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我流ドット繪講義

はや立春も過ぎぬれば「春は名のみの風の寒さや」とぞ歌いける今日この頃ですが、昨日來の積雪でにわかに厳しい冷え込みとなって參りました。

こんな日は窓を全開にして雪景色を眺め乍ら鍋と熱燗で一杯やるのが樂しみでございます。
先日は節分の折に豆を鬼門の方角に撒いたり致しましたが、おかげ様で暫しの小休止を經て段々にまた元氣も出て參りました。
氣を取り直して日々の生活を愉しんでいる内にまた色々な事を取り組んでいきたくなった次第であります。

とりあえず差し當って暫く放置していたRPGツクールでも再開しようと思いました。
現在、主人公達は甲府近辺を旅している様です。

宿場を継いでの甲州街道は山續き。小仏の關所から難所は續きます。

今時点でnoteでご紹介したのは故郷の房州を出て江戸に向かうところ迄ですが、その後も色々と各地を巡る旅を續けている様であります。

この先何が起きるのか、それは作者の私でも解りません。
大まかな設定だけを設けてあとは「行き當たりばったり」で作っていますので思いもよらない大冒險に發展してしまう事もあるのです。
ゲームのタイトルは『流れ流れて明日は何処へ』
まさしくゲームそのものの成り行きを示しています。

そのゲーム内に出てくるグラフィックは最初から用意されている素材を流用しつゝ、不足するものは全て自作で拵えております。
イマドキは便利な世の中になりまして必要なものは幾らでも他で用意されているものを使う事が出來る様ですが、そこはたとえ下手でも自作にこだわっております。

殊に江戸時代を舞台とした時代劇を愛好してきた身の上としては和風のグラフィックに於いて自分の納得いく造作でなければ満足出來ないのです。
時々見かけるどう見ても日本ではない「極めて歪曲された勘違い和風」は御免蒙るのであります。

そんな訳でありますから制作が進むにつれて不足する部品や新たに欲しくなる物が度々出てくるものでありまして、將來的に廣く利用し得るグラフィックならばその都度作る事にしているのです。
イベント内容を打ち込むのに飽きた頃合いにドット繪の制作に移ると良い氣分轉換にもなります。

そもそもそれは城の城内を作っていた際に、なんとなく床の間が寂しい様に思えた事がきっかけでした。
壺や掛け軸、生け花、刀、屏風等、飾る物は幾らでもあるのですが、そろそろ甲冑が欲しくなって參りました。


そこで今回はこの「甲冑」を描いてみる事に致します。

着物を着た人間ならば概ね同じシルエットが得られますので既に作ってあるグラフィックの中から似た様なものを選んで、それに手を加えていく形で作っていきますが甲冑は類似するグラフィックが無かったのでイチから作る「フルスクラッチ」となりました。

まずは「甲冑」を描くに當たり、實物を観察するところから始めます。
そうしなければヘンテコリンな物が出來てしまうからです。
この時についでに日本の鎧をはじめとした各種防具に關聯する知識を得ておくと制作に役立ちます。
今はインターネットで幾らでも檢索が出來るので便利なものです。
樂しく作ると共に勉強も出來る。まさしく「一粒で二度美味しい」の表現が相応しかろうと存じます。

手頃なものを見附けたら、それを忠實に再現するのではなく極力省略して描く様にしております。
そうしなければグラフィックの規定サイズにとても収まらないのです。
特に20年以上前のソフトを使っておりますので、そのサイズも巾24×高さ32マスの中で表現しなければならないので工夫が必要です。

最初は輪郭から

とりあえず各部位毎に輪郭線を引いていきます。
全てはここで形作られる訳でありますので、これが一番難しい作業だと思います。特にゲーム内の他のグラフィックと溶け込む様にして合う様に描かなければなりません。
いっぺんに完全な形を作ろうとせず、まずは大まかなフォルムのみを線で表現していきます。
兎に角大切な事は「何が描いてあるか解る様にデフォルメする」と云う事に尽きると思います。
尚、画像は左右對称になるので半身のみを描けばそれで事が足ります。

左右反轉

反轉機能を使うとこんな感じになりました。
とりあえず細かな部分は後で幾らでも修正が出來るので概観を掴む様にして先に進めます。

色塗り

イメージしている色は赤色なので、まずは大まかに色を塗ります。
そこから塗分けたい箇所を徐々に色分けしていきます。

仕上げ

グラフィックの良し惡しを極める工程です。
要領を得るには少々コツが要りますが私は中心程明るく、外側に行くにつれて暗い色を附けていきます。
そしてアクセントとして違う色を差してみたり、同系色でも2~3段階違う色を部分的に入れていきます。
今回は鎧なので継ぎ目や段々になっている箇所をこうして表現致しました。
細部を描き込むのはこの段階が一番やり易いかと存じます。
面頬の髭や兜のしころ等、可能な限りで表現しております。

これで出來上がりです。
早速ゲーム内に取り入れて役を演じて戴きましょう。

右の床の間に注目!

こうして作り出された「甲冑さん」は甲斐領内の金山の獨占を企てる家老のお部屋の飾りを演じる事になりました。
さり氣なく床の間に佇んでいても、やはり自分で作ったグラフィックですから、どことなく愛着と存在感が感じられます。

この他にも町の武具屋の売り物や蔵に仕舞い込まれた骨董品の役等、色違いの仲間と共にゲーム内各所で活躍する事になりました。


昔、初めてこのパソコンのRPGツクールを手にした時、自分で描いたキャラクターが動くところを見て胸が高まったものでした。
自分だけのキャラクターを出せると云うのはとても魅力的だったのです。
あの時のときめきを忘れない様にしたいものです。

久々に何も無いところからドットを打ちましたが、繪が出來上がってゲーム内で役割を演じていく過程はとても樂しいものです。
曲がりなりにも「自分の作品」ですから、私はそう云うものを大切にしたいと思いました。

捕まってしまった仲間…。

ちなみに先程の場面で仲間の巫女が捕まってしまいます。
敵方には「歩き巫女」と云う謎めいた人物が居ました。
友人曰く「妙な所で雰囲氣が出ている」との事でしたが、敵の歩き巫女は拷問について逐一丁寧に内容を教えていきますが…

彼女の運命や如何に…!?

さて、次は何を作ろうかしらん。
飽くなき創作意欲よ、どうか私に力を……!

…とか思いつゝ、私は明日の朝ごはんの準備をするのでありました。
映画一巻の終わり…。

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