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千草色の揚羽蝶

琥珀色を描くのは
最期の空中戦を求めて彷徨う
ナ・バ・デアの巡礼者だった
あまりにも酸素に充ちた群青色の海
息を止めて ライムミント掠めて――
――幽かな冷涼と共に
残酷な夏は記憶を喪ってしまう
翠緑の平行世界に映る亡霊
跫音の無い少女は
自らが翳すバタフライナイフに
刻まれた血の行方を忘れてしまった
車輪の下の蝶蝶を狂ったかのように捜す
形骸化した老齢の小説家
彼の遺したダイイング・メッセージは
雨と共に埋葬され……
――千草色華やいで
(或る青い花)は自らの名を獲ることを許された
赦されることに物憂げな羽根
羽ばたく度に深まる傷
風化する水色と記憶 空白の花束
いつかの四月は湿度計を壊し
救済の無い熱病だけが
少女たちの足もとをそっと焦がした
影絵だけが抽象の季節を告げ
送電線の狂鳴は
誰かの縊死すら賛美してしまう
暗翳を染める 真っ赤な表紙
薄れ雪に漂う 紺碧の付箋
残り香のような淡い青すら 瞬く間に消えて__
やがて最後の揚羽蝶が
彼岸へと飛び立ってゆく

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