関西の中学入試でもっとも重要になるの科目が算数です。
 個人的には日本で一番算数が熱い地域だと思います。
 灘中学を始めとして、最難関中のレベルの高さもあれば、西大和中学のように良問を毎年、出題される中学も増えていました。
 中学入試業界を辞めてからも、趣味でやっぱり毎年の入試問題をチェックするところは、良問が多いところです。国語だと、僕は、東大寺学園がトップクラスだと思います。
 さて、なんでいきなり算数の話から始めたの、と思われるかも知れませんが、塾で月に一度、日曜日に行われる模試のようなもので、質問の対応をするために、我々職員は待機していなければいけません。この時に質問が多いのが、算数の文章題です。「どういう意味ですか?」と聞かれることが多いです。文章で問われていることが分からないので、ふさわしい式や求めるべき計算が分からないということがあります。
 で、後から算数の先生から「国語がちゃんと教えてないからだ~」と半分ふざけながら言われますが、半分はその通りかもなあ、と思うことがあります。
 やっぱり国語が得意な子の問題用紙は、チェックすべきところに線が引かれていたり、きちんと場面の変化や内容が変化していくところを区切っていることが多いです。
 物語文だったら気持ち、説明文だったら意見や問いかけに線を引いてますね。
 で、この習慣が出来ている方は記述問題でも強いです。

③ 読み方

 たまに、保護者の方がテスト前に「いいか、まず文章を読む前に問題を一通りざっと見ておくんだ、それから文章を読んでいくんだ」と言われてることがあります。
 この時、たまたま通りかかった僕は「くほほ。お宅のお子さんはうちの塾の問題25問の内容全部頭に入れて解けはるんですなあ。えらい、頭よろしいなあ」と思っています。性格悪いですね。でも、子供にとっては、この時方は結構、酷なことでよっぽど記憶力のある方でないと大変だと思います。
 じゃあ、どうしたらいいのか。
 問題を作ってらっしゃる方々の出題意図を読んでいると、文章を正確に読み取っていける力を試して作問しているな、と僕は感じました。
 基本的なことで言えば、指示語の内容に関する記述問題だったり、応用的な問題で言えば、虫食いで本分の内容を問題に持ってきて、元の場所に戻す問題とかですね。違和感のあるところにちゃんとチェックが出来ているか。少し細かい話になってきたので、大枠に話を戻すと、本文を読んでいて傍線が出てきた時にちゃんと問題に飛べるかですね。そこまでの情報で問題が解けるか、それともまだ置いておくべきか、この辺りの判断が出来るかが重要になってきます。解けると分かっても、記述問題の時数によっては、まだ情報不足のこともあったりしますよね。
 

④ 語彙力

 小学校で習う漢字の数は1026字です。
 さらにそれを組み合わせた熟語を考えていくと途方もない数になると思います。この辺りは、読書で覚えようと思っても読む本が偏るとまったく語彙力が増えないということもあります。これはもう、語彙力をアップするためのテキストを集中的に解いていくしかありません。
 もちろん、様々な問題集やテストでも入試までに出会おうと思えば出会えるかもしれませんが、出来たらコツコツと覚えて行った方が定着しやすいと僕は思います。
 語彙力があると、記述問題の時数調整が出来ます。言い換えることが出来るんですね。また、単純に書いている内容が分かります。入試の際にきちんと注釈を入れてくれていますが、逆にいうと「これは最低でも分かるよね」ということは入っていません。
 適正検査がある中学では言葉の意味を記述形式で説明したり、作文したりしなければいけない問題もありますよね。

⑤ 間違いを認められる力

 問題の丸付けってめんどくさいと思ったことがないですか?
 特に、国語の記述問題なんて、4点の問題だとしたら、どんな採点基準で丸付けをしているでしょう?
 やっぱり国語が得意な子は、自分に厳しいですし、迷った時は解説を読んだり、先生にこれであっているか質問したりします。多分、多少怪しくても、丸にしちゃった方が生徒は楽だと思います。でも、テストの時は、なるべく厳しく採点するようにしているので、結局減点の対象になってしまいます。で、この間違いを細かくチェックできる採点をしている子は、やっぱり記述の答えを書くと隙の無い答えが出来ていくんだよなあ、と思います。
 ちなみに、答えを丸写ししている子は、非常に分かりやすいです。偏差値40代で、全問正解してたら、君、もっと志望校判定良いよ、という感じですね。
 ちなみに、関西のあらゆる教室で同じテストを使っているので、Aという教室では3点の答えがBという教室では4点ということが昔はありました。今は、そういうことが無いように採点基準も広がってますけどね。
 ああ、ついでに書いておくと毎年、YAHOOオークションとかで毎週のテストを購入している人もいますが、こっちもバカじゃないんで、文章は同じでも問題は、ちゃんと変えて行ってますよ。無駄なお金はあまり使わないことをおすすめします。

おわりに

 気分転換に関西の中学入試の国語について書いてみましたが、いかがでしたでしょうか?
 近年は作文的な要素のある問題も終盤に出ててきて、以前よりも読み取った情報をアウトプットする能力が必要になってきています。気軽に始められることとしては、「今日の授業ってどんな話だった」と聞いてみることです。多分、これは小2ぐらいから出来ると思うので、まずは、コツコツ聞いてみてください。
 また、ニーズがあったら、別の角度の視点でみた入試国語について書いてみたいと思います。
 
※どうでもいいですが、塾関係者ってnoteしすぎじゃないですか?

 
 


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