見出し画像

vol.12 心に火をつけて

 文具メーカーであるコクヨに勤めながら「働き方改革アドバイザー」として、社内や様々な企業の働き方改革の推進をしてきた坂本崇博さんの著書『意識が高くない僕たちのためのゼロからはじめる働き方改革』が先日発売されました。
 ヲタクである坂本さんが、いかに円滑に仕事を終わらせて家でアニメを観るか、という目標を達成するために、様々な働き方の工夫(個人的には営業の部分と自分の好きなものを仕事の中にうまく入れて行って『志事』にするところが勉強になりました)をご自身でされている様子は、刺激的でした。今月のおすすめ本の一つです。
 さて、そんな坂本さんの言葉の中で凄く気になる言葉がありました。
 それは、仕事の行動力を喩えた「可燃性」という言葉です。
 驚くぐらい雑に紹介すると、会社や組織に入りたての頃は、組織の改革アイディアが沢山出てきます。心が燃えている状態ですね、「可燃性が高い」わけです。
 しかし、なかなかアイディアを行動に移すのは難しいです。
 たとえば、人やモノや金や情報が欠けているという状態ですね。
 この状態が続くと、徐々に燃えにくくなります。 
 坂本さんは「難燃性」の状態に喩えています。
 この状態になると、行動せずに飲み屋で愚痴を言うだけで終わったり、時には周囲の「可燃性の高い」状態の人に水を差すような言葉を言ったりして、相手の炎まで消そうとしてしまいます。ううむ、僕が働いてた会社にもこういう人いたなあ。
 勿論、アイディアをみんながみんな出す必要はないんですが、誰かが設定したテストで高い点数を取る「イチニンマエ主義」とは違うアプローチが必要であると坂本さんは語っています。

 皆さんのいる組織や会社は「可燃性が高い」人はどれぐらいいるでしょう?
 いまのSKE48はどうでしょう?
 鎌田菜月さんがいた頃、彼女の心を燃やしてくれる魅力的な先輩的な先輩たちが沢山いました。
 たとえば、この人。
 かおたんこと、松村香織さん。
 「干されていた」研究生時代から、「人・金・モノ・情報」を持ち前のバイタリティーと企画力でクリアーしていった人物として、SKE48に今も燦然と輝く唯一無二の星座を描いてきた人です。
 ただ、人間としての魅力もとてもあり、人情に厚く、メンバーやファンのことまで考えられる想像力のリーチがとてつもなく長い人でした。
 それは、後輩達に対してもそうです。
 特に6期生たちは、研究生時代から娘のように手をかけ、昇格してからも気にしていたのではないでしょうか?


 ちょっと、2016年9月27日に行われた彼女の生誕祭で読まれた手紙を読んでみましょう。

「なっきーへ

 なっきー、お誕生日おめでとう。初めてお手紙を書くので緊張しています。
 なっきーとは今はチームも違うし、昔に比べて一緒にいる時間は少なくなってしまいましたが、なっきーにとってはとても重要な一年だったと思います。将棋のお仕事ができたこと、本当に凄いよね。おめでとう。
 SKE48として将棋のお仕事をしたメンバーは今までいなかったし、なっきーが新しい道を開いてくれました。そしてそのきっかけはTwitterとかで発信してきたから、きっかけやチャンスはどこにあるかわからないけど、小まめに自分からきちんと伝えていたから将棋のお仕事が出来たんじゃないかなと思います。なっきーにとっては大きな出来事だったんじゃないかな。

 そして私が個人的に悔しかったのは今年の選抜総選挙。正直もっと順位が上だと予想していました。だからすごいビックリした。なっきー自身もショックだったと思います。なっきーのファンの方は投票するやつとかの結束力がとても強いイメージがあるから。でもね、嬉しいこともありました。

 今回のシングル『金の愛、銀の愛』ではネクストポジションに選んでもらったこと。
 ネクストポジションという名前の通り選抜メンバーまであと一歩の位置まで来ているということです。どうなるかはここからの一年の過ごし方にかかっていると思います。
 なっきーはちゃんとしているから、自分自身が一番わかっていると思うけどね。

 頑張ってくださいとは気軽に言えないけど、昇格もしたし選抜メンバーに選ばれることも近くまで来ているからこそ頑張り時だと思います。後悔がないようにたくさんいろんなことに挑戦して新しいチャンスをつかんでください。そして、ダイエットはしっかりやってね。私みたいにリバウンドしないように気をつけてね。いつかまたアップカミングメンバーでご飯に行きましょう。

 かおたんこと、松村香織より」

 もう、鎌田さんとチームは離れても彼女の実績を認めて、最後の一段落の辺りでは心に火をつけるメッセージをくれるかおたん。
 最近、SKE48の映像作品のリリースは減ってきていますが、かおたんを始めとするベテランメンバーがオーディオコメンタリーに居た時の「ああ、こんな一面がこのメンバーにはあるんだ。流石はかおたん」という発見は非常に貴重で、彼女のリクアワでのオーディオコメンタリーを参照にしなければ書けなかった記事もありました。
 この頃の鎌田さんは、目指すべき目標に対して、少しずつ結果を出している頃ではないかと思います(翌年の生誕祭では、初の有言実行が出来なかったことを悔いていますが、翌々年には結果を出しています)。
 それでは、鎌田さんから見た先輩のかおたんはどうだったんでしょう?

 これまでのSKE48のカラーから見たら異端の存在だったであろう鎌田さん。
 本人は「問題児」と表現していますが、それまでのSKE48研究生のカラーとは違う何かがあったのではと思います。かくいう僕も鎌田さんが入ったばかりの頃は、彼女に対してかなりネガティブな印象がありました。
 しかし、かおたんという自分流のやり方でのし上がるロールモデルがあったからこそ、今のファンの人たちとの出会いがあったのでは、と鎌田さん自身も分析しています。
 理解者であり、先駆者でもある。
 パイオニアになることを恐れない。 

 それは、かおたんと鎌田さんの共通点かもしれません。
 燃える心に水をかけずに、ちゃんと理解をしてあげる。
 それでは、先輩としての鎌田さんはどんな存在なんでしょう?
 まず、彼女自身のブログを読んでみましょう。

 衣装を通して感じる時間の経過と後輩たちへの想い。
 このブログでもかおたんを始めとする先輩からもらったものについて書いていますが、今の自分に厳しい評価をしていますね。

 次はこちらのブログを読んでみましょう。

 鎌田さんの素晴らしいところは、後輩が増えて来て先輩側になってきても、謙虚なところです。後輩の凄さをきちんと認めて、自分も努力をしていく姿勢。これは先輩として素晴らしい姿だと思います。というのも、丁度、昨夜(2021年11月13日)放送の「オードリーのオールナイトニッポン」で若林さんが語っていた後輩をダメにしていく先輩、努力せずに時間を吸い取っていく先輩の話をしていましたが、そちらの方向にならずに進んでいるなあ、と感じます。
 

 そして、これまでのSKE48のパターンではいない後輩への理解も深いです。
 ちょっとこちらのブログを読んでみましょう。

 一見タイプは違う二人ですが、SKE48に新しい色を描いてきたという意味では同じかもしれません。
 

 これまでと違うという意味では、同じくチームEの菅原茉椰も同じかもしれません。
 SKE48だけでなく、AKB48の選抜にも選ばれ、ノリに乗っていた状態からの休養期間。
 心のケアは簡単なことではないと思います。
 かくいう僕の職場でも心因性で長期期間休養することになった新卒の女の子がいました。
 僕と同年代の方(30代)でも、「これからあの子に仕事振りにくいわあ」と平気で言う人もいました。
 多少心に傷を負っても続けるのが当たり前、というのが昔の価値観なのかも知れませんが、その価値観に引きづられずに菅原を理解しようとした、当時の運営の方やメンバーの方々は本当に素晴らしいと思います。
 じゃあ、具体的にはどのように菅原に鎌田さんは寄り添ったのでしょう?

 2021年の10月21日に行われた鎌田さんの生誕祭で読まれた手紙を読んでみましょう。

 「ママ、25歳の誕生日おめでとうございます。


 今回の手紙は誰からだと思いますか?そうでーす、よくこの呼び方をする娘、菅原茉椰です。

 ついついママと言っちゃうぐらい面倒見がよくて、聖母のように優しく、頼りがいがあり、美味しいご飯を作ってくれて、周りを見てくれる先輩です。

 ちょっと長くなります。

 具合が悪かった時に何も言わずに薬を渡してくれたりと、ママです。

 ご飯行ったりしたら食べ物を分けてくれるし、食べさせてもくれます。ママです。

 今はそういう機会があまりないですが、食べたいものが2つあったりして悩んでいたら『茉椰はこっちにして、私のをあげるよ』と気を使ってくれます。

 あとお腹空いてたら自分が食べる用に買ってきた食べ物を分けてくれるんです。優しい。

 悲しいことやつらいことがあった時は肯定してくれて、自分の気持ちが軽くなるような言葉を投げてくれます。

 菅原が一時期病んでいた時期があって、なっきぃさん達の前で大号泣したことがあり、その時も慌てることとかなく優しく抱きしめてくれて、たくさんの言葉で励ましてくれました。

 『嫌だ』っていうことがあって、そういう話をしたら一緒に共感してくれて気持ちに寄り添ってくれました。優しい。

 大人の人に言いにくいことや聞きにくいことがあったらその時に空気を読み取ってくれて、代わりに聞いてくれるかっこいい先輩です。気づけるのって凄いですよね。優しい。

 優しいでいっぱいなんです。

 なっきぃさんから優しさをたくさんもらってるのに自分は何かしてあげれてるのかなって不安に思うこともあるけど、この前二人で話した時に悩み、不安を聞くことができて個人的に嬉しかったです。

 いつも聞いてもらってる立場だからこそ、そういう話を聞けて頼られてる気がしました。だから、これからも頼ってほしいです。うまく返事を返せないかもしれないけど、話は聞きますから。なっきぃさんの味方ですから。何があっても味方です。

 なっきぃさんってとっても大人で、周りが見え過ぎちゃってるんです。この人はどういうものを求めてるのかをしっかり見据えて、それに対して仕事をするから本当に尊敬してます。

 求められてることを理解し、100返せるのが凄くて。でも、それはなっきぃさんの見せない努力と、当たり前になっているのが普通で、普段のホワワンという雰囲気から何も感じさせずにやってくるから、なおさらカッコいいです。

 自分にはできないことをできてしまうなっきぃさんの姿にいつも尊敬させられます。だからこそ諦めることもあると思います。

 さっきも言った通り、求められてるものを理解しているからこそ自分にはこれを求められてないとか、これをしてもと言って、客観的に見て諦めてしまうことがありませんか?これは菅原の勝手な解釈だけど、そう思ってしまう時があります。

 求められてるものをこなすのもいいと思いますが、なっきぃさんが求めてるものを、個人の仕事はそうですが、グループ内の仕事でも手に入れて欲しいなと思っています。

 夢に向かって頑張るなっきぃさんを近くで応援したいので躊躇しないでくださいね。何度も言いますが、なっきぃさんの味方なので。

 手のかかる娘の世話焼き、いつもありがとうございます。

 生意気な後輩だけど、ちゃんと面倒を見てくれて、近くにいてくれて、楽しい時間をいつも作ってくれてありがとうございます。これからも一緒にいてください。

 改めて25歳のお誕生日おめでとうございます。

 今年1年いや永遠に素敵な年になりますように。

 大好きです。

 SKE48チームEの菅原茉椰より」

  読みながら、思わず泣きそうになりました。
 菅原が書いている自己像は、鎌田さんがかおたんについて書いたブログの自己像にとても似ています。
 周りのことをよく見て、求められているものも気づける鎌田さん。
 でも、そんな鎌田さんだからこそ、我慢してしまうこともあるのかも知れない。
 だからこそ、もっと自分の求めるものに正直になって欲しい、頼って欲しいという思いが菅原の中に芽生えていったのではと思います。
 鎌田さん自身も菅原について「妹に似ている」とこちらのブログで書いていましたね(タイトルも素晴らしいです)。

 僕の勝手な妄想ですが、この手紙を読んでいると、かおたんから鎌田さんに受け継がれた思いは、鎌田さんから菅原に受け継がれていくのではと思います。
 

 菅原だけではありません。
 もうすぐ始まるSKE48のユニット曲特別公演では、普段はチームの違う後輩たちとも触れ合うことになります。きっとこの他者への理解はこれからも連綿と受け継がれていくのでは、と思っています。
 そう、きっと心の火を守ってくれる先輩たちがいるからこそ、新しい価値観を理解できる先輩やファンの皆さんがいるからこそ、SKE48は若手も熱く活動できるんだと思いながら、この記事を終えます。


※鎌田さんとはたごん、まーやん、谷の関係について書いたnoteはこちら!



こんな大変なご時世なので、無理をなさらずに、何か発見や心を動かしたものがあった時、良ければサポートをお願いします。励みになります。